13 新たな戦い?
「バァ~幽霊じゃ無いよ~~。」
カリナのお道化たその言葉が合図の様に階段から降りて来た魔族は
2階へイズミ達が攻めて来た事を告げるとその内の1人は
手すりを飛び越えそのままイズミに向かって斬り込んで来た。
それを顔の前で構え真面に受けたイズミの剣はギリリと軋んだ。
『ウワッ!重っ!アッマッズ・・』
魔族の体重の乗った剣圧は更にイズミの剣を軋ませイズミ自身の体勢を崩させると
そのままイズミを押し倒した。
そして止めとばかりにその魔族がイズミの上に馬乗りになり剣先をイズミの胸に向け振り上げた。
「まずは一人目!お前はこれで終わりだ。」
「ウッソ!」
一瞬の事でそれ以上防ぐ事すら出来ずに居るイズミを見て
既に勝利を確信した魔族は両手で剣の柄を持ちイズミを突き刺そうとしたその瞬間
突然『ドスッ!』という鈍い音と共にその脇腹を斬り付けられそれとほぼ同時に
爆風によって横へ吹き飛ばされて行った。
その飛ばされた魔族の後ろには片手に剣を持ったオルイド
そしてその手前にはほっとした様子のシルクが精霊状態で立って居たが
オルイドはそのシルクには気づかず
魔族を吹き飛ばしたのは私だと思って居る様だった。
「イズミ、もう少し自分の体格と力を考えろ。
真面にぶつかって勝てる相手じゃ無い事位判るだろう!
あんなギリギリで吹き飛ばす等ちょっとでもミスったら終わりだ!」
「ゴメン・・」
「ゴメンじゃない。そう思うんだったらさっさと起きろ!奴らは待ってくれない!」
倒れたままのイズミに
そう云うと更に2階から下りて来る魔族達に対して剣を向けた。
「今日のオルイド怖いな。」
オルイドのその言葉に立ち上がると下りて来る魔族に対し爆風を放った
爆風に飛ばされる者、必死に堪える者と様々だったが爆風を乗り切ったその内の1人が
私に対し攻撃魔法を放った来た。
「サンダーアロー!」
「エーイ!飛んでけー!」
「うをっ!」
『ズン!』
それに対し放置されて居た大きな木箱を幾つもその魔族に向けて爆風に乗せて飛ばすと
その内の一つが見事にクリーンヒットしそのまま木箱と共に階段の下まで落ち気を失った。
「ヤッパリ私はこっちだね。」
そう言って自分の両手を握ったり開いたりして見せると2階へと飛ばされた魔族に対し風の刃を飛ばした。
私達の後ろではヤグスが先頭に立ちその後ろで
リオガルドとドリアが立ち向かいセティアやカリナ
そしてタルト3人の所まで魔族が行く事が出来ずに居るのを
見ていたオルイドが安堵の表情を浮かべて居るのを見て取れた。
例えマリオネットツリーでもタルトの姿をしたものを斬られたショックは大きかったらしく
あの時オルイド自身傷を負って居たにもかかわらず
暫くの間その事ばかり口にして居た事を思い出した。
「タルトが斬られるのを防げなかった。・・・」
幾ら私がマリオネットツリーだからと云っても
「自分は本物のつもりで守って居た」
それから暫くタルト達と会えなかったせいか
そう云うばかりで中々立ち上がれなかったオルイド。
その為か今日はタルト達の所まで魔族が行けない様に必死になって居る様だった。
ああそうか、オルイドの中では一度大事な人を失って居る
だから二度とその様な思いをしない為私に強く当たったんだ。
そう思うと浮ついた気持ちを切り替え
下りて来る魔族へ風の刃を放ち魔族達に立ち向かって行った。
10分少々だと思ったが下りて来た魔族を全て倒すと
ヤグス達が私達を残したまま2階へ上がって行き
その間私達は1階の店舗部分を調べる事にした。
1階は3つの部屋に分かれて居てその大部分が大きな木箱が置かれた店舗部分
その奥には事務所らしき部屋と休憩室と思われる2つの部屋が有ったが
そこには机とテーブルとイス以外何も無かった。
それから間も無くヤグス達も魔族が残って居ない事を確認して1階へ降りて来ると
乱雑に(一部私が荒らしたが・・・)置かれた木箱を調べ始めた。
結局10名程居ると思われた魔族は結局8名。
全て1階の店舗部分に倒れて居るが生き残ったのが3名ほど居る。
彼等を気絶したまま全員縛り終えており後は間も無くやって来るであろう
王都守護兵へ引き渡す段取りがついて居るが
その前に私達も聞きたい事が有る為その内の1人にヤグスが術を掛け
彼等の主犯格を聞き出そうとすると
悪魔の『エリア』魔族の『スメイル・ダール』『ボリム・ドント』
そして『ジャミ・フォーク』の名が出て来ただけで
何故かそれ以上上の存在の名を知らされて居なかったのかそれ以上聞き出す事は出来なかった。
そしてアジトの場所は既にこちらで把握できている3か所以外出る事は無かったが
彼らから興味のある事が聞けた。
「今日・・浄化の森・・・魔物・・・ナリエス・・」
「今日浄化の森で何か企んでると言う事?」
私が術を掛けて居るヤグスに問うとその魔族はそこまで話してそのまま気を失い
ヤグスはその男をそっと寝かせ顔を上げた。
「彼らの別働班が既に動き回って居る様だ。浄化の森・魔物・ナリエスこの3つが示す物は。」
バン!
そこまで話し掛けた時突然誰も居ない筈の休憩室のドアが開いた。
そこから出て来たのはこのアジトに居る筈の無い悪魔エリアそしてミ・ナ・ト・・・
思わず叫びそうになるのを必死に抑えその2人を見つめた。
その姿がエリアが思い描いた姿通りだったのかほくそ笑んだ。
「そうそうそうそう。その顔だよボクの求めて居たのは~。そう来なくちゃね。」
嬉しそうに笑うエリアに対してのヤグス達のギリっという歯ぎしりの音がイズミの耳にも聞えた。
直ぐに彼等はエリアの隙を突こうとタルトは魔法の詠唱を始め
セティアとカリナそしてヤグスはジリッと剣を構えた。
しかしそれを見たエリアは、その姿を笑うが如く言葉を続けた。
「ああ~気持ち良い。やっぱりそれが人質に対する正しい反応だよね。
じゃあ剣を捨ててその詠唱を辞めて貰おうか。」
その言葉にタルトは詠唱を止めヤグス達は剣をそのまま手放す姿を見たエリアは満足そうに笑い
後ろに5人の魔族に何かを云うとその内の2人が私達の方へ来て一人づつ手足を縛り始めた。
今なら油断して居るエリアからミナトを救い出せる。
そう思いシルクに顔を向ける事無く私は指示を出した。
「シルク彼女は貴女の事を気付いて居ない。私達が彼女の気を引くからその間にミナトを救出して。」
「判った。」
その言葉を聞きシルクがエリアの所へ向かおうとエリアの方を向くと
何時の間にか氷の矢が私の目前まで飛んで来ている事に気付いた。
『間に合わない!』
私が精霊の力を放つ前にその矢は私に突き刺さる!
そう思った瞬間精霊状態のシルクがその矢を自ら叩き落とし事無きを得たが
エリアはそれさえも当然とばかりに笑って居た。
「動くなと云った筈だよ。」
エリアが笑いながらそう云うとミナトの後ろに回り手に持った剣を
振り上げた。
「ダメ!止めて!」
大きな声で叫んだがエリアは躊躇なくミナトの足首を狙い
その足の健を断ち切った。
「グワァーー!」
『ウワ~~!』
思わず目を覆いたくなる様なミナトがのた打ち回る姿を見て胸張り裂けそうな位
苦しくなるのを覚えた。
「シルク私は大丈夫早くミナトを早く助けて。」
私は俯きシルクにそう言うのがその時は精一杯だった。
ところが彼女がエリアの手前でそれ以上先へ進む事が出来なくなって居る事に気付いた。
『結界?』
どうやら私達が気付かない内に結界を張ったらしい
まるで私達がミナトを密かに奪い返す事を知って居たかの様な準備の良さね。
イズミはそう思って居たが
実際はエリアに対して今迄レイラやレアがまるで人質など居ないかの様な行動が原因での処置
と言う事はイズミ達は全く知らない事実だった。
そして魔族の男達がイズミ達全員を縛り上げるとエリアが何かに気付いた様に突然周りを見渡した。
「そういえば幻術使いが居ないね。どうしたのかな?
キミらが生きているなら彼女も生きて居ると考えた方が良い筈なんだけど居ないようだね。」
そう云うと足元で痛みを堪え蹲り動けないで居るミナトを尻目にイズミ達を縛り上げた1人の魔族に
シェルシアを探しに行かせた。
実は裏口から入って来たエリアや魔族達は気付かなかったがイズミ達がこのアジトへ入る前に
魔族達の人を操る術式を阻止する為近くに張ったシェルシアの魔力を注ぎ込んだ魔法陣の所へ
勇者と共に行った後だった。
『その一つを発動させれば他の魔法陣もそれに共鳴して動き始める様にしてある。
そしてシェルシアには勇者が付いて居るから大丈夫だろうけど問題は
あの結界をシルクが破るまでの間どうやって時間を稼ぐかね。』
それじゃあ少しでも私の方に気を引かなくちゃ。
「エリア!私はどうなっても良い!だからミナトを放して!」
「面白い事を云う女だね。キミがこの男以上の価値が有るというのかな?」
「判らない、でも今のミナトは魔法も使えずこの中では殆ど戦力にはなら無いわ。
逆に私は精霊使い戦力を削るなら私を人質にした方が良いんじゃない?」
「そうかも知れないけどあの女にしてみれば君よりこの男の方が価値が有りそうに見えるけどね。
でも、・・・何もしないなら・・」
「私は何をされ様とも一切手出しはしないだからミナトを傷付けるのだけは止めて。」
その時初めて私を諭す様にミナトが口を開いた。
「止めろ。イズミ!俺は大丈夫だ君まで傷つく必要はない。」
「おお~麗しき仲間愛?」
茶化す様にエリアが云うとイズミ達を縛って居た魔族に剣を握らせイズミの横に立たせると
イズミの右肩に突き付けた。
ジワリと血が滲むのを見たミナトは膝まづいたまま身を乗り出し叫んだ。
「止めろ~~!彼女を傷付けるな!」
「ミナトこの位大丈夫、ミナトは私が守る。必ず助け出す。だからそのまま」
この位の痛み耐えて見せるそうすれば間も無くシルクがミナトを助け出せる
それまでの辛抱。
そう思いながらも必死に痛みに耐えて居るとエリアが不気味な笑いを見せた。
「ほ~、もしかしてこれは三角関係?面白い。」
「うっ・・・」
そう云って傷ついたミナトの足を踏みつけながらイズミの方を見るエリアの顔がニヤリと笑う顔が見えた。
「止めて!お願い!それ以上彼を傷付けないで!」
「その分お前が傷ついても良いと云う事か?」
そう云うと後ろをチラリと見たエリアが結界を解き
後ろに居た魔族をイズミの所へ行かせたその瞬間
シルクがその中へ潜り込む事に成功したのが
押し付けられる剣先の痛みに耐えながらイズミの目の端に見えた。
『やった・・』
しかしそう思う間も無く後から来た魔族の男がイズミの所へ来ると今迄剣を突き付けて居た魔族は
ヤグス達の所へ行くとほぼ同時に突然イズミを殴りつけそのままイズミが飛ばされる様に倒れた。
「止めろー!イズミに手を出すなーー!」
ミナトが叫ぶがそれでも辞める事なく何度もイズミを蹴り飛ばす姿を見たミナトの怒りが
彼の表情を変えた。
「止めるんだー!貴様らーーー!」
ズン
その時鈍い重みのある音がしたかと思うと
今迄イズミを蹴り飛ばしていた魔族が突然倒れた。
イズミがその魔族を覗き込むと
プスプスと焦げる様な匂いと煙が腹部から上がって居る
そしてふとミナトの方を見ると驚いた様子でシルクが精霊状態のまま立ち止まって居るのが見えた。
その脇で蹲って居たミナトが上半身を持ち上げギラギラした目で今倒れた魔族を睨め付けて居た。
「イズミ!」
その声の方を見るとセティアが驚いた様に声をかけて来た。
「今ミナトが魔法を使った!まさか記憶が」
セティアがそう言っている間にミナトが自分を縛って居る縄を
風魔法で断ち切ると這いずってイズミの方へ来ようとして居るのを見たシルクが
精霊状態を解きそのまま抱き抱えてイズミの側まで連れて来た。
そのミナトの顔を覗き込むと今迄とは全く違う光の宿った眼をした
笑顔をイズミに見せるミナトの顔がそこにあった。
「イズミ今迄ゴメンこれからは俺が守る。」
『ミナト・・・ダメだよそんな事言いっちゃ。
ダメだよこれからは俺が守るなんて
ダメだよ・・・ミナトはシフォンさんの所へ戻らなくちゃダメだよ・・』
思わず忘れようとして居た気持ちが込み上げ泣き出しそうになるのを
俯きミナトから顔を背ける事で必死に堪えた。
そしてその遠くにエリアが何か云うのが聞えたがその言葉が頭に残り何を云ってるのかさえ判らなかったが気付くと勇者様が戻りエリアと対峙して居るのが目に入った。
ああ、これで決着がつくそうなればミナトをシフォンさんの所へ連れて行かなければならない
その前に。
「ミナト、その傷を見せて、皆の所へ戻る前に私が治して置くわ。
ミナトも自分の足で歩いて戻りたいでしょ。」
「イズミ・・俺は何時も助けられてばかりだな。有難う。頼むよ。」
そう云うとミナトはうつ伏せになり足を延ばして見せた。
『違う助けられて居るのは何時も私の方だ、
ミナトの存在そのものが私の力になって居る。
でもそんな事は口が裂けても口にする事は出来ない事は十分知って居る。
だから・・・』
私はその後何も言えずミナトの傷口に自分の唇を近付け精霊の力を流し始めた。
そして治療を始めて間も無く勇者様らしい叫び声が聞こえたがそこは聞こえない振りをして治療を続けた。
それから直ぐに王都守護兵団の人達がアジトへ駈け込んで来た時には全てが終わり
悪魔のエリアには逃げられたがアジトに居た生き残った魔族全員捕らえられて行き
残った王都守護兵団の者達は怪我人の治療やアジト内の探索を始めた。
オルイドも軽傷ながらも治療を終えタルト達の所へ行き何かを話している様子を見て
ようやくこのアジトの制圧が完了したのだと安心感が出て来ると一気に疲れが出て
来た気がした。
その時シフォンさんがアジトの中へ駈け込んで来た。
「ミナト!」
ミナトに駆け寄るシフォンさんをそっと入れ替わる様に治療の終わったミナトの側を離れた。
『そう、これで良いんだ』
少しでも気持を落ち着かる為外へ出ようと入口へ向かい歩いて行くと
元女神?のシェルシアと悪魔のレイラさんが並んで中へ入って来るのを見付けた。
2人とも笑顔を見せて居るが何故か目が笑って居ない事に私は気付き声をかけた。
「シェルシア。」
「あっ!イズミちょっと新鮮な空気を吸いに2階へ行くわね。」
「新鮮な空気って外の方が良いんじゃない?」
「2階の方が良いわ。じゃちょっと行って来るわね。」
そう云って手を振り2階へ上がるシェルシアと同じ様にレイラさんも
シフォンさんに一言二言話したと思うとシェルシアの後を追う様に2階へ上がった行った。
その後間もなく・・
「早くしろ!早く外へでるんだ!急げ!」
慌てた様子で今迄調査をして居た王都守護兵団の人達が
飛び降りる勢いで2階から駆け下りて来てそのまま外へ出て行くと
建物全体を覆う様に眩い光が天から注ぎ暫くするとそれが薄いカーテンの様に
なるのを目にした。
これ見た事ある!
「シェルシアの結界!」
思わず叫んで居た。
そして1階の天井を見ると同じ様に光り輝いて居る。
これは強化魔法?
シェルシアが建物を強化してる???
「シェルシア!一体難する気?」
ズン!
慌てて2階に声を掛けるも突然建物全体を揺さぶる様な地響きにその声がかき消されて行った。
「「「「「何が起きた?」」」」
そしてその場に居た全員が固まった。




