表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫二匹と始める異世界下水生活  作者: 友若宇兵
第二章
32/75

7話

主人公がまともに喋ってる箇所があったので訂正しました

* オリー *



「僕はオリーニャ、この白猫がビアンコ、キジトラがカルネだニャ」


「はじめまして、ビアンコ、カルネ、オリーニャ。少しお話を聞いてもいいかな?」


 名前名乗り辛ッ! これほんとにどうにかならないの?


「オリーが名前だニャ」


 あまり興味は無さそうだけど訂正しておく。


 僕よりも猫たちの方に興味があるニャ。好き勝手に話されてもちょっと困るんだよね。僕が別の世界から来たとかって吹聴されてもさ。


 猫たちはその人を一瞥しただけで興味をなくしたのか、お嬢さんが注文してくれた魚の日干しをガリガリ齧ってる。ジャイオさんはそんな猫たちをキラキラした目で見つめてる。


「あー、この子達は人見知りをするニャ。だから僕を通してニャら話をしても良いニャ」


 人見知りをするかどうかは知らんがそういうことにしておく。


「そう言えば、貴方のその奇妙な話し方はなんです? 西方人とお見受けしますが、西方の方のなまりでそうなっているのですかね? 西方人と話したことはあるけどそんななまりの人は初めてだなぁ」


 あれ、今度は僕に興味が移ったみたいだ。移り気なのかね。面白そうならなんでもいいとかそっちの方かもしれない。


「あっ、もしかしたら伝説にある猫神教団の方です? 猫も連れてるしまさにそれっぽいね! この二匹の猫たちもやっぱり、猫神が兄弟神だっていう伝承から着想を得てるのかな。あれ、でもあの神は確か白猫と黒猫だったような。キジトラだからちょっと違う感じ。まぁ代用なのかな?」


 いやぁ、猫神教団の方にもお話聞きたかったんですよ。とえらい喜びよう。猫神教団って何よ。あと、たとえそうだったとしても『それっぽい』とか言うのは失礼なんじゃないの? ちょっとこの人ヤバそうだな。


「ニャー、ちょっと待って欲しいニャ」


 僕が止める間もなく。


「うっせえ、黙れ」


 カルネがベシっとジャイオさんの横っ面を引っ叩いた。一応手加減はしていたようで、吹っ飛んだりはしない。でもかなり痛そう。


「うぐぐぐ、めちゃくちゃ痛いッ! なんで猫にこんな力があるんだ?? 使い魔って動物の強化もしてるのか? そこがはっきりしないと夜も眠れない!」


 転んでもただでは起きないとはこのことか。見上げた根性だなぁ。


「落ち着いてくださいニャ。あと、答える前に次々質問されても無理ですニャ」


「そうだね、いやはや、親からも友人からも先生からも上司からも信徒からも直せって言われてるんだが直らなくて……」


 うん、ダメそう。そりゃもう直らないわ。そこまでいくと逆にすごいね。


「じゃあこうするニャ、僕もこちらのことで知らないことがたくさんあるニャ。交互に一つずつ質問するってのでどうかニャ」


 実際聞いてみたいことはたくさんある。特に宗教についてはマールにも聞けてないし。余所者だからタブーになりそうなことは知ってないとマズイよね。猫たちの宗教的な立ち位置とかも気になるし。


「いいね! じゃあ自分から!」


 あー、ウザイ。カルネが引っ叩いたのもわかるな。


「どうぞニャ」


「使い魔って一人一体だと聞いていたんですが、この子達はどうやってるの? どちらかが使い魔で片方は違うとか?」


「この二匹は使い魔じゃないニャ。僕も魔法は使えニャイし」


「えっ? 一体どういうことなんだ? まさかこの猫たちは元から人間と会話出来るっていうこと?」


 あ、失敗した。使い魔ってことにしておけばよかった。片方はマールの使い魔だとかってことにでもしておけば問題なかっただろうに、素直に答えちゃった。これじゃ余計な疑問を抱かせるだけだ。


「ああ、ニャ、その」


「もしかして、自分が太陽神殿の信徒なんで、聞かせたらマズイとか考えてる? 自分で言うのもなんだけど、あまり熱心な方ではないから、君たちを売り渡すようなことはしないと誓ってもいいよ」


 知りたいことに答えてくれるならね! とくもりの無い眼で見つめられた。確かにこの人は自分の知的好奇心優先してそうだけどさ。味方が多いにこしたことがないのも事実ではある。だからって信じてもらえるかわからんようなことを、誰彼構わず吹聴して回るのもどうかと思うわけで。


「悩んでるみたいだね。こういってはなんだけど、自分は年齢の割に知識は豊富だし、位は低いが太陽神殿でそれなりの縁故があるんでね。繋ぎを作っておいて損は無いと思うよ」


「流石に魔王軍です、とか言われたら困るけどさ」


 なーんて笑いながら言ってる。


 周囲を見渡す。幸いというか他に客は居ない。確かにこの国の人はお茶を飲む習慣が根付いてないようだ。


 協力者は欲しいし、話してしまおう。別の世界から来たって言うことと、魔王をどうこうっていうところだけうまく誤魔化せば……。


「この二匹は、神様から力をもらったそうニャ」


「おっ!? どの神性です?」


「お前たち、ニャんだっけ」


「ヴァヴァだかヴァールだか名乗っていましたね」

 

 ビアンコが答えた。


「なんと! でもそれだけじゃあれですね。どちらでしょう。ヴァルー? ヴォヴァー?」


「え? ここの辺境伯のところのお姫様は善神ヴァルーではとか言ってたニャ」


「うーん、知らなかったり勘違いするのも仕方ないか。ヴァルー自体あまり知られてはいませんが、さらに秘された神として善神ヴァルーと対をなす兄神、邪神ヴォヴァーというのが存在するらしいのです」


 僕はその場面は見てないので、こないだと同じように猫たちにそこの部分を話させた。


「残念だがそれだけでは特定出来ないな。そもそも二柱に関する情報自体が少ない。『タ・ペクト異本』でそのニ神が世界の創造を行ったという記述があるらしい。自分の先生は邪神ヴォヴァーは猫の姿をしているという逸話があるという話もしてた」


 読んでみたいなぁ。とぼやいてる。ちなみに一般に流布している世界創造とは全然違うらしい。


「しかし、こんな話を信じるのかニャ?」


「普通の人はね、ヴァルー、ヴォヴァーどちらの名前も出てきませんよ。そんなの知ってるのは学究都市の賢者連と言われる人たちか、余程の書痴かと」


 物凄いマニアックな知識を知ってたからって、それだけで信じちゃうのはどうなんだろね。ちなみにこの人は賢者には見えないから後者だな。


「ちなみに猫たちがもらった力というのはどのようなもので?」


「ビアンコが魔法でカルネが身体能力だニャ。僕が今あなたと話してるのもビアンコの魔法の力ニャ」


「おお、魔法は専門外なのですが、凄いことをやっているのはわかりますよ。もしかして宿場町の魔軍を破ったのはあなたたちだったり?」


「う、僕はニャニもしてニャいニャ」


「それほどの力があるのか」


 ほー、と感嘆している。そんな凄いことなのかね。正直あのぐらいの相手なら、きちんとした軍隊なら普通に勝てそうな感じがしたよ? まぁ、魔王倒せよ! とか言われなければいいか。そんなのはこの世界の人達でやってくれとしか言いようがない。


「しかし、猫神教団というのは当たらずとも遠からずといったところかもしれないな」


「どういうことですかニャ?」


「猫神教団が崇めている猫神と、邪神ヴォヴァーを同一視する説があるので。まぁ教団の存在自体が疑問視されているけど」


 かすってもいないんじゃないかね。


「そろそろこちらからも質問いいかニャ?」


 あーとか、えーとか抗議のような声をあげるジャイオさん。この人どうしようもなさそうだな。


「太陽神殿について教えて欲しいニャ」

 

 ええーという抗議の声が明確になった。どうやら嫌らしい。はて?


「面倒なんだよねぇ、長くなるし。他に何かすぐ終わるような質問はありませんか」


 そんな理由かよ。ほんとこいつどうしようもねぇ。自分が聞きたい、言いたいことしか話をしないってかなり酷いコミュ障じゃね?


「概要だけでもいいニャ。でも、出来れば外国人が触れちゃいけないような禁忌があったら教えて欲しいニャ」


「あぁ、そういうこと。それなら仕方ないか。ではざっくりとお教えしましょう」


「太陽神殿は太陽神エン・ムルを崇める教団でして、本拠地は聖なる山マリトゥシャの山頂にあります。マリトゥシャっていうのは現地人が使っていた古代アケド語で高い山とかその程度の意味らしいんですが、正しくはマリ・トゥール・シャでマリが山だから『聖なる山マリトゥシャ』だと山が被ってるんですよね。で、マリトゥシャにある太陽聖堂本山が古典メラノ式建築で、見事なものでして毎年夏至の日になると、東の壁から夜明けとともにすぅっと日光が差し込みまして、それが祭壇の中央にある鏡に反射されて天井に」


「興味深いニャ。でも概要だけでいいニャ」


 こいつ、自分の知識をひけらかすときも脱線・暴走するタイプか? ほんとにやべえな。ヲタのかっつんでもここまで酷くなかったぞ。


「ごめんごめん、えーと、概要か。主な教義の中に『諸人に遍く光を分け与えよ』っていうのがありましてね。太陽神の門徒たちは請われて国家と契約して、加護を提供したり治安維持に携わったりしてますね。この町でも衛士と協力して活動してるし」


 だからどの街にも大小の差はあれど街の真ん中近くに太陽神の神殿があるらしい。


「治安維持かニャ?」


「光と言えば太陽神の加護だからね。犯罪者の捕縛とか、麻薬の取り締まり、めったに無いが暴動鎮圧とかもするなぁ。だからって訳でもないけど、太陽神の門徒はお節介焼きが多い。ほんとに多い」


 最後の部分が随分と実感籠もってた。あと、加護っていうのが神様から信者に与えられる奇跡らしく、その影響もあって太陽神の門徒は物凄く強いらしい。


「ラ・ムル・カバル(太陽の戦車)っていう独自の軍隊も所有してて、大陸最強を唱えてたくらいだよ」


 へー、宗教組織が軍隊持っててそれが最強とかめちゃくちゃやべーやつじゃないですか。とは思ったけど口に出す勇気はない。


 でも、ジャイオさんも、「それがなんで破れたのか理解できない」とか独り言っぽく呟いてたんだよね。


「ざっくりならこんなものでしょ。そうそう、禁忌については、犯罪さえ犯さなければ大丈夫だよ。あー、自堕落な人間は矯正させようと煩いかもしれない。自分も兄さんに散々言われたからなぁ」


「ありがとニャ。お兄さんがいるニャね」


「さて、今度はこちらの番だね。結構たくさん答えたんだからこちらからも答えがいのある質問にしないとなー」


 答えられることで頼むよ。いやほんと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ