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【6万PV 感謝感謝!】記憶を失くした少女は、それでも生きていく。  作者: あまね


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罪深きモアとシュア

少し空気が落ち着いたところで、私はふと思い出した。


「そういえば、モアとシュアって何ですか?さっきイアンさんが言っていましたけど」

と、テレンス三兄弟に聞いてみた。

「あぁ、モアとシュアは猫だよ。真っ白な猫と三毛の猫だ。すごく可愛いから後で紹介するよ」

フィンさんが笑顔で答えた。


フィンさん、優しいっ!

頭もいいから、絶対お兄さんたちみたいにモテるんだろうね。


「猫……!?会ってみたいです!私、遠くからしか見たことがないんです!」


馬車に乗っているとき、道端をさっと横切る小さな影を何度か見かけたことはある。

でも、ちゃんと近くで見たことはない。

あれは本当にあんなに小さいのかな?

近くで見たら、もっと大きいのかな?

どんな声で鳴くのだろう。

鳥ちゃんみたいに飛べたりしちゃう?

それとも、リスちゃんみたいに木登りが上手?

想像するだけで、ワクワクする!


「じゃあ後で紹介するよ」

フィンさんの言葉に胸が躍る。

「ありが――」

「いや、ダメだ!絶対ダメだ!俺は許さん!」

突然、大声が飛んできた。

声の方を見ると、ジルさんだった。

「えっ?……ど、どうしてですか?」

まさかジルさんに拒否されるなんて……。

私は一瞬、固まった。

……ジルさんなら、快く猫ちゃんたちを見せてくれると思っていたのに。

「モアとシュアは、君に懐くんだろ?

……そっちの屋敷に、ついて行ったらどうする?

絶対ダメだ。

あいつらは、俺たちと何年も一緒に暮らしてきたんだ。

君に連れていかれたら……困る!」

ジルさんは頑なに譲らない。


「そんな……ジルさんの猫ちゃんだから、連れて帰るわけないじゃないですか!

私、ただ見てみたいだけなんです!」

そのあと、いくら懇願しても、ジルさんはまったく頭を縦に振ってくれない……。


(……久しぶりに、必殺の涙作戦を実行しようかしら)


涙作戦を思わず考えてしまうほど、私は本気で困っているのだ。

「兄貴、ケチだよ。紹介ぐらいしてもいいだろ。大丈夫だよ、リーマ。後で僕が紹介してあげるよ」

「そうだよ、兄さん。リーマ、大丈夫だ。俺も一緒に紹介するよ。モアとシュア、すごく可愛いんだ。きっと気に入るよ」

フィンさんとイアンさんが味方してくれた。

お二人はちゃんと優しいっ!

「……おまえたちはリーマの能力を知らないんだからそう言うんだよ」

ジルさんは不満そうに言った。

ジルさんの大事な猫ちゃんを連れて帰るわけないのに……。


……ジルさん、優しくない……。


私は口をとがらせ、ジルさんを少し睨んだ。





食事が終わり、みんなが居間で寛いでいると、フィンさんとイアンさんが約束どおり、モアちゃんとシュアちゃんを抱えて私に紹介してくれた。


『にゃ〜』


『にゃ〜〜』


うううぅぅぅぅぅ……。


や、やばい……。


ジルさんの猫ちゃんだから、連れて帰らないと言ったけれど……。

や、やっぱり……連れて帰ってもいいかな?

フィンさんとイアンさんが、私に真っ白なモアちゃんと三毛のシュアちゃんを、そっと差し出した。

すると二匹は、ためらいもなく私にすりすりしてきて、

可愛く『にゃ~~』と鳴きながら、

私の太ももの上で、そのまま落ち着いてしまった。


「ううううぅぅぅぅぅ……か、か、かわい……っ!」

思わず、声にならない声が漏れた。

猫というのは――

なんて罪深い動物なのだろう。

ただ太ももに頭を乗せ、気持ちよさそうに伸びをして、

時々『にゃ〜』と鳴くだけなのに――

どうして、こんな破壊力のある可愛さを放てるの?

……メイソン家の屋敷に、連れて帰りたい。


「か、可愛いーーーっ!

連れて帰りたいです!

ジルさん、いいですか?

いいですよね?

ありがとうございます!」

勢いのまま畳みかけると、

「絶対に、絶対にっ!モアとシュアを誘うなよっ!許さないからなっ!」


ジルさんが即座に声を荒げ、二匹を私から引き離そうとした。

けれど――


モアちゃんとシュアちゃんは、必死にジルさんの手から逃れ、私にすりすりと体を寄せてきた。

『にゃ〜〜〜〜〜っ!』(さわらないでーーーっ!)


「ジルさん……モアちゃんとシュアちゃんは、『触るな』って言ってますよ。

触らないであげてください。

可哀想です」

ジルさんは、その場で固まった。

かなり……いや、相当ショックを受けたようだ。

「モアちゃん〜、シュアちゃん〜、可愛い〜」


そんなジルさんを横目に、私は二匹を抱き寄せ、頬にすりすりした。

柔らかくて、

あったかくて、

肉球も可愛くて、

最高だ。


「ほら。モアちゃんとシュアちゃんだって、私と一緒に帰りたがっていますよ?

連れて帰ってもいいですよね?

大事にしますから!」

もう一度ジルさんにお願いしてみた。

「ダメに決まってんだろう!」

ジルさんは、私ではなく――

モアちゃんとシュアちゃんを、恨めしそうに見つめていた。

「モア、シュア……!

君たちは何年も俺たちと暮らしてきたのに……そんな簡単に俺たちを捨てられるかよっ!」

ジルさんは、二匹に向かって必死に訴えた。


『にゃっ!』(そうだ!)


「あっ、『そうだ』って言っていますよ。ふふっ、お利口さんだね〜〜」

「き、きみたち……」

ジルさんは完全に言葉を失った。

「……り、リーマ。冗談だろ?

モアとシュアはそんなこと言うはずないよ。

モアとシュアは私たちの家族だ。

……そもそも、なんで猫の言葉が分かるんだよ!?

普通、分からないだろ!?」

フィンさんが、焦ったようにだんだん口調を荒げてきた。

隣でイアンさんも無言で何度も頷いた。

「だから言ってるだろ!

おまえたちは、リーマの能力を知らなすぎなんだって!

リーマが動物を簡単に手懐けるって、何度も言っただろうが!」

ジルさんが、半ば呆れたように言い捨てた。

「し、信じられん……」

「ふふっ。リーマ、もし猫を飼いたいなら、俺が探してあげようか?

ジルたちが可哀想だから……

モアとシュアはこのままにしようね」

いつも優しいカイテルさんがまた私を甘やかそうとしている。


『にゃーーーっ!』(いやーーーっ!)

『にゃーーーーーーっ!』(いっしょに行くっ!)


「あっ、ここの子たちは嫌だって言っています。

すごく私と一緒に行きたいみたいですよ!

可愛い〜〜〜」

モアちゃんとシュアちゃんが、私にすりすりしている。

――いや、もはや私のほうが、モアちゃんとシュアちゃんにすりすりしている。

この子たちの可愛さは破壊的だ。

毛並みもふわふわだし、温かいし、甘えん坊だし、

本当にたまらない。

「ふふふっ」

隣で、カイテルさんが楽しそうに笑った。

「き、きみたち……」


テレンス三兄弟は、モアちゃんとシュアちゃんのあまりにも正直な反応に、かなりショックを受けている様子だった。

「……」

さすがに少し可哀想になって、ジルさんたちへのいじめはここまでにした。

「モアちゃん、シュアちゃん。

ジルさんたちは、すごくあなたたちのことが大好きなの。

だから、ここで一緒に暮らして、いい子にしてね」


『にゃーーーっ!』(いやだーーーっ!)

『にゃーーーっ!』(いっしょにいくっ!)


「ふふっ。いい子にしていたら、会いに来るわよ〜」

『ぐるぅ〜〜〜にゃ〜〜〜!』(うーん、わかったーーーっ!)

ちょっとわがままな猫ちゃんでも、本当に可愛い。

憎めないわね。

――これは、猫ちゃんの特権かな。

リオとリアはこんなふうに甘えたりしたら――

まったく想像できないわ……。

もしリオとリアがここにいたら、間違いなく拗ねていただろう。


ジルさんの見通しどおり――

モアちゃんとシュアちゃんはすっかり私に懐き、飼い主であるジルさんたちには、ほとんど目もくれなかった。


「おまえらのせいだっ!」

ジルさんは、この小さな悲劇の原因をフィンさんとイアンさんになすりつけた。

そのフィンさんとイアンさんもまた、自分たちの飼い猫を私に紹介してしまったことを、心の底から後悔しているようだった。

「リーマ、本当に猫の言葉がわかるのか?」

フィンさんはまだ納得していない様子だった。

「はい、この子たちが鳴いたら、何を言っているのかわかりますね」

「えー……じゃあ、モアとシュアはリーマの言っている言葉がわかるのか?」

「はい。でも私だけじゃなく、フィンさんたちの言葉もわかっていますよ。ずっとフィンさんたちの言葉に『にゃにゃ』と反応していましたから」

「へぇ……なんでわかるのか?」

「うーん……さあ?」


一部始終、フィンさんはどうしても納得できない様子だった。

けれど、これは仕方がない。

理解するより、慣れるしかないのだ。

お兄さんたちも、お父様たちも、最初は理解できなかった。

けれど今では、すっかり慣れてしまっている。

だいたいのことは、何が起きても驚かず、

「リーマだからな」

で済まされるようになったのだ。


私は、可愛いモアちゃんとシュアちゃんを連れて帰るのを諦めた。

そもそも、最初から本気だったわけではない。


……あっ、いや……正確に言えば、本気半分、冗談半分だった……くらい?


でも、人の大切な家族を引き離すのは、やはり良くない。

それに、この超絶可愛い猫ちゃんたちをメイソン家に連れて帰ったら、リオとリアが拗ねる可能性が高い。

あの子たちは誇り高いホワイトウルフちゃんだけれど、かなり嫉妬深いのだ。

機嫌を損ねないよう、気をつけなければならない。


そして何より、人の家にこれ以上動物を招き入れるのは、さすがに図々しい。

いつも優しいカイテルさんは、猫を探してあげると言ってくれたけれど――

それでは、かえって迷惑をかけてしまう。



私はきちんとお礼を言って、その申し出は遠慮することにした。


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