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【6万PV 感謝感謝!】記憶を失くした少女は、それでも生きていく。  作者: あまね


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今日、何度目かのノック


——コンコン。


今日、何度目かのノック音が響いた。


「入れ」


今度現れたのは、秘書でもエミール副団長でもロランでもない。


自分の息子と、美しい少女――

カイテルとリーマが、並んで微笑みながら執務室に入ってきた。


(ほお……)


アーロンは思わず感嘆した。


贔屓目なしで言っても、よく似合っている。

本当に絵になる二人だ。

……毎回、同じことを思ってしまうが。


ここ最近、リーマとカイテルは毎日のように王城に姿を見せている。


それ以来、王城内では――

「あの美少女は誰だ」

「メイソン伯爵家とどういう関係なんだ」

と噂が絶えない。


リーマは現在、十大大臣であるアーロンの指示のもとで仕事を手伝っている。


そのため、他の十大大臣も彼女の存在を把握しており、

中にはアーロンに直接リーマの素性を尋ねてきたり、

自分の子息や孫のために縁談を持ちかけてくる者までいる。

そのたびに返す言葉は決まっている。


――「カイテルの婚約者だ」


……実際、その婚約式はいつ挙げられるのだろうか。

結婚式は……いつになるのだろう。


……まったく。

カイテルのアプローチがあまりにも遅すぎる。

呆れたように、小さく首を振った。


……それにしても。

もうこんな時間か。

窓の外を見ると、すでに空は暗くなっていた。


「お父様、こんばんは〜。ウィリアムズさん、こんばんは〜」

リーマはいつもと変わらぬ柔らかな笑顔で挨拶した。


「リーマお嬢様、こんばんは。本日もお疲れ様です」

ウィリアムズが立ち上がり、丁寧に応じた。


「お父様、ただいま報告に参りました」

カイテルもにこやかに続いた。


一日中仕事をしていたとは思えないほど疲れた様子はない。

むしろ――幸せそうだ。


(……おい!こら!)


……まあ。

一日中ずっとリーマと一緒にいられたのなら……無理もないか。

今までの報いだと思って、大目に見てやろう。


二人は、毎日病院から王宮まで七人の様子を報告しに来る。

屋敷で報告しても構わないとは言ってある。


だが、アーロンが遅くまで王宮に詰めていること、

そして「早く報告したい」というリーマの希望もあって、こうして毎日足を運んでくれているのだ。


リーマがそうしたいと言えば、カイテルが断るはずもない。


……まったく。

我が息子は、女の子に従順すぎる。


二人が結婚したら、どうなるのか……

知りたいようで、知りたくない……。


とはいえ、そのおかげで状況を即座に把握でき、

治療が順調に進んでいると知れるのは、正直ありがたい。

肩の荷もだいぶ軽くなる。


カイテルの報告によると、七人はほぼ回復していた。

すでに元気を取り戻し、麻薬とコニファの毒、両方からの回復に向けて順調に進んでいる。

明後日からは、麻薬依存症の治療も再開できるという。


「そうか……そろそろ回復するんだな。安心したよ。やっと、いい報告が聞けた」


「七人ともかなり良い状態です」

リーマは胸の前で手を組み、にっこりと微笑む。


「みんな、麻薬依存症の治療にもすごく前向きです。ですから、私も全力でサポートします!」


「ふふっ……」

カイテルがそっぽを向き、笑いをこらえた。


リーマは首を傾げ、不思議そうにカイテルを見た。


……何だ?

何か面白いことでもあったのか?


「お父様、今日はいつもよりお疲れのようですね……」

リーマが、心配そうに言った。


「屋敷に戻ったら、疲労回復のハーブティーを準備しておきますね」


そして、何か思いついたように続けた。

「この前、回復薬の材料になる植物を裏庭に植えたんですけど、最近全然見に行けていなくて……。

ちゃんと育っていたら、今度こそとっておきの――すごく効果のある疲労回復薬を調薬しますね」


その言葉に、アーロンは一瞬、ひやりとした。


“とっておき”?


“すごく効果がある”?


……気にはなるが、この子は時々危険というものを知らなさすぎる。



「……そうか」

アーロンは何とか声を出すことができた。

「楽しみにしておくよ。その時は……よろしく、頼む」


「はい!お任せください!」

リーマは嬉しそうに頷いた。


麻薬事件が発覚して以来、リーマは毎日、

アーロン、カイテル、ウィリアムズのためにハーブティーを淹れてくれている。

メイソン伯爵家の“未来の嫁”のおかげで、屋敷の空気は驚くほど穏やかだ。

隣でカイテルが幸せそうに、愛おしそうに、リーマの頭を撫でた。


(……うわっ)


そんな息子の姿に父親であるアーロンの胸までむずがゆくなる。


「……こほん!

えー……試験まで、あと六週間だな。

勉強に看病に、大変だろうが、あと少しの辛抱だ」

アーロンは背もたれに背中を預けた。


「正直、これだけの実績があれば、試験を受けずとも、

王様が医療室や王宮の仕事を与えてくださるだろう。

話をつけてやろうか?」


リーマは目を見開き、そしてふわっと笑顔を浮かべた。


「……ありがとうございます。でも、まずは試験を頑張ります」


予想通りの答えだ。


「そうか。では、これからもよろしく頼む」


「はい、全力で頑張ります!」


我が“未来の嫁”……いつも元気だ。


「もう下がっていい。早く休みなさい」

「はい、お父様。お先に失礼します」


二人は揃って一礼し、執務室を後にした。

その背中を見送りながら、アーロンは大きく伸びをし、欠伸を漏らした。


(はぁぁぁ……私もそろそろ帰るか)


七人の回復を聞いて安心した途端、

気が抜けたように、どっと疲れが押し寄せてきた。


「では、あの七人は本日も順調に回復していますし――」

ウィリアムズは首を左右に伸ばしながら言った。

「私たちもそろそろ帰りましょうか。

リーマお嬢様が準備してくださるお茶も、早く飲みたいですしね」



アーロンは呆れたように小さく首を振った。


……よく言う。

ただ帰りたいだけだろうが。

まあ、私もだが。


アーロンは小さく背伸びをして、席を立った。



明日もまだ山積みの仕事が待っている。



十大大臣でも、少しくらい休んでもいいだろう。


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