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【6万PV 感謝感謝!】記憶を失くした少女は、それでも生きていく。  作者: あまね


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白き家族が増えた日


翌日の夜。

待ちに待った日がついにやってきた。


リアが出産するのだ。


リアは自分の出産時期がわかっていたらしく、

三日前から私の部屋では寝ず、ずっと小屋に籠っていた。

リオも王城の仕事には行かず、リアと一緒に小屋で過ごしていた。



——そして今日。


私がホワイトウルフちゃんの小屋で二匹を見守っていると、リアが苦しそうに唸り始めた。

私は慌てて屋敷に戻り、照明やタオル、水などを小屋に運び込んだ。

動物の出産に必要そうなものは、できる限り持ってきたつもりだ。

そのあと私はリアのそばに戻り、リオと一緒に赤ちゃんが生まれるのを待った。


私が小屋の壁際で横になりうとうとしていると、カイテルさんが何枚もの毛布を抱えて入ってきた。


「リーマ、部屋で休んだほうがいいんじゃないか?」

「……カイテルさん」

私はあくびを噛み殺した。


「大丈夫ですよ。リオとリアは心細いですから、一緒にいたいんです。今日、生まれると思います」

「でも、こんなに眠そうじゃないか?」


カイテルさんは心配そうに私の頭や頬を撫でた。

「明日、また病院に行かないといけないだろう……?

無理しないで。リオもリアもリーマに無理をさせたくないと思うよ」


「今日だけですから、平気ですよ」

安心してもらいたくて微笑んだ。

「それに、カイテルさんこそ休んでください。明日も病院に行かないといけませんから」


「俺は絶対に、リーマを一人にさせない。俺も一緒にいる。ここで寝る」

そう言うとカイテルさんは地面に布団を敷き、そのまま座り込んだ。

「……え?ほ、本当に平気ですよ。屋敷の中ですし……リオもいますから、私は安全ですよ」

「それでも、俺はリーマと一緒にいたいし、心配なんだ」

「で、でも……」


部屋で寝るほうが、絶対に快適なのに。

でも、私はリアたちのそばにいたい……。

……どうしよう。

悩んでいる私の手をカイテルさんがぎゅっと握った。


「本当に大丈夫だよ。ここは野営よりずっと楽だ」

そう言うとカイテルさんはふっと笑った。

「俺だって、ホワイトウルフの出産を見てみたい。一生に一度見られるかどうかだからな」

「……本当に、大丈夫ですか……?」

「うん。今日、一緒にいよう」

いつもの優しい笑みを浮かべながら、カイテルさんは私の頭を撫で、一枚の毛布を渡してくれた。

「夜は冷えるから。ちゃんと暖かくしないと」

そう言って、もう一枚を私の肩にかけた。


こうして、リアの出産には私とカイテルさんが並んで立ち会うことになった。

カイテルさんは私の隣で壁際に毛布を敷き、静かにその時を待った。




――未明。


眠っていた私の耳にリアの唸り声が届き、私ははっと目を覚ました。

リアは苦しそうに体に力を入れ、リオが顔やお腹を舐めて寄り添った。


カイテルさんは急いで屋敷へ向かい、お湯を持ってきてくれた。


人間の気配がリアを刺激しないよう、私とカイテルさんは少し離れた場所から見守っていた。


そうして――


赤ちゃんが、一匹、また一匹と生まれ、

全部で六匹の命が誕生した。


小さくて真っ白なホワイトウルフちゃん——

六匹もの命が、この世界に生まれてきたのだ。


新しい小さな命を見て涙がにじんでくる。


私は赤ちゃんの緒を切り、タオルで体を拭いた。

そして出産で体力を消耗しているリアに、私は温めた牛乳を少し飲ませた。


「リア、お疲れさま〜。おめでとう〜。

少し飲んで、たくさん休んでね」


そう言いながら、リアの頭をそっと撫でた。

リアは少し上半身を起こし、ゆっくり牛乳を飲み始めた。


(……マズい)

そんな文句も唸りながら。


文句を言う力だけは消耗していないみたいだ。

よかった。


「リオ、おめでとう。今日からお父ちゃんとお母ちゃんになったんだね。リアのそばにいてあげてね」


(ウン)


リオはずっとリアの顔を優しく舐めていた。

赤ちゃんたちは今、仲良く母乳を飲んでいる。


「みんな~、小さくて白くて可愛い〜。本当に可愛すぎる〜」

私は指でそっと赤ちゃんたちを撫で、頬を緩ませた。


「ホワイトウルフの出産って……意外と普通の動物の出産と同じなんだな」

カイテルさんは少し不思議そうな顔で赤ちゃんたちを撫でていた。


「ホワイトウルフちゃんも動物ですからね〜。ふふ、赤ちゃん可愛い〜。早く抱っこしたいです」

「今日、ファビアンに連絡しておこう。あいつ、たぶん見に来ると思う」

カイテルさんは赤ちゃんから私へと視線を移した。

「リーマ、出発まで少し時間がある。先に休んできて」

「カイテルさんは?」

「俺も少し休むよ。夕方に戻ってきたら、また赤ちゃんたちと遊ぼう」


「わかりました。一緒にいてくれてありがとうございました」

私がお礼を言うと、カイテルさんは微笑んで私の頭を撫でた。


「リオ、リア。私、行ってくるね。夕方、また遊びに来るから」

私は二匹を撫でながら言った。

「今日は、たくさん休んでね」


二匹は赤ちゃんたちに気を取られていて、たぶん私の言葉は聞こえていない。

……まあ、仕方ないか。

可愛い子どもが生まれたばかりだもんね。

リアたちとお別れして、私は寝室に戻り、少しだけ身体を休めることにした。




少しだけ身体を休めたあと、病院へ向かった。

今日からの仕事は七人にディル薬を飲ませることだった。


みんな、叫んだり、駄々をこねたり、吐いたりしていた。


一人は床にしがみついて泣き、

別の一人は逃げようとして騎士に捕まっていた。


もう一人は現実世界から逃げようとしたのか、ベッドにうつ伏せになり、枕で頭を隠していた。


……ちょっと可哀想かも。


「みんな、今日も頑張ろうね〜」

そんな彼らに、私は明るい声で呼びかけた。


すると、七人ともまるで私が地獄の使者にでも見えるかのような目で見てきた。

……ひどい。


七人とも、あれほどディル薬を嫌がっていたのに――

騎士たちが相変わらず、


「大人しく飲まないと、喉に突っ込んでやるぞ!」

「これ以上、リーマちゃんに仕事を増やすな!」

「俺が直接、胃袋まで入れてやるから覚悟しろ!」

などなど容赦なく脅かしていた。


おかげでディル薬の鍋が空になっていた。


ディル薬を飲んだあと、七人はすっかりヘロヘロになり、今はベッドで休んでいる。


その間に、私は一人ずつ体調を確認していった。


ディル薬に対する恐怖で精神的にかなり消耗している様子以外、特に心配するような症状は見られないみたいだ。


しかも今朝からの様子を見ると、麻薬依存症の症状はほとんど見られなかった。

みんな、今まで頑張ったんだなとわかった。


麻薬を作っていた人たちだけれど……。

根は真面目な人たちなんだと思う……ということにした。


七人にディル薬を飲ませ終えると、急に足元がふらついた。

私は壁際の椅子に腰を下ろした。


すると、リオがすぐ隣に寄ってきた。

今日も護衛として、しっかりとついてきてくれている。


今朝、六匹も子どもが生まれたから、

「今日は来なくていいよ」と言ったのに――

リオにもリアにも頑なに、

(ダメだ!)と言われてしまった。


本当に過保護な保護者だな。

まるでお父ちゃんとお母ちゃんみたいだ。


……まあ、確かにお父ちゃんとお母ちゃんになったけど。


「リーマ、今はあいつら寝ているから休んで。調薬の小屋で少し眠って」


昨日、ほとんど眠れていなかったせいで、私の頭がぼーっとしている。

椅子に座ったまま動かずにいると、カイテルさんがすぐに気付いたようだ。


「……はい」

私は素直に頷いた。


無理をしても、今の状態では長く持たない気がする。

いつどこで眠ってしまっても、おかしくない。


カイテルさんは私を調薬の小屋まで連れていき、壁際に長椅子を並べて簡易的な寝床を作った。

そのまま私を寝かせ、そっと毛布をかけてくれた。


「この長椅子……もともと、ありましたっけ……?」


うとうとしながら、ぼんやりと聞いた。

もう目を開けているのもつらい。


私はもともと早寝早起きの体質だ。

一晩ほとんど眠らないと、体の時計がすぐ狂ってしまう。


「リーマがほとんど寝ていなかったからさ。長椅子を用意しろってイヴァンたちに言ったら、あいつらが、すぐ病棟から何脚か持ってきたんだよ」


カイテルさんが、私の頭を優しく撫でながら言った。

なでなでされると、気持ちがよくなってますます意識が沈んでいく。


「あとで……おれいを……」


自分が何を言ったのかも、もうわからない。

もう……限界だ。

頭がまったく回らない。


そしておでこに柔らかい感触がした。


「おやすみ」


そんな声が遠くに聞こえた気がして、そこで意識が途切れた。


………

……


目が覚めると、太陽が西に傾いていた。


……えっ?


ね、寝坊した!?

なんでおじいちゃん、起こしてくれなかったのよ!?


やばいやばい!

怒られるっ!


私はすぐベッドから飛び上がった。

そして——村の小屋と違う風景が目に入った。


……


あっ。

今は王都の病院の小屋だったわ。

びっくりしたぁ〜。

また寝ぼけて変なこと言ってたら、恥ずかしいよね。

もう一度長椅子に腰を下ろした。


……


あれ?


お昼のディル薬とお昼ご飯は……?


カイテルたちが代わりに用意してくれたのかな……?

もしそうなら、この小屋で作っていたはずなのに……まったく気付かなかった。


……もしかして私……爆睡していた?


でも、そのおかげで頭はすっきりしている。

私は少しふらつきながら長椅子から立ち上がり、大きく背伸びをした。


私が寝ていた場所には間仕切りが張られていて、調薬場とこちらがお互いに見えないようになっていた。


……カイテルさんがやってくれたのかな。


さすがの面倒見だ。

二百万点満点。

文句なし。


だって、自分のアホ面の爆睡顔を誰かに見られるなんて……恥ずかしすぎるもん。


長椅子の隣でリオが眠っているのに気づき、私はそっと小屋の外に出た。


カイテルさんはどこだろう。

七人の小屋かな、と思ったそのとき――

小屋の前で椅子に座っているカイテルさんの姿がすぐ目に入った。


「カイテルさん、ずっとここにいたんですか?ちゃんと休めましたか?」

「リーマ、もう大丈夫なのか?まだ時間はあるから、もう少し寝ていてもいいよ」

「ありがとうございます。もう大丈夫です。おかげで頭もすっきりしました。中で休んでいてもよかったのに」

そう言うと、カイテルさんは少し困ったように笑った。

「リーマが寝てる間に、あいつらが『うっかり』中に入って、リーマを見られると思うと我慢できなくてな」


……さすがカイテルさん。

私と同じ気持ちだ。

騎士たちに爆睡顔を見られるなんて……私だって耐えられないよ。


「ふふっ。ありがとうございます。おかげで安心して休めました」

「それならよかった。昼の薬を作ったついでに、夜の分も作っておいた。今日は早めに帰ろう。王宮にも行かないといけないからな」

「本当ですか……?なんだか……すみません」

「謝らなくていい。みんな、喜んで作ってたからな」

「皆さんにお礼をしないと……」


私が気持ちよく眠っている間に、みんなが頑張って私の分の仕事をしてくれていたんだ。

帰る前に七人の体調を確認した。

私が調薬の小屋へ行った時と同じように、みんなベッドで寝込んでいた。

それ以外は特に異常はなかった。


よしっ!


これで今日もお父様にいい報告ができる。


私は騎士たちにお礼を言い、カイテルさんと一緒に王宮へ向かった。


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