80. 恋する資格…Ⅺ
忠司と加賀美が無事にカップルとなった翌日。
昨日のドタバタ劇で生命力を使い果たしていた俺は、精神と時の部屋で体力の回復をはかっていた。すると充電器に繋ぎっぱなしのスマホから着信音が鳴り響く。
………何も聞こえない。
一度鳴りやんだ着信音がすぐさまもう一度鳴り始める。
………うんきっと気のせいだ。
二度目が鳴りやんで、すぐさま三度目が鳴り響く。
………いやいやそれは無いだろう。
三度目の正直ならぬ四度目の現実が鳴り響く。
『 恭子、いい加減にしてくれ。俺は疲れてるんだ……』
俺はスマホの画面を見ることもなく、受信するとすぐさまそう叫んだ。
俺にこんなプレッシャーをかけてくる奴なんて恭子しかありえない。あいつは四度目を無視しても平気で五度目を鳴らしてくる。
『ちょっと修二、いつまで寝てんのよ! まだライン見てないの? 私もうビックリしちゃったんだけど……』
『へ? ライン? なんかあったの?…』
『やっぱ見てないんだ。 まどかちゃんがグループラインに送ってきたのよ。 「私達、カップルになっちゃいましたぁ~」って。 しかも佐藤くんとツーショットの写真付きで…』
『………へぇ~ そーなんだ。 ふぅ~ん…』
『修二…… 驚いてないよね?』
『そんなことないよ。 いやぁ~ほんとたまげたなぁ~ 』
『―――今からそっちに行くね。 隠してたこと……全部白状してもらうから。分かった?』
『い、いやちょっと待て… 俺は別に何も……』
『全部話してくれるよね?……修二くん?』
『………うんわかった恭子たん』
くっそ~。必殺技「修二くん」を出しやがって、恭子のヤロー。
俺がその言葉に恐怖を感じてることをあいつはしっかりと把握してやがる。
数分後、恭子様は私の部屋で鎮座しておられた。因みに言っておくと、俺は未だに精神と時の部屋の中にいる。
「修二、いつまでベッドの中にいる気なの! 早く起きてここに座りなさい!」
「い、いやちょっとだけ待って…」
「どーしてよ?」
「………ちょっとやんごとなき事情がありまして」
「はぁ? どーせ起きるのがだるいだけなんでしょ」
そう言って恭子様はプンプンといったお怒りの表情を俺にお向けあそばされた。
………恭子、言っておくがその服装は反則だ。
胸元が大きく開いた薄いベージュの半袖シャツ、その胸元に低い位置で束ねられた艶やかな黒髪がやんわり垂れ下がっている。胸元の白い肌とそれらが合わさって、何とも言えない女性らしさを醸し出している。はっきり言って艶めかしいったらありゃしない。
起き掛けの思春期男子はただでさえ「ある部分」に生命力がみなぎってしまうのに、こんなもん見せられたらもう……ね。たまりまへん。
それから恭子との攻防戦を繰り広げ、ある部分の生命力がようやく「ちん静化」した俺は、パジャマ姿のままでベッドの傍に腰を下ろした。
「修二、どーして教えてくれなかったのよ? 前から色々とあったんでしょ?」
「ん~ まあね。あったにはあったんだけど… 結局は忠司と加賀美の問題だろ? 俺たち外野が騒ぐのもどーかと思って…」
「でも修二は関わってたんだよね?」
「まあ成り行きって感じでね。忠司にも加賀美にも相談されてしまったんで、仕方なくってやつだよ」
「でもさ、修二は佐藤君からこれといった話は訊き出せなかったって言ってたよね?」
「いやだからさ…… ちょっと言いにくいことだってあるだろ?」
「じゃあ今は? 良い結果になったんだからさ、今なら全て言えるよね? 言うべきだよね? 言わないとどーなるか分かってるよね?」
「………わかったから恭子たんその目をやめて」
蛇に睨まれた蛙の心境がよく分かる。
蛇の圧力に蛙が抗しきれる筈も無く、蛙は蛇に言わるがままに今までの経緯を全てゲロした。……蛙だけにも~うゲロゲロって感じで。
概略を説明すると、恭子は驚きに次ぐ驚きで、最後はちょっと放心状態に。特に昨日の話し合いには衝撃を受けたようであり、唖然となっていた。だが、訊き終えると言い知れぬ様々な感情が湧き起こってきたようであり、何かにその感情の捌け口を求めた。……昔からよく知っていて今や自分の傀儡となっている何かに。(何か = 修二くん)
「ちょっと修二なによそれ? なんで私に一言も言ってくれなかったの?」
「いや… やっぱ言えねーだろ? 佐藤にしても加賀美にしても事情が複雑すぎてさ…。心の傷なんて他の者に知られたくないだろ?」
「そりゃそうだけど。 でも……なんか嫌だな。佐藤君はともかく、まどかちゃんには相談して欲しかったって言うか…」
「確かに恭子の言いたいことも分かるけどさ…。でも、やっぱり加賀美は俺にしか話さなかったと思う。こういう話ってさ、やっぱ他人には言いにくいって言うか、仲間にしか語れないって言うか…。」
「………仲間?」
「同じように酷い目にあった仲間って奴かな……」
「―――ご、ごめん……修二」
酷い目にあった……その言葉に恭子は直ぐ反応した。
恭子の脳裏に浮かんだことなど考えなくても分かる。俺はそんな恭子を見て、今更ながら自分を呪った。……なんで俺は恭子を巻き込んでしまったのだろうか。よくよく考えれば、一番酷い目にあってしまったのは恭子かもしれん。
それなのに恭子は俺を一切責めず、あまつさえ俺の心配ばかりする。
ほんと、こんな幼馴染を持つことが出来た俺は、分不相応の幸福を与えられてしまったのかもしれん。
恭子に悲しい顔をさせてはだめだ。ここはあの話でもするか。
「あはは… なんで恭子が謝るんだよ? 俺は恭子に世話になった覚えはあるが、恭子に謝られる覚えはないぞ? それよりさ、これからとっておきの話をするんで訊いてくれるか?」
俯き加減だった恭子の顔は、その言葉を訊くとゆっくりと上がり始めた。そしてチラチラと俺の様子を窺うと、徐々に先程の元気な顔に戻っていった。
「うん、訊いてみたい。早く話して…」
すっかり元気な顔に戻った恭子は、そう言って俺を急かせる。
「じゃあ話すぞ。……あっ、でもな、この話は絶対ナイショな」
「うんわかった。誰にも言わない。だから早く~」
「よっし。なら始めるか……」
ハッピーエンドで終わるこの物語、きっと恭子もこの話を気に入ってくれるだろう。なんせ捻くれ者のこの俺が感銘を受けちまったぐらいなんだからね…。
俺は物語を語り始めた。
ある学校に、とある娘がいましたとさ。
高校に入り、彼氏と順風満帆だったその娘は青春を謳歌していた。勝ち気な彼女はその行動力で友達も沢山つくり、楽しい高校生活を送ってましたとさ。だが、ある日突然彼氏の裏切りが発覚した。彼氏に全幅の信頼を寄せていた彼女にとって、それは人生を変えてしまうぐらいの大きな出来事だったらしい。その後、彼女は彼氏に対して一方的に別れを告げた。だが、彼女の怒りはそれだけで収まらなかった。元々気性の激しかった彼女は周囲の人達にもその怒りをぶつける。その結果、彼女の周囲からは一人また一人と友人は消え、そして最後には完全に孤立してしまった。
すっかりクラスで嫌われ者になってしまった彼女。彼女に近寄るものは殆どいなくなった。……妙な目的を持った男子を除いて。 だが、彼女はそんな状況を気にも留めなかった。それどころか勝ち気な彼女は周囲との壁を自ら厚くしていった。
そんなある日、彼女はある少年と出会う。
席替えにより、彼女はその少年と偶然にも隣同士となった。別にこれといった特徴もなく、さほど見栄えが良くも無い普通の男子。だから彼女はその少年を空気のように扱った。 だが、その空気は隣になった初日から優し気に話し掛けてくる。こちらがどれだけ無視しても、何度も何度も話し掛けてきたという。
それからも空気は話し掛けてくるのをやめない。彼女はそんな空気に腹を立て、ある時その怒りを露にした。
「あんたみたいな普通の男が私を落とせるとでも思ってんの? 夢見てんじゃないわよ! 底辺のくせして!」
だが空気はショックを受けることもなく、相変わらずの優し気な口調でそれに答える。
「あはは… そんな大それたこと思ってないよ。君は凄く可愛いから僕なんて絶対に見合わない。それは自覚してるから。ただ喋ってくれるだけでも有難いって思ってるんだ。なんか勘違いさせてしまったんだね。ごめん、謝るよ…」
そんな空気の態度に彼女は更にイラついたらしいが、暫くは同じような関係が続いたらしい。
それから時は流れ、彼女は空気の見方を変えるようになった。
宿題を忘れて来ても向こうの方からノートを差し出してくれる。周囲の人と口論になりかけても上手く仲裁をしてくれる。……結構便利な奴だ。それになんて言っても無害だし。 彼女は彼の事を「便利な空気」と見るようになった。
その後も相変わらず周囲と打ち解けなかった彼女だが、学校生活においてそれが支障をきたす場面がやってくる。文化祭の準備を進めるため、人員を班に分けることになったのだが、彼女を受け入れようとする班が存在しない。暫く学校を休もうとした彼女だったが、便利な空気が周囲の人を説き伏せて、彼女を強引に自分の班へと招き入れた。
彼女はそれを有難いとも思わなかったが、担任の指導もあり、その班に参加することに。だが参加してみても、やはり周囲の者は彼女を怪訝な眼でみるばかり。だが、便利な空気はそんな雰囲気の中でもいつものように話し掛けてくる。この頃は便利な空気をよく利用していたこともあり、彼女も便利な空気とは普通に会話していた。
やがて、そんな二人の会話を訊いていた周囲の人達に少しずつ変化が起こる。便利な空気と会話している彼女の顔には時折笑顔が見られた。それに彼女の明朗で快活なものの言い方は、暗いものを一つも感じさせない。暫くして、彼女に話し掛ける女子が現れ始めた。やがて同じ班だった女子は、彼女と普通に会話するようになる。
文化祭が終わっても、新しく彼女にできた話し相手はそのまま彼女の友人となっていった。そして便利な空気とも相変わらずの関係で、彼女はその状況を愉しむように変わっていった。
それから時間は進んでいったが、その状況に変化は全く無かった。所謂新しい日常というものの中で、彼女はイラつくことも何かを欲しがることもなかった。ただただ繰り返される日常の中で、何を望むこともなく過ごしていった。
やがて1年生を終え、春休みがやってきた。
彼女はずっと家で一人で過ごしていた。当然ではあるが、学校に行く必要などはない。家でじっとしている日々が続いたある日、彼女はふと気づいた。………イライラする。落ち着かない。全く楽しくない。
―――そうだ、私には空気が足りないんだ。
彼女は空気を求めた。空気さえ傍にあれば息苦しい想いをしなくて済む。
だから彼女は直ぐ空気に連絡をした。
「学校休みだし、明日一緒に遊ばない?」
「う~ん、誘って貰えたのは光栄だけど… その気持ちだけ受け取っておくよ。僕なんかと一緒に遊んでいたら君に迷惑をかけてしまうと思うから。君ならどんな人を誘っても絶対に一緒に遊んでくれるって。だから他の人を誘った方が良いよ…」
彼女は誘いを断られるなど露にも思っていなかった。彼女から男子を誘って断られたことなど一度も無かった。でも、それよりも別に大きな衝撃を彼女は受けた。―――空気が無ければ、私はこれからどうしていけば良い?
その時に彼女は気付いた。空気が如何に重要な存在なのかを。
だから彼女は空気を手に入れることを決意した。煌びやかな服装があっても空気が無くては生きていくことが出来ない。………柔らかくて、温かくて、心が和らぐあの空気を私はいつまでも感じていたい。
それから彼女は心を改め、必死に空気を求めるようになった。
やがて高校2年生のクラスが発表される。
幸運にも彼女はその空気のような少年と同じクラスとなった。だから彼女は誓った。―――その少年に求められる自分になる…と。
何度誘っても良い返事はもらえない。どれだけ引き込もうとしても絶対にあるラインを超えてくることは無い。だけどその少年は大好きな空気を惜しげもなく与え続けてくれる。
だから彼女は待つことにした。
私はずっと少年の傍から離れず、その少年からの言葉を待ち続ける。いつまでも…。
ここまでが彼女のストーリー。 少年のストーリーはこれから始まる。
その少年には仲の良い友人がいた。だが、その友人は自分の彼女に裏切られ、失意のあまりに学校を休むようになり、その少年から離れていってしまった。その少年が仲良くしていたのはその友人一人だけ。だからその少年はそれからクラスで孤立するようになった。
あまり目立たない普通の少年。そのような人物が孤立すると……いじめのターゲットとなりやすい。その少年は努力して新しい友人をつくろうとするが、クラスの雰囲気もあり、なかなか新しい友人が出来ないでいた。 どんどん孤立していく自分。周囲からの冷ややかな眼。その少年は必死になってその状況から逃れようとした。
そんな少年が使った手段、それは自分の優しさを武器にすることだった。便利な人と言われてもいい、都合のいい人と言われてもいい。だが、何かしらの価値を周りが認めれば、自分は孤立しないで済む。
少年の努力の結果、その少年には新たな友人が生まれ始めた。余りよろしくない理由で近付いてきた人もいたらしいが、その少年はそんな人も含めてすべての人を受け入れた。 やがて、自分の立場が落ち着いてくると、その少年はある行動に出る。かつての自分のように孤立している人達に対して自ら近寄り、自分たちの仲間の輪の中に入れようと考えた。
そんな少年はある時、クラスで孤立していた少女と出会う。
彼女はクラスでも悪い意味での有名人。誰も近寄ろうとせず完全に彼女は孤立していた。そして彼女自身も孤立を望んでいた。
だが少年は知っていた。孤立することで幸せを感じることなんて何も無いってことを。少年は彼女を輪の中に入れようと頑張り始めた。彼女に罵られても、無視されても、少年は諦めなかった。かつて自分が味わった苦痛に比べれば、彼女からの酷い言葉も気にならなかった。それに、今の自分には仲間がいるという自信もあった。
やがて、彼女は自分たちの輪の中に入ってくれた。そして楽しそうな表情を浮かべるようになった。その少年はそんな彼女を見れるようになり、本当に嬉しかった。 だが、そこから予想外の事が起き始める。彼女がその少年に恋心を抱き始めたのだ。
彼女はとても可愛く、自分とは全くの不釣り合い。もしそのような二人が付き合えばその後どうなるか……その少年に悪夢のような記憶が蘇る。
美少女と呼ばれる美しい彼女達は、やがて自分の価値に見合った素晴らしい男性の元へと向かってしまう。それが現実の世界というものだ。……
だから少年は彼女からの好意を受けないように努力した。好きにならないように心掛けた。本来なら彼女を突き放せばよいのだが、その少年にそんなことが出来る筈も無い。
だが、彼女の想いは強い。どれだけ気のない素振りを見せても、彼女は決して諦めようとしない。そうしているうちに、その少年にもとうとう限界がやってきた。彼女の一途な行動に心を奪われるようになっていった。夢でいいから、このまま彼女と一緒にいられたらと思うようになっていった。
そんな時に、彼女からある相談を受ける。……昔彼女を裏切った元カレが、もう一度彼女を求めてきているという相談を。
話を訊けば、その彼は自分とは比べものにならない程、男性としての価値が高い人らしい。その少年は考えた―――彼女の幸せを。 自分と元カレ、どちらの方が最終的に彼女に満足を与え、幸せにすることが出来るのか?
少年は自らが身を引くという結論を出した。
このままいけば結末はバッドエンド。だから当然この話にはまだ続きがある。
その少年は彼女の事を思い悩んだ。
彼女と離れたくはない。だが……自分にはそれを言う資格がない。
そんな少年にある機会が訪れる。彼女の心からの想いに触れる機会が与えられる。
彼女は自身の想いを全て語った。
「あの人は私が最も欲するものを与えてくれる。だから離れない。離れたくはない。私は……あの人が振り向いてくれるのをいつまでも待ち続ける…」
その少年は彼女のその言葉により、自らの心の扉を壊した。
今までの自分を恥じ、その彼女の想いを全力で受け止めようと決心した。
結局は互いに求め合っていた二人。そんな二人は当然の如く結ばれる結果となった。
これにて、物語の幕は閉じる。―――
………。
「………ぴぇえええええええええええ~ん!………」
恭子たん大泣き。
話の途中から目に大量に涙を浮かべ、話し終えると堰を切ったように涙は溢れかえった。
恭子の号泣はしばらく続いた。途中、限界を超えて嗚咽するほどに。そして意味不明だが、何度も俺の腕をぺしぺしと叩く。そしてまた両手で顔を覆って泣き始める。それを何度か繰り返した。
………なぜ俺の腕を叩く必要がある?
恭子の七不思議にこれも追加しておこう。
やがて恭子も落ち着いたようで、涙を拭いながらではあるが、俺に話し掛けてきた。
「ど、どうして修二はそんな大事なことを黙ってたのよ! 私が知ったとしても何もできなかったと思うけど… でも、何も知らないなんて友達としてあんまりでしょ?」
「い、いや… だからあの」
「なによ!」
「………ごめんなちゃい」
いやマジで怖かった。思わず光の速度で謝ってしまった。
「でも、でも…… ほんとうに……よかったぁああ あああああああああっ~~~~」
また泣いた。
それから少しして、ようやく泣き止んだ恭子はしんみりと俺に語りかけてくる。
「佐藤君って… そんなこと考えてたんだね」
「そうだな。おれも訊いた時はびっくりしたよ…」
「釣り合いが取れないと不幸になる…… 可愛い女の子は魅力的な男子を求める…か」
「まあ過去のトラウマが原因になってたんだけどな」
「ねえ修二…」
「ん? なに?」
「修二は私の事を可愛いって言ってくれたよね?」
「ああ、確かに言ったよ」
「なら可愛い女の子の立場から自信をもって言わせてもらう!」
「………?」
「釣り合いなんて関係ない! それに見た目だけで好きになったりなんかしない! 見栄えのいいものを好きになるんじゃなくて、心が惹かれたものを好きになるの! それに男の人の価値は自分で決める。みんなの意見なんてあてにしない」
青年の主張ならぬ美少女の主張。
恭子は美少女を代表して、胸を張って大きな声でそう宣言した。
俺は感動した。
やっぱ恭子の胸は凄く形がいい……ごほん、恭子は全てにおいて素晴らしい。
「いやいや… さすがは恭子だ」
俺は感嘆の言葉を零した。
「修二………」
だが恭子はそんな俺に厳しい視線を向ける。
「ど、どうした?」
「修二はそんなこと思ってないよね? 釣り合いとか……気にしてないよね?」
「あはは… そんなの気にしてねーよ。………今はもう」
「―――今は?」
「なんでもねーよ。それより、話はもう終わりだ。そろそろ家に帰るか?」
「帰る訳ないでしょ! もっと話を訊きたいし… それに暇だし…」
暇って???
嘘ついてんじゃねーよ。あれだけみんなから予約が殺到してただろ? みんなのリクエスト叶えたら夏休みが無くなってしまうぐらい。
でも、まあいっか。暇なら恭子を有効利用しませう!
「なら恭子たん… 朝飯つくってちょーだい」
「んふふ… いいよぉ~。 お昼ご飯をつくってあげるね」
「………はい?」
「今何時だと思ってるのかなぁ~? 修二くん…」
修二…くん???
「いやぁ~ 光陰矢の如しだね。……てへっ」
「いいからさっさとパジャマを着替える! いつまでそんな恰好してるの!」
美少女は怒るとガチで怖い。
恭子はその事実を俺の心にしっかりと刻み込んだ。……トラウマという文字を使って。




