6 イズミ達の逃走
イズミの剣とシフォンのレイピアがぶつかり合い
一瞬イズミの剣がシフォンのレイピアに吸い付けられると
白銀の魔女に引っ張られ腹部に蹴りを入れられた。
イズミは思わず剣を手放したしまい蹲るととそのままカランカランと音を立てて剣が転がる。
『今シフォンさんのレイピアに吸い付けられた。何故?』
自分の剣を見ても何も変わった所は見られない。
それでは白銀の魔女のレイピアに何か秘密があるのではそう思うと黙って居られず
思わず白銀の魔女に聞くイズミ。
「シフォンさん今のは一体!磁石じゃないですよね。」
その質問に嬉しそうに微笑む白銀の魔女はその質問に答えてくれた。
「長くは続けられないけど私にも風の力を使って真空空間を作る事が出来るのよ。
それをレイピアと貴女の剣の当たる部分に一瞬発生させただけ。だから私のレイピアに貴女の剣が吸い付けられたのよ。」
イズミも真空状態を作り出す事は出来たが殆ど防御や攻撃の為一時的に使うだけで
この様に物を引き付ける為に使った事は無かった。
試しに自分の剣先に真空状態を作ると確かに近くの土等が勢い良く吸い寄せられる。
『成程・・狭い空間で一瞬なら真空状態も難しくない。』
それを確認すると今度はお返しとばかりにレイピアに気を付けながら剣を白銀の魔女に向けて走り寄ると
攻撃範囲外だと言うのに白銀の魔女がレイピアを振るった。
するとイズミが突然何かに腹部を殴られた様な衝撃と共に後ろへ吹き飛ばされた。
『まだシフォンさんのレイピアに触れても居ないのに吹き飛ばされた!今度は何?』
「シオンさん今のは?」
「魔力を風の力に変換して濃縮した物をレイピアに纏わせレイピアを振るったと同時に貴女に放った。
イズミの場合風の力を纏わせたと言った方が分かり易いかもね。」
「シフォンさんまさかこれって。」
「だから言ったでしょ。『このまま貴女達を見逃す事は出来ない』って。
余り時間は無いんだからちゃんと覚えて行きなさい。」
その言葉にふっと周りに居るオアニニス兵の様子を見ると
何かを話して居る様子が垣間見えたが爆風とその中を吸い上げられて行く小石や木の枝の為
何を話して居るのかさえ分からない。
「イズミ。彼らからは私達が何を話して居るのかも、どの様な状態かも良く分からない筈。
分かるのはただ私達が戦って居る様子だけ。それも長引けば怪しまれるわ。
もう少ししたらこの竜巻を解除するからそれまで私のやる事を良く覚えて置いて。いいわね。」
その言葉を聞いてイズミは白銀の魔女の思惑に気が付いた。
自分達に力を付けさせようとして居る!
「分かった。シフォンさんお願いします。」
それからはワンパターン的な使い方しかして無かった風の力を
二重使いの仕方や応用等を習いながらその少ない時間を自分の力を付ける為に精一杯使う事にした。
悪魔のレアとその契約者フェスタの前に降り立ったのがミナトだった。
既に誰かが自分達を止めに来るかも知れないと思って居たフェスタがその確認をすると
レアは直ぐに臨戦態勢に入った。
「おおうよ!行くぜミナト!覚悟しろよ!」
その言葉を合図の様にミナトからレアに向けて『ウォーターアロー』『サンダーアロー』
を放つとレアは土の壁を魔法で作り目の前に盾を作り防御したがウォーターアローを防ぎ
次にサンダーアローも防いだと思った瞬間自分の身体に電気が走り一時見動く一つ出来なくなってしまった。
しかしその間幾らでも攻撃をする時間が有ったにも関わらずミナトは攻撃をして来ない。
『随分となめられた物だな。』余りにも余裕の有るその姿に思わず舌打ちが出る。
「チッ!」
次は自分の番とばかりに
「アイスピア」
そのまま剣を持ちもう一方の手にはエアバーストを待機させミナトに立ち向かう。
ミナトも目くらましに「サンドストーム」砂嵐をレアに放つとレアの右脇に滑り込み
レアに『ウォーターアロー』を放った。
それを身体を捻りながら避けると待機して居た『エアバースト』放つ
それと同時にフェスタからも『アイスアロー』を放ち既にミナトの逃げ場がない
『やった!』そう思った瞬間ミナトの姿が消え『エアバースト』と『アイスアロー』が
ミナトが居た場所でぶつかり合い消え去った。
一瞬何が有ったか分からず呆然としながらも周りを探して居ると二人の上からミナトの声が聞えて来た。
「悪魔のミレイユの事を覚えて居るか?俺も覚えるまで手古摺ったが
転移魔法覚えると結構使えるぞ。
ミレイユみたいな滅茶苦茶な使い方は出来ないだろうけど
レアお前なら俺よりずっと早く覚える事が出来る筈だ。やってみろ」
その言葉にレアが怒りを御覚えた。
『何を偉そうに!俺が転移を使えないからと来馬鹿にしやがって。叩き潰してやる!』
そう思いながらミナトに食ってかかるレア。
「はあ?何で俺がそんな事しなくちゃ行けねんだ!さっさと下りて来て俺と勝負しろ!」
その時激しい痛みが頭に走った!
その衝撃は良く覚えの有る痛み。
フェスタの仕業だ。
「何するんだ!まだ何もしてねえじゃないか!」
怒りのままフェスタに抗議するとフェスタからは意外な言葉が出て来た。
「だから貴方はバカだって言われるのよ。ミナトは貴方に転移魔法を教えようとしてるのよ。
その位分かりなさい。」
「ああ?」
「ミナトゴメン、こんなバカで。でもレアならきっと覚えは早い筈。お願い教えてあげて。」
「勿論そのつもりで来たんだ。時間は余りないから基本だけ教えて行くぞ。レア良いか?」
レアは正直納得出来なかったが契約者であるフェスタの言葉に逆らえず。
「しょうがねえ。教えて貰ってやる。」
「レ~~ア~~!」
その言葉にフェスタの方を振り向くと鬼の形相で棍棒を持つフェスタの姿がそこに有った。
レアから見ると正に鬼そのもの!
しかも逆らう事の出来ない契約者のその姿を見て仕方なく言い直した。
「うっ!分かったよ。ミナト宜しく頼む。」
「ああ、こちらこそ宜しく頼む。まずは目標になる場所をしっかり覚える事そして大よそで良い
からその距離を頭に入れる事から始めようか。」
そこから転移魔法の特訓が始まった。
イズミ達の殿を務めていたファシズの前に勇者が立ち塞がるとファシズも剣に手を添え身構えた。
「貴方がファシズだな。僕は帝国の勇者だ。申し訳ないが貴方をこのまま行かせる訳には行かないのでね。僕が相手をさせてもらう。」
「帝国の勇者だと。噂は聞いて居る。あんたには物足りないかも知れないが
俺にも魔族の意地って物が有るんでね。精一杯抗わせてもらう。」
ファシズは正直自分には荷の重い相手で有る事は十二分に分かって居た。
『まずはどうやって勇者の足止めをして姫達を逃がそうか?』
そう思って居ると突然自分達を取り囲む様に竜巻が発生して自分達の行く手を阻んだ。
それどころかファシズと部下達との間にも竜巻が発生して孤立してしまった。
『やられた!これでは完全に勇者に潰される。しかし・・・』
その気持ちを押し殺し勇者に自分の出来うる限りの力で立ち向かった。
魔力を纏わらせた渾身の一撃を入れるも軽く受け流され勇者の剣も折れる事無く
ファシズが次々に絶え間ない攻撃を勇者に向けて放つもどれもが受け流される。
『どうしたら奴に一撃でも入れる事が出来る?』
そう悩み睨み合いが始まると勇者から思いがけない言葉が掛けられた。
「流石元四鬼神の一人良い腕をして居る。」
「何が良い腕だ!お前は全して受け流して居るでは無いか」
「いいや、そんな事は無い。」
そう言って勇者が自分の腕の傷をファシズに見せたが
その傷はどう見ても軽症でファシズから見て傷と言える様な物では無かった。
しかし勇者は続ける。
「多分剣の腕だけでは僕は貴方に敵わない。それだけの腕を貴方は持って居る。」
「俺がこれだけ斬りつけてもその傷一つ付けるのが精一杯なのに一体何を言おうとしてるんだ。」
「僕は魔力を使って全てを強化して居るんだ。その魔力自体は貴方にも負けないと自負して居るが
剣の腕は貴方に劣ると思って居る。」
「結局総合力で結局俺はお前に勝てないと言う事を言いたいのか?」
「そこでだ、これから僕のやる事を良く見て居て欲しい。」
「・・・一体何を・・」
ファシズは勇者が一体何を言いたいのか分らなかったが
勇者の真剣な顔が只ならぬ物を何かやろうとして居る事だけは分かった。
その勇者は剣を斜めに構えると魔力を剣先に集中させ
ファシズから離れた場所に振り抜きそれを放った。
「ギガフレイム!」
するとその場所に有った物全てが一瞬にして蒸発し消えた。
「こっ此れは・・・」
その様子に驚き固まったファシズに勇者が静かに近寄ると。
「これが帝国の魔法『ギガフレイム』強力で有るがゆえ人族では数人の同時詠唱でようやく放つ事が出来る魔法だが貴方なら一人でも十分使えるだろう。」
「ちょっと待ってくれ。これは一体どういう事だ!お前は俺を止めに来たのではないのか?」
「僕は貴方に『このまま行かせる訳には行かない』と言ったのを思えて居ますか?」
ファシズは勇者のその言葉に驚きを覚えた。
勇者達は周りのオアニニス兵の目を盗み自分達に力を付けさせる為この様な事をして見せた。
下手をすれば今度は自分達が追われる立場になるかも知れないのにここまでしてくれた勇者達の
気持ちを無駄にしては行けない。
そう思うと胸が熱くなる思いがした。
すると間もなくファシズの部下との境に発生して居た竜巻が消え部下達が走り寄って来た。
「ファシズ様御無事で。」
そう言いつつ勇者を睨む部下を制し
「勇者殿は我らの仲間だ。手を出すな。」
その言葉に部下達は不審を持ちながらもファシズの指示に従っていると
勇者からファシズに向かい自分に向かって今勇者が放った
『ギガフレイム』を自分に向けて放つ様に言われ驚いて居ると、
「来ると分かって居る物なら幾らでも避けられるさ。それにファシズにとっても良い練習になるんじゃないか?」
余裕を見せる勇者に
それに答えるファシズ。
「分かったそう言う事ならやらせてもらう。」
その後竜巻が消えるのを合図に『ギガフレイム』を勇者に向けて放つ事になった。
その頃イズミ達の所にもタルト達が駆け寄り白銀の魔女の事を説明し
これからの事を話して居ると白銀の魔女が近寄りイズミに話しかけて来た。
「イズミそろそろお別れね。最後にこの竜巻の正体を教えるわ。」
「そう、何故私の風で消えなかったの?」
「イズミはダウンバーストって知ってる?あれの応用よ。竜巻の手前に風を吹き下ろさせ、
その風が吹き下ろした向きを竜巻方向に向かせてそのエネルギーを利用して竜巻の威力を強めて居るの。
だからこちら側からどんなに風をぶつけようがその威力は吹き下ろす風に吸い込まれるだけ。
そして吸い込まれた力は竜巻を作る原動力の一部になる。
だから貴方の風の力があの竜巻に通じなかったのよ。」
その後白銀の魔女から吸い上げられた小石や木の枝塵がどうなって居るかを聞かれ
「えっと。吸い上げられるから上空に持ち上げられ今度は風の力で吹き下ろされる
そして又吸い上げられる。結局循環する感じじゃないかな?」
「正解。それじゃ今度吸い上げる竜巻だけを消したらどうなる?」
「吸い上げる力だけが無くなるから吹き下ろされた石やチリは風の向きに沿って外に向かって飛んで行く」
それを聞いた白銀の魔女は嬉しそうに
「大正解今からそれをやるわ。出来るだけ低く飛ばすつもりだから外に居る兵士は足を怪我する人が多く出る筈、そうなれば貴女達を追う者も減るわ。
そうしたら急いで逃げて。今ミラエスが逃げ道を用意してる筈だから彼女に従って逃げると良いわ。
多分途中罠も仕掛けてる筈だから彼女の走った後をしっかり追って行って。その後は、何処へ行くか分から無いけど無茶はしない様に。・・・ってイズミ言う事聞かないもんね~。」
「シフォンさんそんな事無いですよ~。 でも、有難う。」
イズミは照れながらそう答えると更に白銀の魔女から
竜巻が消えると同時に自分を『エアバースト』で吹き飛ばすように言われ
それが何を目的としたか直ぐにイズミは気付いた。
「ふふ、シフォンさんを吹き飛ばすなんて世界中で私一人だけかも知れませんね。」
悪戯っ子が見せる様な笑顔を見せるイズミ。
白銀の魔女もその顔を見て嬉しそうに微笑み
「頼むわよ。シッカリ吹き飛ばされるから。」
そう言って親指を立てる。
「シフォンさん、それここじゃ通用しないですよ。」
「でも貴女なら分かるでしょ。」
そう言いつつ互いに笑い出すと白銀の魔女が竜巻を解いた。
それと同時に白銀の魔女に『エアバースト』を放ち逃げ出すイズミ達と魔族。
周りに居た兵士達は白銀の魔女の思惑通り足を怪我した者が蹲り残る十数人が
イズミ達を追い掛け出した。
イズミの前には森の精霊ミラエスが精霊状態で森の中を走り抜けて行くと
イズミ達の最後方ファシズ達が通った後に草木が生え追っ手の行く手を阻む。
又そこを抜けて来た兵士達には罠が待ち受けており十数分後には追いかけて来る者は誰も居なくなってなっていた。
それを確認した森の精霊ミラエスが足を止め先頭を走って居たイズミに近寄って来た。
「イズミもうオアニニス兵は追い掛けて来ないわ。これで私は白銀の魔女様の所へ戻るけど
後は大丈夫よね。」
「有難う。後は任せて。それからシフォンさんに・・・有難うって伝えて貰える?」
「分かった、伝えておくわ。」
その言葉を最後に森の中へ消える様にミラエスが立ち去った。
イズミが仲間全体を見ると全員無事着いて来られたらしい事が分かった。
中央の魔族達にレアとフェスタ、後方のファシズ、それぞれが手を上げ無事を知らせて来た。
それから約半日程歩き無事第二の隠れ家に着く事が出来た。
場所は、オアニニス王国とミリニシア神皇国そしてイラエミス共和国の国境を交える場所
ニシアの森の中に在る洞窟を利用した物だった。
ここから新たにファシズ達の作戦が立てられる事になった。
現在『世界で最高の身体を手に入れたら・・』
https://ncode.syosetu.com/n0371fz/
116~と懲りずに又もやコラボ中~。
これらは、同日更新又は前後日更新の物と同時間の物とする予定ですので
興味の有る方は、覗いて見て下さいませ。
今後とも『男の娘って何ですか?』
宜しくお願いします。




