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記憶を失くした少女は、それでも生きていく。  作者: あまね


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ホワイトウルフ一家、進路相談中

王宮から屋敷に戻ると、るんるんした気分のまま、

カイテルさんと一緒にホワイトウルフちゃんの小屋へ向かう。



するとそこには――ファビアンさん、ジルさん、マーティスさんの姿。



三人とも、小屋の中で、


まるで赤ちゃんたちを攻めるみたいに、じわじわ距離を詰めていた。




「あっ、ファビアンさん、ジルさん、マーティスさん、こんばんは」



私は一匹の赤ちゃんをそっと抱き上げながら挨拶する。



「赤ちゃんたちに会いに来たんですか?」


「ああ。カイテルから、ホワイトウルフの赤ちゃんが生まれたって聞いてな」



どうやら皆、リアの小屋に生まれた赤ちゃんたちを見に来たらしい。



――それなのに。


「……じゃあ、どうして赤ちゃんたちを追い込もうとしてるんですか?」



小屋に入ったときから、リオとリアは完全に臨戦態勢だった。


自分たちの背中に子どもを隠すようにして、ぴったりと守っている。




「追い込んでねぇよ。抱っこしたかっただけだ」



ジルさんが口を尖らせる。



「なのに、リオもリアも全然近づかせてくれねぇんだよ」



「それなのに、君はさらっと抱っこしてるんだな。ムカつくが……さすがだな」



マーティスさんが、半ば感心したように言った。



「リオとリアに言ってくれ。俺たちにも赤ちゃんを抱っこさせろって」




ファビアンさんは、さすが王子というか――


迷いなく命令口調だ。


(いや、相手ホワイトウルフちゃんなんだけど……)


「そんな言い方だから、嫌がられるんですよ」



「あ?俺は第二王子だぞ」



『ぐるぅぅぅ……!』


(俺たちはホワイトウルフだぞ!)




リオがすぐに低く唸った。



第二王子も、ホワイトウルフも……どっちも譲る気ゼロね。



「リオ、リア。ファビアンさんたちに抱っこさせてあげてくれる?じゃないと――かわいそうすぎて、私、眠れなくなっちゃうよ?」



「「「おい!」」」



三人の突っ込みが、見事に揃った。



息ぴったりすぎて、さすが幼馴染。



「ふふ」


カイテルさんが小さく笑いながら、一匹の赤ちゃんを抱き上げる。




そして、他のお兄さんたちに向かって――にやり。



「……」



今度は、三人そろってカイテルさんを睨みつけた。



まあ、しょうがない。



カイテルさんは、ファビアンさんたちよりも、ずっと長くリオとリアと一緒に過ごしてきたんだもの。




「ファビアンさんたちにも、抱っこさせるね?」


(ショウガないわネ)



リアが、不満そうに唸る。



私は赤ちゃんを一匹ずつ、お兄さんたちに手渡した。



すると――


ファビアンさんは、早速というか、当然というか。


リアと、可愛くて無垢な子どもたちを、

飼育場――つまり自分の職場に勧誘し始めていた。




「ファビアンさん、残念ですけどダメみたいです。子どもたちは、もう少し大きくなったら森に行って狩りを習うそうですよ」


私は赤ちゃんを抱っこして、そっと撫でながら言った。


「……なんで君がそんなことを知っているんだ?」


ファビアンさんは顔を顰めた。


「絶対にリアと子どもたちを狙うと思って、先にリオに聞いておきました。ホワイトウルフは狩りを覚えなきゃいけないから、二、三か月後には森に行くみたいです。残念ですね〜」



「……リア、本当か?なんとかならない?」



ファビアンさんがそう聞くと、リアはぷいっとそっぽを向いた。


「ふふふ。リア、ファビアンさんの話、全然聞いてませんね〜」



私が笑うと、


「……じゃあさ、リアだけでも飼育場に来ない?リーマの護衛で今は病院に行ってるけど、リオは普段、飼育場でめちゃくちゃ楽しんでるよ」



――その瞬間。



(なんだと!?)



リアは低く唸り、前足で地面をドンッと叩き、リオをじろりと睨みつけた。


リオはビクッと肩を震わせる。


どうやらリアは、リオが飼育場で楽しんでいることを知らなかったらしい。



仲間外れにされた、と感じている顔だ。




一方のリオはというと――



楽しんでいる事実がバレてしまい、ものすごくハラハラしている様子。



初めて二匹に会った時から思っていたけれど……



リオ、完全にリアに尻を敷かれているわね。



このホワイトウルフ夫婦、ほんと面白い。



「赤ちゃんたちが森に行ったら、リアもリオと一緒に飼育場に行ったらどう?ずっと屋敷にいるのも退屈でしょう?飼育場に行けば、たまに森に行って狩りもするみたいだよ」



私はリアに、そっと勧めてみた。



ホワイトウルフは庭より、やっぱり森の方が似合う。


この前のカレル森でも、リアはすごく楽しそうだったし。



(ウーーン……)



しばらく悩んだ末、リアは再び唸る。



(ショウがないわね。イッテやる)



「あっ、ファビアンさん。おめでとうございます!赤ちゃんたちが大きくなったら、飼育場に行ってもいいってリアが言ってますよ」



「本当か!?楽しみだ!ありがとうな、リア!」



「その代わり、たくさん狩りに連れて行ってあげてくださいね。それから、毎日お風呂もお願いします」



(……ナンだって!?)


リアは、何かとんでもないことに気づいた顔をした。


リオはというと、こっそり笑っている。



……堂々と奥さんの前で笑えないあたり、やっぱり尻を敷かれている。



「ふふふ、了解〜」



ファビアンさんはすっかり上機嫌だ。




『ぐるるるぅぅぅ……』



リアは、たいへんご不満そうだった。



「ホワイトウルフって、子どもの頃から親と離れるのか?それは知らなかったな」



マーティスさんが感心したように聞く。



「はい。狩りやホワイトウルフとしての本能、習慣を自分で学んで身につけないといけないみたいです。

ずっと親と一緒にいると強くなれないから、少し大きくなると一匹で旅に出るそうですよ」



「……戻ってくるのか?」



ファビアンさんが、期待に満ちた目で私を見る。



いや、判断するのは私じゃないから。そんな目で見ないでほしい。



「親のホワイトウルフも旅をしますし、普段は戻ってこないみたいです。お互いの居場所も、基本的には分からないそうで。それにホワイトウルフは、伴侶を見つけると家族よりも伴侶と行動するみたいです。

……リオとリアみたいに」



「でも、リオとリアの場合は、子どもたちが親の居場所を知ってるんじゃないか?」


「ファビアンさんって、意外と諦めが悪い人なんですね〜。子どもたちが戻りたかったら、戻ると思いますよ」



「君なら、子どもたちに『戻ってこい』って言えば戻ってくるだろ?ほら、言ってみろ」



「……言い方がムカつきますね」



「ほら、『戻ってきてください』って言ってみろ」



「……余計にムカつきますよ」




他のお兄さんたちはくすくすと笑い、



私はファビアンさんをじっと睨んだあと、ホワイトウルフの子どもたちには――何も言わなかった。



ちょっぴりの、仕返しだ。




リオとリアは、家族が六匹も増えたから、今日から子どもたちと一緒に小屋で寝るらしい。


その方が楽で、広々と眠れる、と二匹は言っていた。


……ということは。


うーん。


今日から、ずっと一人で寝るの確定か……。


少し、寂しいわね。



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