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心配して損した理由

レンブラント家の屋敷も、メイソン家と同じくらいの大きさ。


つまり――とんでもなく広い。


感覚的には、村が六つ分くらい。


……いや、広すぎてもう目測できない。




しばらく歩き、ドラゴンちゃんの小屋に到着した。


中に入ると、ルークちゃんが元気なさそうに寝臥せっているのが、すぐ目に入る。


確かに覇気はないけれど、どこか具合が悪そうにも見えない。



……どうしたんだろう。



「ルークちゃん、こんばんは。初めまして」


私はそっと声をかけた。


「私、リーマだよ。よろしくね」


『ギィーーーッ!』


ルークちゃんが、ぱっと顔を上げて鳴き、翼をパタパタ振る。


私に会ってすごく喜んでくれるみたい。


ふふふっ。



やっぱり、動物たちとはすぐ気持ちが通じ合う。


この能力、最高だわ。


「元気がないって聞いたけど、どうしたの?」


『……』


ルークちゃんの目が、じわっと潤む。


「えっ、な、泣かないで……!」


「どうしたの?何があったの?」


「何か、私にできることある?」



『……』


「……ん?」


「もう一回、言って?」


『……』


「……えーと……そう……なの……?」


『……』


「……そ、そうなんだ……」


「せ、せつないね……」


……まさか、こんな話を相談されるとは思わなかった。


しかも完全に、私の専門外だ。


『……』


「だ、大丈夫だよ……!」


私は必死に声をかける。



「元気出して!マーティスさんが、きっと何とかしてくれるからね!」



ルークちゃんの顔を撫でると、彼は期待に満ちた目で、マーティスさんを見つめた。



「……ルークが、なんて言った?」


マーティスさんが、警戒しながら近づいてくる。



「えーと……」


私は言葉を選びながら答えた。


「この前の任務で出会った、女の子のドラゴンちゃんのことを忘れられなくて……」


「でも、その土地の任務がもうなくて……」


「だから、会えなくてつらい、って……」



ルークちゃんの頭を撫でながら、伝える。



……可哀想。



「……は?」




「えーと……ズバリ、片思い中です!」




「……は?」


「今、冗談を言ってる場合じゃないだろ?」


「俺、真剣に聞いてんだぞ」


「私だって、この人生で一番真剣なくらい真剣です!」



……一瞬の沈黙。



「……つまり、こういうことか?」



マーティスさんは、ルークちゃんを睨みつけた。



「ルークが飯も食えず、元気もなく、寝込んでるのは」



「ある女の子ドラゴンと離れ離れになって、二度と会えないから……か?」



「その通りです!」



私は全力で頷いた。



「なるほど……なるほど……」



マーティスさんも、なぜか何度も頷く。



「俺、数年前に……」



「いや、見たというか……知ったというか……」



「……よーーーーーーく知ってる、こんなやつを……」



完全に呆れた顔だ。



「あいつだけじゃなく、他にまだいるのかよ!?」



「しかもドラゴン!?」



「なんで、あいつのドラゴンじゃなくて、俺のドラゴンなんだよ!?」



なぜか、マーティスさんはカイテルさんを睨みつける。



「なあ、カイテル。おまえ、どう思う?」



冷たい視線が、ルークちゃんとカイテルさんに向けられる。



カイテルさんは知らん顔で肩をすくめ、視線を逸らした。



「……マジかよ」



「心配して損した!」



「ひどいです!」


思わず、声が出た。


「ルークちゃん、こんなに苦しんでるんですよ!」


「そのドラゴンちゃんのところに、連れて行ってあげてください!」


「はぁぁぁぁぁぁ……」


マーティスさんは、深いため息をついた。


「まったく……こんなやつは……」



マーティスさんは、再びカイテルさんを睨みつけた。



「カイテル、おまえが連れていけ」



「は?」



カイテルさんが即座に返す。



「なんで俺?おまえのドラゴンだろ。おまえが行け」



「おまえが一番、ルークの気持ちがわかってるはずだが?」



……ん?


なになに?


どうして、カイテルさんが一番わかるって話になるの?


もしかして……。


もしかして、カイテルさんもルークちゃんみたいだったりする?



……えっ!?



知らなかった〜!



お相手は誰なの?



……あれ?でも今まで、そんな様子まったくなかったよね?



もう解決済みなのかな……?



「おまえのドラゴンだから、おまえが行け」


カイテルさんは淡々と言い、完全にマーティスさんを無視した。


「ルークちゃん、もう大丈夫だよ〜」


私はルークちゃんの顔を撫でながら、優しく声をかける。


「マーティスさんが、ちゃんとあそこに連れて行ってくれるからね〜」


「だから元気出して、頑張っちゃってね!」



(アリガトウッ!)



ルークちゃんは翼をばたばたさせ、大喜びしている。



うん。



もう後のことは、マーティスさんに任せよう。



「はぁぁぁぁぁぁぁ!」


「マジかよ!?」


マーティスさんは、とうとう頭を抱えた。


「マーティスさんも頑張ってください!」


私は元気よくエールを送る。



「人の恋愛……?それともドラゴンちゃんの恋愛……?」


「どっちかわかりませんけど、恋を手伝うと自分にもいいことが返ってきますよ!」


「恋愛小説には、そう書いてありましたから!」



「……参考にならねぇ」



小さく呟くマーティスさん。



「ふふっ」



カイテルさんが、私の方を見て微笑む。



「リーマ、ルークの件はもう解決だね」



「次は、レオのところに行こうか?」



そう言って、レンブラント三兄妹をその場に置き去りにし、私の手を取って歩き出す。


私は少し振り返り、ルークちゃんの小屋の中を見た。


マーティスさんは渋い顔でルークちゃんを撫で、


バーバラさんは黙って様子を見守り、


ナディアさんは優しく声をかけている。


……みんな、ちゃんと優しい。



どうか、ルークちゃんの恋がうまくいきますように。



レンブラント家の皆さん、頑張ってください。


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