回復?いいえ、準備運動です
看病を始めてまだ一週間も経っていないのに、七人の体に少しずつ変化が見えてきた。
青白かった頬に血色が戻り、弱々しかった脈も安定してきた。
霞んでいた目も少しずつ生き生きとしてきた。
会話にもぎこちなさはあるけれど、普通にできるようになった。
自分で食事や水を口に運べる姿を見ると、心の中に小さな安心が広がる。
最初のころは、ヒューナー草のハーブティーのことを聞いただけで体が震えていた七人も、
その甘い香りをかぐと、少しずつ口をつけるようになった。
口に含むと予想より飲みやすく、ほんのり甘みもあることがわかると、文句を言わずにごくごくと飲み干していた。
それでも、葉っぱから作られた飲み物に対する恐怖心はまだ残っているようで、手の動きや表情の端にわずかなこわばりが見える。
そんな七人を見て、確実に回復しているとわかると、胸の奥がほっとする。
念のため、明日ももう一度コニファ毒の症状を確認しよう。
問題なさそうだったら、
明後日から麻薬依存症の治療を再開しよう。
……でも。
完全に安心できるわけじゃない。
今の彼らには麻薬依存の症状がほとんど見られない。
けれど、それがコニファ毒の副作用で一時的に抑えられているだけの可能性もある。
明後日から治療を再開したら、改めて経過を確認しよう。
本当に症状がなければ、予定の四か月を待たずに終えられるかもしれない。
目の前で少しずつ元気を取り戻す七人を見ながら、私は心の中で小さく頷いた。
まだ油断はできないけれど、今はこの瞬間を信じて、見守ろう――
そう思えるようになった。
「みんなすっかり元気になったね〜。明後日から依存症の治療をまた頑張りましょうね〜」
私が可愛く(?)ニッコリとそう言い放った瞬間——
「……」
ヒューナー草のハーブティーを飲みながら笑顔で話していた七人が、同時に硬直した。
一瞬で、賑やかだった治療の小屋が静まり返った。
……あまりにも息がぴったりで、
思わず笑いそうになってしまった。
そして——
七人も揃って、ヒューナー草のハーブティーのコップを落とした。
和気あいあいとしていた空気が、一気に気まずいものへと変わった。
あらあら〜。
みんな息ぴったりだね〜。
さすが、一年も一緒にカレル森で暮らしていた仲間だ。
すごいな〜。
「お、お、お、お、俺たち、もう治ったんじゃないの……リーマさん?」
「そ、そ、そ、そうだ!俺たちは百パーセントの意識で話してるよ!?」
「な、なんでまたあんな治療をしなきゃいけないんだ!?もう治ったよ!」
「あんな治療、いらん!」
……みんな、必死だね〜。
「これは毒の影響で、一時的に症状が和らいでいるだけかもしれないの」
私は七人に優しく説明した。
「だから明日から、また百パーセントの治療を百パーセントで頑張っていきましょうね〜」
私は胸の前で両手を組み、相変わらず可愛く(?)ニッコリと話した。
そんなに治療を楽しみにしてくれているなんて——
こっちまでやる気が百パーセント出ちゃうわよ。
「じ、自分は飲まないからって……
俺らだけに飲ませるなよ!
おまえも飲め!」
リーダー役の麻薬団員が強張った表情で言った。
どうやら彼らの頭の中には、すでにあのディル薬しかないらしい。
「??何を言ってるの?
だって私は……飲む必要なんかないも〜〜ん」
(あんな激マズ薬、二度とごめんよ)
「か、可愛い顔して……悪魔だ……」
「もうーーーっ!
美しい、だなんてっ!
正直者なんだねーーーっ!」
……ちょっと照れちゃう。
「褒めてないから。美しいとか一言も言ってないから」
「ふふふっ。面と向かって美しいなんて言われると……ちょっと照れるかも〜」
私は思わず手をもじもじさせた。
「だから褒めてねぇ!
照れるな!
もじもじするな!
人の話を聞け!」
「ま……またあの地獄かよ……」
「地獄だなんて〜。
その後、いつも安らかに眠るじゃないの?」
私は少し首を傾げた。
「眠るんじゃねぇ!気を失うんだよ!」
(本当に我が儘だね〜)
「……もはやあれは毒だよ、リーマさん。味だけでも何とかならない?」
「うーん……頑張ればできなくはないと思うけど……
今はする気がないかな〜」
「できるなら今しろよ!むしろ今しかないだろ!」
(こっちも本当に我が儘だね~)
「今度こそ、俺……死ぬ……」
一人がベッドに伏せた。
「安心して。ディル薬で死んじゃった人なんていないよ〜」
(だって、まだルネおばちゃんしか飲んでいないもんね~)
「まったく安心できねぇ!」
「もう———っ!」
どうやら私は今まで優しすぎたかもしれない。
もう少し、本気を見せてあげないとだめかも。
「みんな、本当に我が儘ばっかり言うのね。一回に二バケツを追加しちゃうよ?」
「……」
七人を一瞬で黙らせた、魔法のような言葉だった。
その後は、しばらく七人にブーブーと小さく言われた。
……が。
無視するのだ。
「みんな、そんなにやる気があるのね?嬉しいよ!
今度こそ、飛びっきり効く薬を作ってあげるね。楽しみにしてて!」
私はまたニッコリと微笑んだ。
七人はさっきまでの歓談が嘘のように意気消沈し、ベッドに倒れ込んだ。
その一方で——
カイテルさんを含めた男女の騎士たちは腹を抱えて後ろで爆笑していた。
ふむふむ。
みんなのこのやる気があるからこそ、絶対に、絶対に依存症の治療は成功するのだ。
この七人がルネおばちゃんのように治ったら——
これから、たくさんの依存者を麻薬の地獄から助けられるかもしれない。
……嬉しいなぁ。
全部おじいちゃんのおかげだ。




