がんばれ、リョウベエ
一週間がすぎた。
治療は成功し、リョウベエは順調に回復を続けていた。
ところが……。
「ボクハ、ヤクタタズノ、ジャマモノ」
リョウベエは同じ言葉を、うわごとようにくり返していたのだった。
その夜。
近くの交番から連絡が入った。近くの公園で、リョウベエがたおれているという。
「病院をぬけ出して、なんで公園なんかに?」
パパさんが首をかしげる。
「早く迎えに行かなきゃあ」
ママさんはあわてて出る準備を始めた。
ジュンはまっ先に家をとび出し、それから公園に向かってフルスピードで走った。
息が苦しくて、胸がはりさけるように痛い。
――リョウベエはもっと苦しかったんだ。もっと、もっと……。
ジュンは公園まで走りとおした。
ブランコのそば。そこに人の輪があり、おおぜいの人が集まっていた。
その中、横たわったリョウベエが見えた。
「リョウベエ!」
ジュンはかけよって抱き起こしてやった。
みんなに見られている。
でも、ちっともはずかしくなかった。それどころかリョウベエのことをじまんしたいくらいだった。
「なんで病院をぬけ出したんだ?」
「家ニ帰リタカッタ」
「じゃあ、なんで公園なんかに?」
「ボクハ、ジャマモノ。モウ、家ニハ帰レナイ。ダカラ、ココニ……」
リョウベエがブランコを指さす。
「ココハ、思イ出ガイッパイ。ジュンクント、イッショニ遊ンダ公園。ダカラ、ココニ来タ」
「リョウベエのバカ! これからも、ずっといっしょじゃないか」
ジュンはおもわず、リョウベエを強く抱きしめていた。
そこへ、パパさんとママさんもかけつけてきた。
パパさんがリョウベエにかけよる。
「リョウベエ! どうして病院にいないんだ?」
「病院ニイテモ、モウ治りマセン」
リョウベエは首をふった。
「いや、リョウベエは良くなって、うちに帰ってもらわなきゃこまるんだ」
「デモ、ヤクタタズ、ジャマモノデス」
「じゃまものだなんて、そんなことないよ」
ジュンは涙があふれてきた。
「そうよ。みんな、あなたが大好きなんだからね」
ママさんも目に涙を浮かべている。
「ママさん……」
「リョウベエ、これから病院にもどって完全に良くするんだ。これは命令だぞ」
パパさんが力強く言う。
「がんばれよ!」
だれからともなく拍手が起きた。
拍手の輪が広がる。
運動会の日の、あのゴールインのときのように……。
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