一話 選ばれた?
「君は、選ばれた」
そんな声がして、気がつくと真っ白い場所にいた。
マジで、全部真っ白。
自分が、立っているのか浮いているかもわかんない。
あ、夢だ。
間違いない。
「めんご、めんご、悪いね…突然こんな所に呼び出して」
突然、18歳くらいの美少女が、目の前に現れた。
何かドレスみたいなん着てる。
つか、胸でかくね?
私の胸は、こんなにちい……。
ムカチキ!
「誰?」
私の第一声は、それだ。
ここ何処?より誰?て聞くのは今のところ間違ってはない。
「私は、イナ。それより、詩韻兎だっけ?19歳のあなたをこんな所に呼んで、ムカつくよね?」
ムカつくに決まってんだろ。
それよりも呼び捨てにすんな。
失礼だろ。
「まあ、そうだけど」
「ここに、来てもらったのは、私が作った世界に行って貰いたいってことで、おけ?」
何が、おけ?だ。
桶か?水でも汲んでろ。
「え?どういう事?作った?」
「うん!」
「……」
「……」
それだけかい!
説明責任は!
「あの、説明してもらわないと、私としてもね」
「だよね。その気持ち分かる。何も説明されずにこんな所に転送されたら、私だって頭にくるもん」
「は? お前が連れて来たんだろうが!」
「ん? そうだった。めんごめんご」
イライラする!
今、自分でも感じた。
こめかみの血管が一本どころか五本は浮いたのを。
「何だ! コイツよおお!!」
「イナです。そんなに怒らないでよ」
「怒るとこしかねえだろ!!」
だ、ダメだ。
コイツはダメだ。
早く何とかしないと。
「分かった! とりあえず話を聞く!」
「やった! すごいのよ? 私の作ったゲーム……」
どんだけ話すんだ?
「でね……向こうでは、もう二百年くらい経ってて……国とか、魔王とか、戦争とか、いろいろ育っちゃってて……」
頭に何も入ってこねえ。
「分かった。すごいのは」
「でしょ? でも、バグがあってね。兎には悪いんだけど」
兎?
いつの間にか、友達になっちまった。
「バグ?」
「そうなの。兎は、シーフしか選べないんだよ」
「シーフ?」
「うん。シーフは、バグで未実装なの。どれだけパッチをあてても攻撃力が上がらなくて、シーフで攻撃しても、多分紙すら切れないと思う。今、兎はハサミで紙切れるでしょ?」
「まあ」
「シーフになると、ハサミで紙切っても切れなくなるの。ナーフされるんだよね。でも、速いよ?」
「攻撃力? 必要なん?」
「モンスターとかいるしね」
「え?」
「じゃあ、シーフになあれ!」
……。
足がスースーする。
「いつの間に、ショーパンに?」
「シーフになると、シーフの格好になるの」
「は?生足て、モンスター出るんでしょ?防御とは?」
「大丈夫。シーフ早いよ?追いつかれないよ〜」
勝手な事言うな。
コイツ、絶対人体実験とか平気でやるタイプだ。
「じゃあ、早速いってみよー!」
は?行くと言ってないんだが?
「待って!」
遅かった。
いや、早く言っても、この馬鹿は私をどこかに送ったんだろう。
「イナ様」
日に焼け、無精髭を生やした冒険者風の男が膝をついて現れた。
「一刀か、お前も、あっちに行け。うさぎとの接触は後ほど言う。それまでに、名をあげておけ」
「はっ! では」
そう言うと姿を消した。
「うさぎ、頑張って『盗む』を育てるといいよ。世界を盗めるくらいに」
イナは、誰もいなくなった白い場所で笑った。
「その時、君は人間でいれるのか分からないけど」
そして、少しだけ声を低くした。
「でも、育たなかったら終わり。あの世界も、そこにいる皆も、ね」




