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おまたせしました! 二章ラストまで書き上げましたので、これから毎日順次投下させていただきます。オープニングは短いので二章一話まで同時に。
さて、ようやくタイトル通り今回の章で下水が登場します! メイン下水登場! これでタイトル詐欺とか言われないはず……。
* ノスル *
ようやくか!
王都に送った息子ネスローから連絡が届いた。宰相殿からの支援を受けて、あの子の新しい相手を見つけることが出来たのだ。勿論当家の家格に十分釣り合った相手である。
あまり良くない評判のある相手だがそこは目を瞑ろう。嫁いでしまえばもう我が家には関係あるまい。
卓に置いた瓶を手に取る。眼の前に翳したそれは、わずかに入った透明な液体が朝日を反射して美しく輝いていた。一滴二滴飲み物にでも混ぜてしまえば無味無臭で対象を弱らせる。本来であれば週に一度くらいの投与で、病気に見せかけて徐々に……というのが順当な方法らしいし、実際そのように進めていたのだ。
薬も必要になる度に裏の伝手で調達し、この部屋に証拠となるようなものを放置するようなことも無いようにしていた。家政婦が間違えて割ったり、誰かが興味本位で手を出す可能性もありえないように。
料理人は好都合なことに、何年も前に人を入れ替えたときに都合よく私の言う事ならなんでも聞く人間を潜ませることができていた。このような使い方をするつもりはなかったのだが。
そう、急くこと無く、緩やかに、確実に、疑われることなく、慎重に慎重を重ね……。全てを組み立て、実行していたのだ。
先日までは。
あの男、あの西方人さえ来なければ計画を前倒しにする必要はなかったのだ。いや、兄があの男を認めるようなことを言わなければ! 伝統ある辺境伯家、古王国の西の守りであるファズバンに西方人を迎え入れるなどあってはならないことだ!
あんなにゃあにゃあ喚くことしか出来ない怪しげな男なぞ、即刻叩き出すべきだ! だいたい、猫二匹に何が出来るというのか。あんな猫に魔王軍を倒せたなんぞ到底信じられん。よしんばそうだとしても、便利にこき使えば良いではないか。それを婿として迎えるのはどうかだと? 兄も耄碌したものだ。いや、体調を崩して弱気になっているのかもしれない。
あの方に貸しを作るのは問題だが、今回ばかりは致し方ない。兄が意識さえ失えば、死なせるまでもない。
あの子の新しい嫁ぎ先は、兄の命で探していたと言えば良いのだ。下手に死なれては喪が開けるまで式を挙げることができなくなるしな。あとは、兄が存命の内にせめて結婚して安心させて欲しいと、他の召使いたちの前ででも涙ながらに訴えれば私を疑うものは居ないだろう。
まったく、あの第二王子さえ亡くならなければこんな面倒は背負い込まなくてもすんだというのに。これでようやく当初の予定通り、この家はネスローのものになる。なにも問題は無い。




