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バグ職シーフは紙すら切れない。  作者: 藤原 智


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1/6

一話 選ばれた?

「君は、選ばれた」


 そんな声がして、気がつくと真っ白い場所にいた。

 マジで、全部真っ白。 

 自分が、立っているのか浮いているかもわかんない。

 あ、夢だ。

 間違いない。


「めんご、めんご、悪いね…突然こんな所に呼び出して」


 突然、18歳くらいの美少女が、目の前に現れた。

 何かドレスみたいなん着てる。

 つか、胸でかくね?

 私の胸は、こんなにちい……。

 ムカチキ!


「誰?」


 私の第一声は、それだ。

 ここ何処?より誰?て聞くのは今のところ間違ってはない。


「私は、イナ。それより、詩韻兎だっけ?19歳のあなたをこんな所に呼んで、ムカつくよね?」


 ムカつくに決まってんだろ。

 それよりも呼び捨てにすんな。

 失礼だろ。


「まあ、そうだけど」

「ここに、来てもらったのは、私が作った世界に行って貰いたいってことで、おけ?」


 何が、おけ?だ。

 桶か?水でも汲んでろ。


「え?どういう事?作った?」

「うん!」

「……」

「……」


 それだけかい!

 説明責任は!


「あの、説明してもらわないと、私としてもね」

「だよね。その気持ち分かる。何も説明されずにこんな所に転送されたら、私だって頭にくるもん」

「は? お前が連れて来たんだろうが!」

「ん? そうだった。めんごめんご」


 イライラする!

 今、自分でも感じた。

 こめかみの血管が一本どころか五本は浮いたのを。


「何だ! コイツよおお!!」

「イナです。そんなに怒らないでよ」

「怒るとこしかねえだろ!!」


 だ、ダメだ。

 コイツはダメだ。

 早く何とかしないと。


「分かった! とりあえず話を聞く!」

「やった! すごいのよ? 私の作ったゲーム……」


 どんだけ話すんだ?


「でね……もうすでに、人間でいうと、二百年くらい経ってて……」


 頭に何も入ってこねえ。


「分かった。すごいのは」

「でしょ? でも、バグがあってね。兎には悪いんだけど」


 兎?

 いつの間にか、友達になっちまった。


「バグ?」

「そうなの。兎は、シーフしか選べないんだよ」

「シーフ?」

「うん。シーフは、バグで未実装なの。どれだけパッチをあてても攻撃力が上がらなくて、シーフで攻撃しても、多分紙すら切れないと思う。今、兎はハサミで紙切れるでしょ?」

「まあ」

「シーフになると、ハサミで紙切っても切れなくなるの。ナーフされるんだよね。でも、速いよ?」

「攻撃力? 必要なん?」

「モンスターとかいるしね」

「え?」

「じゃあ、シーフになあれ!」


 ……。

 足がスースーする。

 

「いつの間に、ショーパンに?」

「シーフになると、シーフの格好になるの」

「は?生足て、モンスター出るんでしょ?防御とは?」

「大丈夫。シーフ早いよ?追いつかれないよ〜」


 勝手な事言うな。

 コイツ、絶対人体実験とか平気でやるタイプだ。


「じゃあ、早速いってみよー!」


 は?行くと言ってないんだが?


「待って!」


 遅かった。

 いや、早く言っても、この馬鹿は私をどこかに送ったんだろう。


 

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