一般人
「すげぇ‥‥‥‥あのラングが一発でのされた‥‥‥‥」
「‥‥‥‥やっぱ只者じゃない」
「ラング椅子にされてるけど、‥‥‥‥嬉しいのかな」
「お前、何言ってんだ。逝ってるだけだろ」
周りがなにやらざわつくが、構いやしない。─────無遠慮に年齢を聞く方が悪いのだ。
─────そんな奴は鉄槌あるのみ。ふんっ。
意識のないラングを椅子代わりにし、得体の知れない気配を漂わせた人物を前にして俺達は、声が出せなかった。
そこへ背後から、スススと雑用係の少年が寄ってくる。
「お二方、女性に対して体のサイズ、年齢、容姿、もっともキレられるのが、体重です。これが一番の地雷ですからね。気を付けてください。聞いちゃだめですよ? あの様子だと、次に地雷を踏んだらラング様の上に積まれると思います」
少年のヒソヒソ忠告に、ぴっと背筋を伸ばす。
‥‥‥‥俺‥‥‥‥積まれるのか‥‥‥‥。いやいやいや、そうじゃないだろ。
「─────んん゛っ。俺はこの隊の隊長でアルヴァレス。アルって呼んでくれ。こっちが副隊長のフリート。今椅子になってるのがラングだ。アンタには色々聞きたいことが山とあるんだが、取り敢えず─────何者だあんた?」
何か少年とヒソヒソしてたけど、聞いてきたことは普通に自己紹介だった。
普通に名前を訊ねられたので、自分はリオだと答えたが─────何者?
‥‥‥‥何者?なに?え~私は~ん?んん? んんん?
─────うんうん唸って、あ、と気付き手をポンと鳴らす。
「─────うん、普通の一般人!」
そうそう。自分はそこら辺にいる、普通の一般人だ。─────うん、間違いない。
「「「「そんな一般人いねえよ─────!!!」」」」
直後、周りからモーレツにブーイングを浴びました。─────あるぇ?
「お~シロ君。あれが砦の城だって。実用重視っぽくって渋いね~」
今や目の前に、森から眺めていた建物が目前に見えてきた。
遠目からでもやたらデカい建物だと思ってたら、砦の城だったのね。
─────ぷしっ。
シロ君から、不機嫌な鼻息返事をいただきました。
うん、解らないでもない。今だって、私達の背後には「姉さん、休憩いたしやすか!」「飲み物お持ちしやしょうか?」とウロウロウロウロ世話をしたがる騎士がいる。例の、髪生えちゃった君だ。
はっきり言って、うざい。シロ君、─────やっちゃう?アイツやっちゃう?て目で見ないで。私だってさすがに空気読んでるんだから。大丈夫、大丈夫。もうすぐね、ほら来た。
「いい加減にしなさいっ!」
─────はい来た、オカン。
どこにでもいるんだね、オカン要員。副隊長って言ってたから、やっぱりオカン要員だね。今だって、耳引っ張りながら私達から引き離してくれた。─────ありがたや。
昨夜の理不尽なブーイングの後、神経質そうな副隊長さんとやらに、根掘り葉掘り聞かれたが、要はどこに所属しているのか?という事が聞きたいらしかった。
もちろん、異世界転生者なんて事は言えないが、というかこの世界に来てから、あの森以外自分は知らないからね。
ギルド?入ってないし。魔導士?誰がそういうの認定してくれるの? 剣士?それは自己申告制なのかな?
─────という事で。やっぱり、自分は一般人じゃんっ!
「‥‥‥‥ぜってぇ違うだろ‥‥‥‥」
なにやら下から、うめくような声がしたようですが、聞こえません。
取りあえず、砦の城に来てくれないか、という事らしいが、え~どうしよっかな、なんか面倒ごとに巻き込まれそうな予感がするし、と考えていると。
「僕、このミウの実使って、甘いお菓子作ってみたいです!よかったら、試食とかしてもらっていいですか?」
「はい!喜んでぇ~」
─────即答でした。




