祠の天使
天使が願いを叶えてくれる。
学内のいたる所でまことしやかにささやかれる流言の数々。
校庭の隅に鎮座する朽ちた小さな祠にべっこう飴を供えて願うと望みが叶うという。
べっこう飴は天使の好物なのだそうだ。ずいぶんと庶民的な味覚を持っているな。
「祠の天使の噂、アキラは信じてる?」
「そんなこと現実にあるわけないじゃん。」
「だって、キヨトは勉強あんなに苦手なのにこの間のテスト全部満点だったし。」
「まぐれでしょ。当てずっぽうで書いたのが奇跡的に正解しただけ。」
「サエコは片想いしてた先輩に告白されたって。」
「元から両思いだったってことじゃない。」
呆れ顔のアキラ。私の心も知らないで。
「なんでそんなに否定するのよ。」
「マリエこそ、どうしてそんなに盲目的に信じてるわけ。」
「叶えて欲しいことがあるの。嘘だと思っててもいいから一緒に行こうよ。」
ぶつかってきそうな勢いで両手を顔の前に合わせる。
「嫌だ」すり寄るマリエを振りほどきながらキッパリ却下。
このままそっぽを向いていればよかったのに。
瞳を潤ませ、泣きそうな表情を見せるマリエと目が合ってしまった。
つぶらな瞳に見つめられると弱い。ため息を吐きながら答える。
「しょうがないな。今回だけだよ。」
一緒に行けると嬉しそうにガッツポーズなんてして、そんなに喜ばなくても良いのに。
チャイムが鳴り午後の授業が始まる。身が入らなくて窓外の小鳥を目で追った。
体育の風景をぼんやりと眺めながら先ほどのやりとりを思い出す。
マリエの叶えて欲しい願い事ってなんだろう。もしかして好きな人でもいるのかな。
天使に頼みたいと考えるほど、どこの誰がマリエの心を占領しているのだろう。
気になってしまい、先生の声は一切頭に入ってこなかった。




