23 終結 マリスシア
負傷兵の治療が一通り終わったイズミは
タルト達と引き上げていく魔王軍の魔族達を見て居た。
10万もの魔族の軍隊の退却するその姿はイズミ達が今まで見た事の無い様な壮観な物だった。
特に重武装の重量級の魔族が無言で過ぎ去る時の足音が
その一人一人の力強さを示すが如くズシンズシンと響き渡りイズミ達の目を釘付けにした。
そしてもし彼らが真面に人族と戦って居たらどれだけの犠牲者が出て居ただろうと考えると
とても恐ろしく感じていた。
そんな時突然イズミの後ろから声を掛けられ振り向くと
そこに居たのは同じく治療の終わったシェルシアとマリスシアがそこに居た。
「イズミ改めて紹介するわ。彼女はマリスシア元豊穣の女神を目指して居たんだけれど
ちょっと問題を起しちゃって追放されちゃったのよね。」
そう言ってマリスシアをちょっと嬉しそうに紹介するシェルシアがそのマリスシアを自分の前に出した。
そのマリスシアはバツが悪そうに
「イズミ貴女の事はシェルシアから聞いたわ。貴女を守る為にシェルシアが天界を追放されたんだって?
本当にバカよね。もっと良い方法は幾らでも有ったのにね。」
「何言ってるのよ!貴女も似た様な事で追放されたんじゃない!」
そう言って微笑むマリスシアにシェルシアが食って掛かったが何方も
喧嘩するでもなく互いに笑いながら言ってる所を見ると結構仲が良い2人に見えた。
しかしマリスシアは付け加える様に
「でも、・・羨ましい。貴女は生きている、そして彼女と共に居られるものね。」
そう言って寂しそうにするマリスシアにイズミが近寄り
「どう言う事?良かったら教えて貰っても良いかな?」
「シェルシアが守ろうとした貴女なら良いかな?・・」
そう言ってタルト達から少し離れた場所まで連れて行かれると自分が追放された理由を
シェルシアの隣でイズミに話してくれた。
マリスシアは豊穣の女神の下シェルシアと違い
地上界の土地やそれに殉じる人々の様子を調べ周って居た。
彼女の担当はイラエミス共和国。
イラエミス共和国の各農作地を飛び回って居る時ある村の土地がやけに痩せ細り
到底食物が育つ環境に無い事に気が付きそれを豊穣の女神に伝えた所
その村より更に深刻な所が有りそちらが先とそのまま置いて置かれる事になったが
マリスシアはどうしてもその村が気になりちょくちょく見に行く様になったそうだ。
そんな時必死に畑を耕し何とか工夫をしながら畑を再生しようとして居る男性が目に付いた。
彼は来る日も来る日も誰もが諦めかけている畑を耕し自分で工夫した肥料を撒き種を撒いた。
しかしその男の思いは叶わず作物は枯れ食べられそうな物はほんのわずかしか採れず
他の村人は遂に村を捨てる物も現れたがその男は諦めなかった。
それを見たマリスシアは豊穣の女神に何度もその村の現状を訴えたがまだ他の村が先と取り合って貰えず
遂にマリスシアがその男の前に姿を現し村の土地に豊饒の術を掛け
少しづつだったがその土地を蘇らせ始める事に成功した。
それに気づいた豊穣の女神は何度も止める様にマリスシアに言ったがマリスシアは止めなかった。
そして遂にマリスシアとその男の努力が実りその年の収穫は豊作となり2人で抱き合いながら喜んだのだが
遂に女神ミリニシアに呼ばれマリスシアが得意として居た『豊饒の術』と女神の資格を奪われ
天界を追放された。
マリスシアは好きになって居たその男性と一緒になりその村で過ごす事になったそうだ。
「待って!マリスシアは何度も注意されたって言うけど、一度地上でも力を使ったらダメなんじゃ無かったの?」
「それは、私がニシア様達の言う事を何度も効かなかった為作られた物なのよ。
だからシェルシアが一度力を使っただけで追放されたのは私のせいとも言えるのよね」
そう言ってマリスシアがシャルシアの顔を見るとシャルシアはマリスシアの頭に軽くゲンコツを落とし
「もう終わった事は気にしない。
でも、マリスシアは一緒になった男性を失ったのよね。」
「えっ!どうして?マリスシアは治療魔法使えるのに。失った物を再生する事も出来るんでしょ?」
驚くイズミに沈んだ声でマリスシアが答えた。
「でも、死人には効かないもの。何時もなら行商の人が彼の野菜を買ってくれたのだけれど
その行商の人が何日も来られない日が続いたのよ。
でも畑の野菜の成長は待ってくれない。
収穫日を迎えた野菜は暫くすれば育ち過ぎて食べられなくなる物も出て来て
仕方なく彼が数人の村人と近くの町まで売りに行ったの。
その町は私達の村まで馬車で半日そんな心配する様な距離じゃなかったから
私は家の仕事や畑仕事が有った為残り何時もの様に彼の帰りを待って居たら
一緒に行った村人が大怪我をして彼の死を知らせて来たのよ。
村の野菜を売った帰り盗賊に遭い
『彼は、村人達から預かった野菜を売ったお金をずっと抱き抱え守ろうとして盗賊に斬られた』と。
私は悔しかった、近くの町までだからとそんなに心配する事無く送り出した私自身を許せなかった。
悔しくて悲しくて何日も泣いたわ。そんな私を村の人達は毎日心配して訪ねて来てくれた。
自分達だってその盗賊に親兄弟を傷付けられた人も居るのに皆が優しく私を支えてくれたのよ。
でも彼の死は私の胸に大きな穴を空けたままだったの
そんな時火の精霊バウムに出会ったのよ。
精霊状態で居たバウムを見つけた私は思わず声を掛けたわ
そして何度か会う内に彼と契約する事にしたの。
彼は精霊状態の自分を見つけられた事を驚き、そして私の悲しみを少しでも和らげたいと言ってくれた。
そしてバウムと暮らし始めて何年かした時たまたま実体化したバウムを連れた私を見付けヤグスが私に声を掛けて来た。『キミは精霊使いか?』ヤグスは一目でバウムが精霊で有る事を見破った。
私も彼が魔族である事は気付いて居たけれど
彼からは私に対して邪気を感じられなかったから私も普通に接した。
それからは何度もヤグスが私の元へ来るようになり親しくなると彼は自分に協力してくれないかと
話しを持ち掛けて来た。今自分の仲間がこの村を拠点にしようとして居る
その際ここの村人は全員殺される事になり兼ねないからそれを自分がそれを阻止すると。
そしてこのような事が今後起こらないようにする為現魔王を討つ手助けをして欲しいと言われ
ヤグスを信用するようになった私は彼に協力する事にしたのよ。」
マリスシアは自分は女神落ちした事を話せずに居たがヤグスは彼女には特別な力が有る事に気付き
その力を使って欲しと頼まれたのがあの幻術だったとの事だった。
そしてマリスシアが白銀の魔女を石像に変えたのはのではなく転移魔法で他の場所に移し代わりに土魔法で白銀の魔女ソックリな石像を作って誤魔化したそうだ。
その際少しでも本当の様に見える様にワザと涙を流させその涙を再現したとも言って居た。
「彼女に私達を信用して貰うのには苦労したけれどヤグスが彼女に真実を告げ何とか協力を得る事が出来たのよ。」
「あの強いシフォンさんをどうやって涙なんか流させる事が出来たの?私には想像出来ないんだけど。」
イズミは不思議そうに尋ねるとマリスシアはちょっと嬉しそうにしながら
「誰でも死んだと思って居た好きな男性の生存を知れば嬉しい物でしょ。」
「ミナト・・」
「そう彼の生存を伝えたのよ。」
イズミはその話を聞くと俯き黙り込んでしまった。
そうだよね。
ミナトはシフォンさんの恋人。
記憶を失って居てもそれは変わらない事実。
幾らその事を分かって居ても割り切れない自分がそこに居た。
マリスシアが一通り話し終えると又シェルシアと何処かへ行ってしまい
イズミはタルト達と魔族軍の撤退の様子を呆然と見て居た。
彼らの行進は長く続き上空から見ればきっと大蛇がうねり進んでる様に見えるのではないかと
イズミは何げに思っていた。
ただ、その列から抜け出す何人もの魔族の行方を気にする者は誰も居なかった。
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今後とも『男の娘って何?』
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