第52話 お馬さんに乗ってレッツゴー
「あのダダルさん。馬洗っていい?」
「は? 来たと思ったら馬を洗うだって?」
開けっ放しのドアの向こうに見えるマトルドを指差した。どこかの国で「まだら」という意味だと聞いたからつけた。かっこいい名前だよね。
「どうした、あの馬。なぜ洗う必要が?」
「あのね、凄く臭いの!」
処分されると言うから買ったマトルドだけど、触ってみると毛はごわごわ。これは洗わないと乗れない!
という事で、手綱を引いて走って来た。言ったら怒らせそうだから言わないでおこう。
マトルドに近づいたダダルさんも顔をしかめている。
「まあ、お前が洗うならいいが。馬は犬と違うぞ?」
「それは大丈夫。これももらったから」
去ろうとするおじさんを呼び止めて、洗う道具もつけてもらったんだ。マトルド専用のブラシがあったんだよね。
「じゃーん。お馬用のブラシだって!」
「いや、知ってる……」
「なんだ。知ってたんだ」
「はぁ……。馬は犬と違って大人しくないぞ?」
「うん。さっきまで大変だった。やっと大人しくなったんだ……」
『はぁ。やれやれ……いつになったら出発するのやら』
「あ、ごめんね。チェト。あ、そうだった! ダダルさん、暫くチェト達の肉止めてもらっていい? 数日経ったら腐っちゃうし」
「それもそうだな。そうだ。数日分、貰ってきてやる。洗ってな」
「あ、はい」
『おぉ! 肉を食べれるのか』
『久しぶりの生肉ね』
「ダメだよサザナミ。焼いてからね」
『え!?』
『生は食わせてもらえんぞ』
『………』
僕は、チェト達が使っている石鹸で、マトルドを洗った。
汚れが落ちて臭いも消えた。あのおじさん、マトルドを洗ってなかったみたい。ブラッシングもしたらツヤツヤに。でもまだらは変わらないから模様なんだね。
「おま、早過ぎだろう」
お肉を手に戻ってきたダダルさんが、マトルドを見て言った。
「え? 何が?」
「洗い終わるのが! ってブラッシングも終了したのか。ツヤツヤだな」
「うん。これなら乗れる」
「乗れる?」
「ううん。なんでもないです。あ、お肉ありがとうございます」
「おぉ。焼いてもらったぞ」
「本当? ありがとう。二人共食べて行く?」
『食べて行くぞ! お腹がすいていては走れない』
『そうね。頂くわ』
「じゃ、半分ね。あ、お皿が無い」
「犬コロなんだから地べたで大丈夫だ。ところで随分小さな馬だな。ポニーか? それにしても凄い長いたてがみだな」
「うん。はい」
ダダルさんからお肉が入った袋を渡され、答えながら二人にお肉を上げた。
ポニーかどうかは知らないけど、マトルドはチェトより長い毛のたてがみとしっぽがあった。ふさふさとツヤツヤをダブルで味わえる。
「あ、そうだ。ダダルさん。これつけられます?」
荷物入れをもらったんだけど、いまいち付け方がわからない。
「どれつけてやる」
ダダルさんは、マトルドに近づいて付けてくれようとしたんだけど、近づいただけで暴れた!
「おわぁ。じゃじゃ馬だな。これ俺じゃ無理だな。やり方を教えるから自分で付けろ」
「ありがとう。そうする」
教えてもらった通りやると付けられた。よかった。
「お前、犬だけじゃなく馬も手懐けられるんだな」
「うん? ダダルさんが動物に嫌われているだけじゃない? 犬の時もそうだったじゃないか。ユイジュさんだったら大丈夫だったし」
「動物も怖がる強面なこの顔が原因かなぁ」
とダダルさんが、顎を擦り自己完結している。
「ロマド、犬コロだけじゃなく、自分のご飯も用意すれよ」
「あ、そうだった! 家によってお母さんに言わないと!」
「……こりゃ行き違いだな」
「え? 何?」
「こっちの話。もう昼過ぎだし、昼食べてから出な。気を付けて行くんだぞ」
「はい。ありがとうございました。行ってきます」
ユイジュさん見回りかな。どうせならユイジュさんにも行ってきますしたかったな。
僕は家によって、仕事の話をお母さんにした。お昼を食べて、お弁当を作ってもらって家を出たら夕方になっていた。
「ねえ、このまままっずぐに行ったらダメかな?」
『真っ直ぐとは?』
「道通りじゃなくて真っ直ぐ突っ切る」
『モンスターに出会うと思うがいいのか?』
「え!? あ、そっか」
道の方が安全だったんだ。
「道を走ろう」
僕はマトルドにまたがった。本当は、僕も同じぐらいに走れるんだけどね。
「では、出発! チェト、サザナミ、疲れたら言ってね。休憩にするから」
やっと僕達は、出発したのだった。




