はじめての入院
夕方のこと。
「リョウベエ、入院することになったぞ」
玄関でパパさんの声がした。
「まあ!」
ママさんのおどろく声も聞こえる。
ジュンも、いざ入院と聞くと心配になってきた。これまではその日のうちに帰り、入院なんかしたことがなかったのだ。
――だいじょうぶかな?
気になって一階におりてみると、居間からパパさんの話し声が聞こえた。
「先生の話じゃ、ずいぶん悪いそうだ。走ってムリしたんだろうな」
「そんなに悪いの?」
ママさんは心配そうだ。
「ああ、かなりひどいそうだ。先生がそう話していたからな」
「どれくらい入院することになるのかしら?」
「リョウベエみたいな旧型のロボットは、治療するのに何日もかかるそうだよ」
「早く退院できるといいわね」
「ああ、そうなるといいが」
パパさんはひとつ大きな息をはいた。
リョウベエは二人の両親から、結婚のお祝いにもらったロボットだったのだ。
次の日。
レンタルロボットが家にやってきた。リョウベエが退院するまでの間、ロボットレンタル会社から借りることにしたのだ。
「レンタルナンバー、セブンデス。ヨロシクオネガイシマス」
レンタルロボットは新型で、ヒロシのところのロボットみたいにスマートである。
「オレはジュン、よろしくな」
ジュンはあいさつを返した。
ロボットのあつかい方はかんたんで、やらせたいことを命令するだけでいい。できないことはできないと返事を返してくる。
さっそく三人は、ためしにいくつか命令を出してみることにした。
「ゴルフ道具をみがいてもらおうかな」
パパさんがゴルフバッグを取りに行く。
「わたしはアイロンがけを」
ママさんは洗濯物を取りこみ始めた。
ジュンは、リョウベエにはできないことを命令してみようと思った。
リョウベエはスポーツがにがてで、公園に行ってもブランコやすべり台で遊ぶくらいだった。
「セブンはサッカーできるの?」
「ハイ、デキマス」
「じゃあ、パパとママの用事が終わったら、公園でサッカーやろうな」
ジュンは自分の部屋にサッカーボールを取りにもどった。
セブンがゴルフ道具をみがき始めた。
てきぱきとスムーズに進めていく。リョウベエの倍の速さだ。
つぎはアイロンがけ。
リョウベエだったら失敗しそうなところもなんなくこなす。
「なんでもうまいし、それに速いなあ」
パパさんは感心して見ている。
セブンはまたたくまに、アイロンがけをすませてしまった。
「お料理も安心してまかせられそうね。さっそくたのんでみようかしら?」
「ママ、ダメだよ。サッカーやるんだからね」
さっきからジュンは、サッカーボールを手に待っていたのだ。
セブンならいっしょにいてもはずかしくない。それどころか友だちにじまんしたいほどだ。
ジュンはほこらしい気分だった。