第47話 事情聴取
最近は18時に投稿としていましたが、生活環境が少し変わったため時間がまちまちになりそうです。
これまで通り、火曜、金曜、日曜の投稿ペースは守るつもりです。既にギリギリですが。
今日は1話です。
俺がハーフェンに行ったことがバレている。
(どうする!? おかしな誤魔化しが通用する相手じゃない!)
完全に油断していたタイミングだったので挙動不審になる俺をゲアートさんは変わらず真剣な目で見てくる。
傭兵のことはキースさんが言っていたことだから何かしらのマークをしているのは分かっていたので、行動には気を使っていたつもりだった。
軽く変装はしてたし、最初にハジメに薬師ギルドに行ってもらったのもそうだし、出発時にバラノイとは町の外で落ち合うようにしたのもそうだ。
「そっ、それは……」
「なんだよ? 歯切れが悪いな」
どこまで知っている上での質問なのか。そこが問題だ。俺が行ったことだけ把握しているのか、それとも一部始終を誰かに見られていたのか。いつぞやの聖騎士相手の時のように虚実を混ぜて言うのは危険か……?
とにかくなるべく真実を言いつつ探るしかない。
「実は従騎士の様子を見に行ったんですけど、俺そのこと言いましたっけ?」
俺が答えるとゲアートさんはため息を吐いた。
「従騎士だぁ? 俺はてっきり薬師ギルドの傭兵の件だと思ってたんだがな……だが、従騎士と聞いたらこのまま返すわけには行かねえな」
会議室に場所を移すことになったので大人しく付いて行く。
傭兵の件だけ言えば良かったのか? とも思ったが、考えてみたら傭兵と従騎士とは関わりがありすぎて分けて話せるような内容じゃない。
「つーかよ? 探りを入れるんだったら俺たちに相談くらいしろ。今回無事に戻って来られたのは運が良かったからだと思えよ? 一緒に行った奴らの中におかしな奴だって居ることもあるんだからよ」
「すみませんでした」
会議室で席に着くなりゲアートさんから忠告される。
これは……心配してくれていたってことか?
そうなると最初の聞き方が気になる。「傭兵の件どうだった?」でいい所を「何しに行った?」というのが引っかかる。単に言葉の綾というやつなんだろうか。
「まあいい。とにかく、最初から説明しろ」
それはそれで嫌な聞き方だな。どうやって探りを入れたものか……喋りながら糸口を見つけるしかないか。
「薬師ギルドの目的を調べたら、あっちのダンジョンの魔物を生け捕りにすることだったんですけど、その過程であっちのダンジョンに入れるってことなんで、これはもう入るしか無いなと」
元々の設定であるダンジョン好きの若手感を一応出しておく。
「生け捕りだぁ? 薬の実験にでも使う気か?」
「そこまでは分かりませんでした」
「そうか。だが騎士達が中に部外者を入れるとは思えん。こんな辺境の薬師ギルドの、しかも副ギルドマスターの顔なんて立てるような連中じゃないと思うがな」
見られていた訳では無い……か?
俺達が騎士達を殺害して中に入った所を誰かに見られていたならこの反応はおかしい。ゲアートさんが演技派だったらどうしようもないが、この人はそういうことはしないような気がするんだよな。
「駄目でしたね。嫌味を言われて追い返されましたよ」
考えても仕方が無い。もう賭けだ。この嘘にどう反応するか……
「だろうな。俺たち冒険者ギルドでさえ締め出されるんだぜ? いくらまだ聖騎士になってない奴らでも、その辺りの指導はされてるだろ」
特に挙動に違和感は無いように見える。考えすぎだったのか?
出発するところを誰かに見られていたくらいだといいが。
「で、駄目だった後は観光か?」
「そうですね。薬師ギルドのバラノイって奴と一緒に忍び込めないかしばらく見てましたけど、埒が明かないので俺だけ飯食って帰ってきたんです」
「そのバラノイって奴は?」
「諦められないってんでまだ現地じゃないですかね?」
薬師ギルドの奴と一緒に戻ってきてないことも一応言っておかないとまずいかと思った訳だが、この嘘に嘘を重ねる感じがなんとも気持ち悪い。他にどうしようもないとはいえ、こういう積み重ねが後々に大変なことに繋がりそうな気がする。
「じゃああっちのダンジョンが今どうなってるかは知らないんだな?」
「どうって……今頃は攻略されて無くなってますよね、きっと」
「そうか、何か知らないかと思ったが……」
つまりあれか? ただあっちのダンジョンの様子を知りたかっただけ?
「実は一応ここのギルドからも様子を見に行かせたんだが――」
そこまで聞いた段階で再び緊張が走る。
「今は小さいほら穴が残ってるだけらしい」
良かった。俺を見たとか言われるのかと思ったがひとまず安心だ。
今やサブダンジョンとなった『水精の祠』のことか、限界まで小さくしてきたからな。
しかし情報が早いな。俺が戻ってきたのが昨日なのに。街道を避けて移動している間に抜かれたのだろうか。
俺の内心とは逆にゲアートさんは浮かない顔をしている。
「ほら穴ですか、それって何かまずいんですか?」
「うん? あれだけダンジョン好きのお前が知らないとはな。まあ、最近は攻略されるダンジョンがこの辺に無かったからな、お前が知らないのも無理ねえか。普通はな、ダンジョンが攻略されたら不思議と痕跡は残らねえんだ」
俺の質問に最初は意外そうな顔をしたがちゃんと教えてくれた。
それは初めて知ったな。
学園としても死んだ後のことを教えても仕方が無いから教えなかったのか、単に学園側も知らないのか……どっちでもいいな。
「だからまずいかどうかで言えば、分からねえってのが本音だな」
「痕跡が残らないって、何も無かったようになるんですか?」
「ああ、例えば元からあった大きな岩に入口ができたダンジョンが攻略されたとするだろ? その場合元のただの岩に戻っちまうんだよ」
なるほど。元通りになるってことか。
と、感心してる場合じゃない。
「え? それって結局どうなったんです?」
こうやって本来であればして当然の反応をしておかないと。
「さあな。だから聞いたんだよ。向こうに行ってたんなら何か知ってんじゃねえかと思った訳だ。それと従騎士達も忽然と姿を消したって話だぜ」
なんだそういうことか、これですべて繋がった。
前例の無いことが起きて、何か知ってそうな奴が居る。となれば詳しく話を聞こうとするのは当然のことだ。
そうと分かれば後はいつも通りに興味津々な若手の感じで行けばいい。
「あっちのダンジョンマスターと相打ちになったとかですかね? いや、でもそうなるとほら穴って何でしょうね」
「だろ? 相打ちはあり得たとしてもほら穴が残る理由が分からねえんだ」
「ほら穴はともかく、俺としては相打ち説を推したいですね。そうなったらこっちはしばらく安心じゃないですか」
「だといいんだがな。まあいい、もう少し情報を集めて、それでも分からなかったらこっちのダンジョンマスターにでも聞くとするさ」
ああ、そういえばやり取りしてたな。
不在の間返事が来ていたが、当たり障りのない内容だったし返事せずにしばらくは放置するつもりだった。
「それはいいですね。誰よりも詳しそうな相手ですしね」
「教えてくれるといいんだがな。さてと、時間取らせて悪かったな」
「いえ、俺こそすいません。今度からちゃんと相談します」
頭を下げて会議室を後にする。
一時はどうなることかと思ったがなんとかなったな。
俺は胸を撫で下ろすと、元々の予定通りに適当な依頼を受けるために掲示板へと向かった。混雑のピークも過ぎていたので問題なく納品依頼を受注できた。
あとは数日後に何食わぬ顔でギルドにブツを持って来れば依頼達成だ。
どの道、教会にも再び騎士達の情報の流れを確認しに来るしその時でいいな。
町の関係各所の様子を確認するという目的は達成したのでダンジョンに戻ったが、俺はあることを思い出した。
(薬師ギルド覗くの忘れた……まあいいか)
次はいよいよカタログの確認だ。出せる物も増えたし『通信』も試したい、やるべきことはたくさんあるな。
俺は軽く頬を叩いて気合を入れハジメ達の待つコアルームへと急いだ。
総合評価が200ptを越えました。
これほど行くとは思っていませんでしたのでとても喜んでいます。
皆様いつもありがとうございます。




