親友の死
「出来るわ。ただ、NACAの元職員で身近で200もの元同僚達を失った私が調べないと?」
―!?
話し方から察するにデータベースにアクセスしたところで、意味は無いのだろうか?
「・・・いいえ。ですが、やはり俺自身の目で確かめたい。NACAの狙いを。」
「いいわ。アクセスしてあげる。私は日本人だから全部日本語に翻訳されてるけど、意味がおかしいところはたっちゃんの頭で考えて。」
「了解です。」
その会話が終わるとサヨさんはパソコンの前の椅子に座った。そのまま、USBメモリを差し込む。
すると、NACA職員専用のサーバーが出現し、IDとパスワードの入力。
「はい。これで完璧。」
今度は俺がサヨさんと替わって椅子に腰掛ける。サヨさんはNACAの職員でも特に地位は上でTopSecretでもある程度は閲覧できるらしい。
「じゃ私はガリレイ冷蔵庫を調べてくるわ。」とだけ言い残し、パソコンの近くを離れていく。その折に何やら装置を指差し問いかける。
「これは何かしら?」
それは先日、睦美が興味を示した物だった。
「それは、相当の熱を放出する装置ですね。」
「・・・。そう。」
それ以上には何も興味を示さず、そういい残し実験室をあとにした。
□■
―しかし、NACAというのは相当やっているようだな・・・。
ある程度の文書を読んで感じたのはその感想だった。火星探査やら小惑星探査、彗星の予測軌道やらニュースでも上がらないネタがどんどん目に入ってくる。
「しっかし、肝心の飛行機墜落事故も出てこないし・・・あのオーロラも・・・。」
正直なところ、NACAはあの時のオーロラをある程度解明しているものだと思っていた。それどころかあのオーロラはNACAの織り成したものだとばかり勘違いしていたらしい。それだけ落胆も激しかったから。
「どう?何か分かった?」
そこでガリレイ冷蔵庫の調査を終えたサヨさんがパソコンを眺める。
「いいえ。分かったのはNACAがいろいろやってることですね。」
「・・・ジャック。」
「え?」
そこでサヨさんが誰かの名前をつぶやく。俺が丁度見ていたのは「飛行機墜落により死んだと推定されているNACA職員」の名簿。
「実はね、冷蔵庫のこと分かったかも知れない。でも、それにはたっちゃんに質問したいことがあるの。」
―!?
まさか、俺もこんなに早く解明出来るとは思っていなかった。それゆえに心の中で興奮がふつふつと沸き始めるのを感じている。
「あの、高温の機械を冷蔵庫に入れなかった?」
□■
「冷蔵庫の耐久度を調べよう!」
「えぇー?冷蔵庫壊れるし、今入ってるもの腐っちゃうよ!」
「ええい!ケイコ、それが実験助手の言うことか!?」
「じゃぶち込むよ?」
「お?長川は仕事が速い。」
□■
そんな会話が頭を駆ける。
「入れました。」
「・・・間違いないわ。宇宙は最初「超高温且つ超高密度」だったといわれてる。その実証も出来たわけね。」
「じゃあ、あの機械を入れたことが原因?」
何とも単純なような。
「そうね。それから真空にしちゃったことも・・・。」
「・・・・そうでしたか。」
□■
翌日 科学同好会 部室。
「今日はミーティングをする。」
最近お馴染みの顔が勢ぞろいしている。部室で俺は話し始める。
「何?」
最初に反応するのは長川。
「実は・・・ガリレイ冷蔵庫を作った理由が判明した。」
ざわっ・・・。たった三人の焦りなのに群集が驚いたかの様な響きを感じる。
「それって・・・本当!?」
特に驚いていたのは睦美だった。
「あぁ。まだ睦美もいなかったときに行った冷蔵庫耐久実験が原因とされている!」
「サヨお姉ちゃんも見てたの?」
そこでケイコがサヨさんの方に目を向ける。
「えぇ。そうね。」
「それで、今後ガリレイ冷蔵庫はどうするわけ?」
そこで長川が驚きも見せず、ごく当然の顔をしながら言い放つ。
「NACAみたいなちゃんとした研究機関に持っていくべきね。」
睦美はそう言う。
「それは駄目だ。」直ぐに切り返す。
「なっ!」「私も反対ね!」
恐らく睦美も反論をしようとしたのだろう。だが、それを完全に無視する形でサヨさんも反対の意を示した。
「どうして?貴方だって分かっているでしょう?ガリレイ冷蔵庫が危険だってことぐらい。」
「・・・。」