表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花盗人  作者: 楠ゆう
プロローグ
1/4

 瘡蓋と綻び。


 肌寒い季節が過ぎて春が身近になり次第に人々が活発になり始めていた。

 近々では桜が咲き始めて、鳥が高らかに鳴き飛び回っている。花々も華麗に咲き始め音色豊かに景色を彩り、花見を行う人達も段々に増えたという、そんな時期になると僕は。

      

  ………必ず行く場所がある。


 近所にある柳桜(やぎざくら)公園へ足を伸ばす。そこには大きな河川敷がありその向こう側に橋が掛り公園もその先へと更に広がっている。随分と大きな公園となっていて春夏秋冬常に人が行き来している。

 犬の散歩を共にする人。外で遊ぶ子供たち。スポーツの練習ををする学生。いろんな人が(たむろ)している。

 名前に桜がついている通りこの公園の桜並木がかなりの知名度で。とても美しい。絶景。日本人であるなら一度は観てほしいと。それほどまでに損がないってぐらいに有名となってる。時々ニュースにもなっているみたいでスマホやタブレット、テレビなんかでもネットサーフィンをしてたら何度か見かけることがしばしば。

 春の時期が来るとみんなこぞって花見をしたがる、いかんせん僕にはあまり理解ができないもので外にいるより家の中がいいだろって常と考え付いてしまう。

 最近ではマナーの悪い人もいるとかで花見が禁止になってしまったのだけど、外国人やマナーの悪い人達はそんなのお構いなしで時々ブルーシートを敷いてはどこで買ったのかわからない酒とつまみを用意して大袈裟に大胆と騒いでいる。

 監視員さんとか道端を歩いている人が時折それを注意してくれるのだけど言葉が通じていないのかわざと知らない分からないふりをしているのか、言うことが通じない奴らが大半で皆かなり困っている。だから管理者も手を焼いているのか相当キレて回っている時を何度か見かけたことがあったような気もする。そのうち殺しかねないんじゃないだろうかと言う形相で周囲を恐怖に陥れている。

 郷に行っては郷に従えとあるがこればかりは従っていただきたい。仕方ないのかも知れないけれどマナーは少なからず守ってほしい。せめてもの常識は持っていてこの地で生活してと思う。

 しょうがないなんてこう容易く片付けられては何とも言えない。

 本当に何でそこまでして花見なんぞしたがるんだろう、家でダラダラとゆっくりと休んでいたらいいのに。態々(わざわざ)外に出ても疲れるだけだろうに。ご苦労なことだと皮肉混じりにそんなことを思い鼻で笑ってしまう。

 残念ながら僕は善人じゃない、どちらかといえば悪人よりだ。自分ではどうこう何でも言えるから僕は自分のことはクズだとずっと認識している。

そのせいか脳にへたってこびりついてる、、

 いつからかずっと目の奥にもそいつがうっすらと見えるようになってしまった。邪魔だ。

 そんなのを横目にして僕は掛かっている橋の下へと静かに入り込んでいった。

 ここだってそうだ。危険だからって、水辺は子供が溺れたら最悪死んでしまうとか、怪我をしたら大変だとか。そんなちっちゃい理由で。いや小さくないな。

 そのおかげでいつからか侵入禁止になってしまった。久しぶりに来た時にはすごく驚いたのを覚えている。禁止になる前から入り込んでいた僕はそんなのお構いなしに橋の下へとゆっくり、そっと、ひっそりと侵入していく。

 だけども僕は臆病で人目はどこか気にしてしまうもので、堂々とは入らず人が少ない時とかあの人ならきっと平気だろうって見極めてから、慎重丁寧に侵入している。

 僕は別に悪いことをしているわけではない。いや世間的にいえばルールを破っているんだからいけないことなのか。どっちでもいいか。

 ただただあいさつをしないとムズムズしてしまうんだ。もう会えなくなってしまうんじゃないかって考えてしまって。直接会えている訳じゃない何となく心のどこかで寂しいんだと感じてしまっているんだろう。これは僕の自己的な満足でだからこそバレたら行くのはやめる。はず。多分。

 ざっざっ、と草や枯れ木を踏みながらに転ばないように降りて行く。膝に重心をかけているせいで少し痛みを覚えてしまう、そして橋下、(ふもと)から陰る川をじっと見つめる。

 宝石みたく反射した水が憂いを灯して群風と共に抱きしめる。

 時間は昼なのに何だか暗い。上から影が掛かっているからか。気持ちが少々澱んでいるからか、

そこだけ切り抜かれたみたいに灰色の影が場を閉ざしている。

 ぽっかりと亀裂ができたみたい。

 橋の下反対側の角にひっそりと枯れた華束が置かれている、僕が置いた物だ。

 風で飛ばされて微量の枯葉だけが辛うじてそこにはある。別に誰かが『ここ』で死んだとか不幸に見舞われたからとかそういう(とむら)いの罪滅ぼしとかそういう訳の話ではない。僕が個人的にノスタルジーに浸りたいがために置いてる。ゆっくりと歩きながら華の元へ進んでく。

 僕は一言。言葉を言い放つ、本当に会えるわけでもないのに。

 「今年も春がきたよ」

 誰にも聞こえない程に、ため息の中に声を仕込ませるように限りなく微量な音に乗せて言葉を絞り出す。

 片手に持ってた華の束を彼女の下にそっと置いた。そして古くなって枯れた華を埃と砂利と共に手で掬い、川に向かって優しく水へと流す。

 流るる華がまた遠くなって空に浮いてくように(あがな)ってく。滔滔(とうとう)と流れている水が滄海(そうかい)の如く反射して時々苦しい。 僕はもとあった場所へと戻り壁に背中をつけ川を見つめる。目に水面の光が時々反射するのがわかる、少々奥に響く。太陽を直視してるようだ。隈のある眠たい眼を必死にこじ開けて。

 いない彼女に問いかける。

 「もう三年だよ、早いもんだね、また僕だけ歳とっちゃったみたい」

 華の横に座り胡座を掻いて天井を哀愁の限り見上げる。

 もう。これだけでも泣いてしまいそうだ。かろうじて奥歯に力を込めてそれを押さえ込んで耐える。

 「この前まですごい寒かったのに気がついたらこんなに暖かくなっててさ、長袖じゃ熱く感じちゃうぐらいになったよ。

 今年で成人になるんだよって言ってもまだ十八だけどね。後少し掛かるけどさ案外早いもんだよね。雪は僕より一歳上だから、先に大人の仲間入りだ。おめでとう、」

 おめでとうと言ったものの僕は大人になりたくない。でも子供の頃は早く大人になりたいと何度も願ってた。無いものねだりでため息を吐露してしまう。

 大人になれば夢なんてなんでも叶うと思っていたからだ、そんなことが夢でしかなかった。淡い永幸を願ってお金だって余りあるほどまでに得ると思ってたのに。それは違ったから。楽な方を選びたい。

 子供のままで死なないで未来永劫あのままが良かった。

 「三回忌だね、お祝い……。って言ってもどうしたらいいかあんまり分からないけど。

 改めてさ、雪。ごめんね、気が付いてあげられなくって、逃げてたんだと思う。全部言い訳にして見てきたはずなのに見ないふりをしてた。どうしようもないバカだったよ。僕は」

 時間は思うよりも相当早い、過ぎるのはあっという間。あんな最悪な出来事も心の片隅にそっと置いておける様にもなった。僕毎(ぼくごと)忘れてしまおうとしてたからかもしれないけど。

 また大きくため息を吸って吐く。

 当時の出来事も次第に曖昧になってるというのに。雪の顔。声。姿。その全ては鮮明に色濃く今も横に君があるように感じる。華に置き語りかける。この時だけは。

 流れる川肌を無心にじっと焼き付けている、静寂の中。微かに耳を澄ませば人の喋る声と川のせせらぎ、どこかで鳴いてる虫の声と犬の声、それが心地よく全身にそっと流れ込んでくる。

 「あれからさ、どんだけ経ってもさ目の前に何か霧がかかってるみたいで、先が何にも見えなくて。未来なんか全部大嫌いだって自分なんて消えてしまえばって思う様になっちゃって、

 あ。でも新しい家族ができたんだ、僕を引き取ってくれて。すごいいい人なんだよね。なんというか底なしにいい人って感じで、まだ長く一緒にいないから表面でしか見えてないけど。

 僕には本当に勿体無いぐらいの良い人で、なんていうにかな。すごく、幸せ」

 なんと言うべきか、どうするべきか。毎度の事ながらよく分からない。幸せの定義は人によるのだ、だから自分の匙加減(さじかげん)程度(ていど)で図ることはできない、他人が見たいら僕のこの現実は幸せと言ってくれるのかな、わかんないや。

 自分の満足の程で絞るのなら僕は今幸せって呼べるとそう。そう思う。だから僕は口に出す。

 幸せだと。

 ポッケからそっとスマホを取り出し画面を付けて時間をじっと見つめ。確認をしてからゆっくりと(おもり)が伸し掛かったみたいにそっと立ち上がって、華に向かって言葉を垂らす。

 「そろそろ行くよ、また来るね、雪、待ってて」

 また来れる確証もないのにそんなことを言う。もしかしたらもう二度と来れないかもしれないのに。在り来りな言葉と仕草だけが脳から放出され続ける。

 ふらふらと鈍足な様子で華から遠退き歩いてく。良い風が吹いていた、ちょうど良い長さの髪が風に翻り、居心地がいい。何だか後押ししてくれている見たいに背中を風が宥らかに摩る。

 ふと何かを思い出したかの様に僕は振り向いて華束の方に言葉をそっと放った。誰もいない筈の場所にはなんだか哀愁と感傷が満ちていて、少し尊く。少し寂しそうに。でも背を押してくれるような、何でだかそう暖かく目に映った。それをいい景色と手に取って良いのか、そうではないだろうか。それでも今目の前の情景は心底綺麗だと感じてしまった、油絵にして描いてしまおうか。

 このまま一眼に納めて一生物にしてしまいたくなるほどに目から手放したくなかった。その絵は反射して眼を離そうとしない、自然と僕ははにかんで笑ってしまう。目から鱗とはこのことだ。

 手で空を切って、何に手を伸ばそうとしているのは判らずが無心で無意識に手を伸ばす。

 「今年は良い年になると思うんだ、雪、また君に会えると思う、その時はもしかしたら君は僕のこと嫌いになってるだろうけど、

 そしたら、ちゃんと嫌いになってくれよ、僕は」

 (おくりな)として華を掲げる。未だ盲愛(もうあい)な僕はこれからも君を好いてるだろう。その確証はある。


      ……………。

 

  良い年にする。

           今年はきっと良い年になる。

 

 この桜を折っては結んで。全部嫌になっては最高にする。そうしたらきっとどこかで笑ってくれるはず。

 誰かを空して。私を空して。咲いた華は自惚れていつしか裏切られては知らず知らずに世界の端に追いやられ枯れ命を終える。

 枯れた蕾に水をやってもそれは花になる事はない。付いた傷はどれだけ縫っても跡になる。それが綺麗になることはいつになっても訪れない。忘れても隠してもそこにはずっと存在がある。誰だってそう。それは寸分狂わぬ事実としてあげられる。 

 笑って泣いて吐いて。焦れて憎んで妬んで。嫌いになってはまた好きになる。最後にはニコっとまた笑う。

 そんな年になる。

 何ともまぁ、人任せできっと徒花(あだはな)のようになるんだろうな。牡丹(ぼたん)の散り際の様に綺麗になれるのだろうか、それが訪れるまでは分からない。分かりたくはない。運命に任せる。揺られながらにその時を待つ。

  

 きっと。

     きっと………

           きっと……………。

 

 微かに時間が経過し。橋のそばにある小さな駐輪場に着いた。

 晴れている、晴天がジリジリと肌を(つば)んで赤みを施してる。夏じゃないのにとそっと空を見つめてじっと雲を瞳に映す。楽しそうに優雅に浮いてる、ぷかぷかと何も考えなくてもどこにだって行けそうだ。あの雲は何処に行くんだろう。山なのだろうか。海かなそれとも、、もっとどこか遠く。誰も知らないどこか遠く。

 飛んでいた鳥を見て僕は考える。どこ行くんだろう。寒かったりしないのかな、どうやって飛んでるんだろう。

 ……腹へった、喉も乾いた。

 何か食べに行こうかな。

 そんなことを一人思い考えながら自分の自転車にそっと跨ると何も言わず無愛想に僕はペダルに力を込めた。優に錆びたチェーンが鈍い音を立てて重たいペダルに精一杯の重心の込めてから次第に元の速さを取り出す。

暑い身体を風が冷やして進む。

 ………どこに行こうか。

 飲み物は簡単に自販機でいいか、ご飯は、コンビニでおにぎりでも買うか、それなら飲み物もコンビニでいいか。

 自転車で桜並木を横目に進んでいく。ペダルが軽快になりさらに速度が上がる。このまま壁にぶつかったら死んでしまうのかな。

 薬局と弁当屋さんの間にある細道を抜けていく、人通りも少なく何か考え事をする時によく通っているけど、最近ではあまり通らなくなってしまった、自転車に乗る事自体が久しぶり、というか外に出る事が久しぶりだ。

 深い理由はない、ただ外に出るための用事がなかっただけ。まぁ外にはあんまり出たくないけど。

 あのお店も無くなってしまうのか。

 最近ニュースを見ていると、よく自分の今住んでる市が像映(ぞうえい)されていて、何気なくそれをボーっと眺めてた時、たまたまそれが映った。通っていた薬局が閉業してしまうそうで、あと二週間ほどしか店は開いていないみたいだ。よくそこで風邪薬やら花粉症防止の薬とかを買っていたから、僕もそれなりに悲しい。かなりみんなから親しまれていたみたいで、お疲れ様だとか色々お祝いの言葉や造花が置かれている。いい事だ。

 大学の受験も終えて、高校もとうに終えてしまったから、あんまり行ってないけど、自ずと外に出る頻度も減ってくるというものだ。そのせいか暫しあった暑さへの耐性も衰えていた。身体も筋肉も萎んでいるのがわかる。

 少しは身体を動かさないとな、継続は苦手なんだよな。昔夏休みの宿題に、継続は力なりとか書かれてて鬱陶しくて仕方なかった。何思い出してんだよ。どうせなら明日少し遠出でもしようかな。

 雪の墓、どうせなら墓参りに行こう。場所はなんとなく分かる。一回忌に一度行ったきりだけど、まぁ、なんとかなるか。

 なんであの時全部投げ出してしまったんだろう。

 後悔はしてるんだろうか、あの一年と半年は何だったんだろう。何も得ない失うことしかなかった、あ。でも八木(やぎ)さんとは出会えた、それだけでも十分得れたのかな

あの本、どこやったっけな。物置、、家には戻りたくないからいいか。

 そっと笑って僕は空に言葉を溢す、ほんの些細な小さな一言。



 明日また会おうね、雪。

 すぐに会いに行くからね。


もうね次のエピソードも完成確認済みでいつでも出せる状態なんですけどね、これ早めに出してしまうと後々地獄を見る様な気がしてならないんよ。だから少し時間を置いてから掲載したいって想っているんですよね。

何気にこういうのは初で辿々しい所もあるであろうと思うんですが、どうにか取り繕っていきたいですよね。後書き、かなり楽しいですこれ。

自分だけの空間となるとはしゃぎたくなるもんですもんね。今この場じゃ主人公がどの様な人で、ヒロインさんがどんな人とかプロローグなんで何も言えないんですけど。色々解放されたらその都度心情諸々裏話を話したいですよね。

正直な話自分口で話すと100%の脳の回転が難しかしくってこういう字として残せる場は言葉閉じて喋る時よりもすごく書いてしまうんですよね。

ほんとに口で表そうとするとどうにも脳が固くなってしまって、それに自分の内心って案外話す脳恥ずかしいじゃないですか、なのでここで気持ちを大ボリュームでトコトン発散していきます!!

初投稿読んでからでありがとうございますっで感じですね

もし書けたら無理しない程度に次々のエピソードにも後書きを書いていくつもりなんで、辛抱よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ