命知らずの賞金稼ぎその弐
鋼材を収容するうそ寒い倉庫、累々と重ねられた鉄骨に踞牀するサングラスの男。角ばった頤や口元に髭を繁茂させ、葉巻を持ち、紫煙をくゆらせている。男の足許には二三のボストンバッグがあり、その一つを若い男二人が調べている。周囲には五体が欠損した遺骸が数体転がり、血腥い臭いが鼻を搏つ。
「ええ、確かにブツは数通りあります」
若い男の一人が言った。バッグから包装された多量の錠剤が覗いている。
「これだけありゃ、素封家の仲間入りが出来るってもんだ」
サングラスの男が紫煙を吐きながら言う。
「これだけ揃ったんですし、そろそろ移動しませんか。また賞金稼ぎの連中が来るかもしれませんし」
もう片方の若い男が言った。
「また来たらこいつらと同じように調理してやるだけだ……」
サングラスの男は葉巻で遺骸の一体を指し示す。
「それに、あと一人運び屋が来る。それまでは此処は動かん。お前らだって異能持ちなんだ、もっと腰を据えろ」
その時、倉庫の扉が叩かれた。三人は会話を中絶しそちらに意識を注ぐ。
「コウノトリか?」
若い男の一人が尋ねる。
「そうそう、鳥のことは知らねえけど」
男の声である。
「入れ」
悪魔の断末魔のような軋り音が響き外光が射し入る。逆光のためにその見目は影絵となっているが、フードを被り、右手にはスーツケースを引いているようである。フードの男が倉庫の中程まで進むと若い男が呼び止めた。
「そこで止まれ。ケースを放して退がれ」
「あいあいさーー」
フードの男は盲従し、五歩退がった。若い男がケースを開く。と、その男は頓狂な声を上げ尻餅をついた。
「密室って結構落ち着くよね。君はそうは思わないかい」
ケースが慣性に従って徐々に開かれる。そこには押し込められたシャラクが入っていた。
「君も入ってみる? あれ、ちょ、てかこれ、抜けなくね。でゅふ、ちょ、アカツキ氏助けて」
「だから無理すんなって言ったろ」
ケースの後ろに控えていた人物がフードを取る。白髪に緋色の双眸である。
「いや、無理やり詰めたのアカツキ氏だよね」
「なんなんだお前ら!」
若い男が腰を引いたまま上ずった声を投げる。
「お前を倒す者だ!」「賞金稼ぎだ」
二人の声は渾然とし、拡がる。
「こんな頓馬な賞金稼ぎははじめてだ。おい、青二才共」
サングラスの男が俄かに立ち上がり、葉巻を指揮棒の如く揺らすと、無秩序に揺曳していた紫煙が集い、形を成しはじめる。する内にそれはアカツキとシャラクの前に降り立った。輪郭は朧げで鬣が間断なく揺れている、二頭の獅子である。
「食われる用意はできてるか」
この御業こそ賞金首、煙獣使いガベルの成せる異能である。




