ドヤ顔
「これやっぱり。マズいのかな~」
「なに。鍛錬が足らんのだ、鍛錬が」
腹に手を突っ込まれたショックで白目をむいた長を眺めながら、突っこんだ右手を払った。
途端に黒い影は霧散していく。
─────後は『治癒』っと
キラキラエフェクトに包まれたと同時に、頭にチョンと乗っていた帽子が床に転がった。
‥‥‥‥あ、やっぱ頭頂部が‥‥‥‥見なかったよ、私は空気が読める大人だからね。 肌色が見えていたのは一瞬で、次の瞬間もっさぁと髪の毛が生えてきた。
あんな風に生えてくるんだ─────ちょっとスゲ~。
「長は何か、病気持ちだったんですか?」
「ん~たぶん。長期的に無理してたら、命にかかわったかもね」
「そうだったんですね~」
こっちの医療がどの程度か知らないけど、ひょっとして『ヒール』とかで何とかしちゃうのかな?そんな事をおっさんに訊ねたら「基本、薬師だ。『ヒール』なんて使えるヤツはそんなにいない」て言われた。 『ヒール』貴重なんだ。じゃあ自分の『治癒』はどうなんだろう‥‥‥‥聞くの怖いわ‥‥‥‥。
「そういえば、名前決まったの?」
相変わらずおっさんの肩で頭ピコピコしている鳥さんは、会話とかは出来ないけどなんだか機嫌が良さそうなのは分かる。
「おう、決まったぞっ!『ピーちゃん』じゃっ!」
「え‥‥‥‥」
どどんっ!とドヤ顔で決められても‥‥‥‥。そして『ピーちゃん』それでいいのか。さっき『ピーコ』でキレてたよね?
「‥‥‥‥それでいくの?さっきの『ピーコ』とどこが違うの?」
私の当然の疑問に、ふふんと何やら意味深な顔をするおっさん。
「お主を見習って、ワシもコイツに真名を付けたんじゃっ!」
さらにドドンっ!と二人(?)でドヤられた。
私を見習ってって事は、シロ君の事よね?という事は『ピーちゃん』は渾名という事か。
まあ、ピタゴラスなんちゃら三世とか長々と名乗られても、なんだから『ピーちゃん』でいいか。
「よろしく、ピーちゃん」
挨拶すれば、「ピヤ」と顔(?)に似合わない可愛い声で返事が来た。‥‥‥‥うん、かわいいではないか。
「─────はっ!私は一体どうしたんだっ!─────うおぉぉォォォォっ!!」
白目を剥いていたおっさんが跳ね起き、同時に自分の頭に起きた異変に歓喜し、小躍りしだした。
‥‥‥‥おっさんのヘッドバンギング姿。この世界では歓喜の踊りはヘッドバンキングなのだろうか‥‥‥‥なんだろう、ちょっと悲しい。
何とも言えない気分で、いい年をしたおっさんの小躍りを遠い目で眺めていると、遠くで花火の様な音が響いてきた。
「─────何の音じゃ?」
その場にいる全員が、音のする方向の窓に目をやると、遠くの建物で煙が上がっていた。
「─────あの建物って、まさか‥‥‥‥」
「砦ですよっ!」
ウィル少年が叫ぶと同時に、更に二本の火柱が上がるのが見えた。遅れて爆発音が響いてくる。
「─────なにあれ?どういう事? 火事? 事故とか?」
疑問に思う自分の前に、ピコっとスクリーンが出現した。
『 侵入者により、砦の『大浴場』が半壊されました 』
「─────はぁあ゛ぁん!? 誰じゃぁぁっ!!」
私の楽しみを邪魔する奴はぁぁぁぁ─────!!




