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【6万PV 感謝感謝!】記憶を失くした少女は、それでも生きていく。  作者: あまね


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可愛い子には旅をさせよ

私には不思議な力がある。


それは動物と仲良くなれる力だ。


理由はわからないけど、森の鳥や動物たちはとても私に懐き、私の言うことを聞いてくれて、私のことを守ってくれるのだ。

私もその動物たちの感情がわかる。

お互いの気持ちが通じ合っている。

人間の言葉のように、何を言っているのかもわかる。

その動物がいま、嬉しいのか悲しいのか寂しいのか痛いのか――理解してしまうのだ。


初めは、この村に住み始めて十日ぐらい経ったころだった。


あの時、私はおじいちゃんと一緒に森で薬草を探していたら、いきなり一羽の鳥ちゃんが飛んできて私の肩に留まり、咥えた花を私に寄越した。

「お、おじいちゃん、この鳥ちゃんが私に花をくれたんだけど……」

「鳥が?」

おじいちゃんが鳥ちゃんと花を交互に見る。

「なぜ鳥がおまえに花を?」

「私がわかるわけないでしょう?」


おじいちゃんは少し首を傾げた。

そして、諦めたようにため息をついた。

「これはヒユ花だ。潰したら解熱剤になる。持って帰ろう」

「そうなんだ。鳥ちゃんすごいね〜、ありがとう〜」

私が肩に留まった鳥ちゃんの頭を撫でて褒めると、鳥ちゃんが照れて嬉しそうに笑ったと私は直感で分かった。

でもその時、私はなぜ鳥ちゃんが照れたとわかったのか、よくわからなかった。


その日以来、森の小動物たちや鳥ちゃんたちが木の実や花をくれたり、

畑仕事を手伝ったり、

朝私を起こしたり、

鹿ちゃんたちが家事の手伝いをしたりして、

やっと自分が動物とすぐ仲良くなれる体質なんだと理解した。


しかしすべての生き物ではない。

虫とか蛇とかは全然だめだった。

蜂に刺されたこともあったし、蛇にかまれたこともあった。

蛇にかまれたとき、びっくりしておじいちゃんのところまで号泣しながら走っていったこともあった。


あのときは未熟だったな。

今は何度かまれても平気だ。

毒のない蛇に限るけど。



ある日、ふと思った。

魚とかエビとかならどうなるのだろうか、と。


川に入ってみたことがあった。

しばらく突っ立っていても、一匹も近づいてはくれなかった。

捕った魚とエビとカニを見つめても、何を考えているのか、何を感じているのか、全くわからなかった。

生き物の大きさが関係しているのかもしれない。

それとも意思疎通(?)ができるような動物だけなのかもしれない。


まあ、虫は嫌いだから別に仲良くなくても大丈夫だし、蛇も魚もカニもエビも美味しいからむしろ仲良くならないほうがいい気がしなくもない。


しかし、この動物の仲良し力は最初は村の人たちに驚かされて不思議がられていた。

でも今はみんなもう慣れて、私が動物たちにたくさん囲まれても、何も驚かなくなった。


動物と仲良しのおかげで、いつの間にか私は肉を食べられなくなってしまった。


だってね、さっきまで仲良くじゃれあっていた相手を食料のために殺しちゃうなんて……。

誰がそんな残酷なことができるというの?


まあ……できちゃう人がいるかもしれないけど、私にはとても無理なことなんだよね。


ちなみに意思疎通できない生き物は食べる。

だから魚は食べるし、エビとかカニとかも食べる。


蛇は最初怖くてなかなか食べられなかったけど、食べてみると意外と柔らかくて美味しかったから、蛇料理は私の好物の一つになったのだ。


おじいちゃんは森に薬草を探しに行ったら、よく蛇を持って帰ってくれる。




そんな平和な日々が過ぎていき、ある日の晩ご飯のとき、おじいちゃんが突然、

「おまえはこの村に来てもう三年だな」

と、言い出した。

「そうだね~」

「村を出たらどうだ?」

「……うん?」


……幻聴かしら。


「おまえはまだ若いからな、もっと世の中を見るべきだぞ。この小さな村に埋もれるのはもったいないんだ。おまえは賢いから、きっと多くの人に役に立つだろうな」

「ど、どこに行けっていうの?」

げ、げ、げ、幻聴じゃなかったよ!

「そこの川をずっと下っていけば、トレストという町に着く。

そのあとはおまえの行きたいところに行けばいい。

トレストにずっといてもいいし、王都に行ってもいいし、他の街でもいい。おまえ次第だ」


おじいちゃんがおかずを口に入れながら、淡々と話した。

まったくこの可愛い可愛い私の気持ちを微塵も気にしない様子だった。

悲しい……。


「お、おじいちゃんは?」


「わしがここにいるに決まってるだろう」


「じゃ誰がおじいちゃんの面倒を見るの?水汲みは?薪は?

村から離れるのはいやよ。絶対にいや!

いーーやーーーだーーーーっ!」


「それにこの村、老いぼれしかいないから、おまえはこのままだと結婚できないぞ」

おじいちゃんはまったくこの可愛い可愛い私の訴えを聞かない様子だった。

悲しい……。


「じゃしなくていいじゃん。私はおじいちゃんとずっと一緒にい・る・の!」


「わしに孫を抱かせろ」


「でも村を出たら孫を作ってもおじいちゃんは抱けないんじゃないの?おじいちゃんがこの村にいるんだからさ!」


「おまえの薬の知識は口答えの能力と同じぐらい高いんだから、きっと世の中の役に立てるんだろうな」


「……えっ?今私を褒めてる?褒めてるよね!?」


ちょっとひどいことを言われた気がしなくもないけど。

あっ、いや、今はそんなことはそこら辺に一旦置いておこう。


「わしは意味もなくおまえにやらせたことがあったか?」


「えっ?何を言ってるの?何度もあったでしょう?

この前だっておじいちゃんが私をあの崖に行かせたよね?

あれ結構危なかったよ。足が滑っちゃったら死んじゃうよ。

あれ何のため……じょ、冗談ってば〜。目が怖いよ〜」


おじいちゃんがギョッと私を睨みつける。

何百回もこの恐ろしい鬼目で睨まれてきたけれど、慣れないわね。


ムリムリ。


おじいちゃんは普段すごく優しいけど、怒ると鬼に化ける。

というか鬼より怖いのだ。


「じゃ、じゃおじいちゃんも一緒に行こうよ!ねねねね!一緒に行こう!絶対楽しいよ!」


「わしはもう六十三歳だ。楽にさせてくれ。何日も森を歩かせる気なのか?

ぎっくり腰したらどうする?膝が痛いんだろ?

それにわしも行ったら村の病人はどうするのだ?

おまえはまだ若いんだから一人で行きなさい。こんな村に埋もれるのはもったいない」


おじいちゃんはひと口ご飯を口へ運んだ。


「なにそれっ!?この前六十三歳舐めんなとか、わしの膝とか腰とか心配するなとか言ったくせに!

都合よく六十三歳だとか、言い訳にしないでよ!」


「やはり口答えが達者だな、わしの見込み通りだ」

おじいちゃんはトウモロコシのお茶を飲んだ。


「おまえには才能がある。だが、この村にいたら、風邪や頭痛くらいしか治す機会がない。外に行って、村にはないことを学べ」


鋭い視線で私を見つめた。


「おまえはあのフォレストディアを助けたかったんだろう?なら、外に行け。世界を学んで来い」


とまあ、こんなふうに言い合いをしながら、いろいろ説得されたのち、四日後村を出ることになった。

まったく納得していないけどね。




私は村の一人一人に別れの挨拶をしながら、おじいちゃんのためにできるだけたくさん水と薪を準備しておいた。

ブランちゃんと鹿ちゃんたちがずっと私を手伝ってくれた。

メアリーおばあちゃんに別れの挨拶すると、

「そう、もう村を出るのね?これからリーマの元気な挨拶が聞けなくなって寂しいわね。でも頑張ってたくさん学んできてね。街の人に気を付けるんだよ」

と、心配そうに応援してくれた。


お隣のジゼルお姉ちゃんが、

「まあ、街に行くのね。いいなあ。でも男には絶対に気を付けるんだよ」


ジゼルお姉ちゃんは真剣な顔で、次々と忠告した。

「男は女の子に優しくしたら騙そうとするんだからね。男の言うことを信じちゃダメだよ!

はぁ……もう心配で心配で仕方ないわ。リーマは男の耐性がないんだから」


後学のためにどうやって耐性を極めるのかも教えてほしいものだ。


ジゼルお姉ちゃんの旦那さん、ニックお兄ちゃんがジゼルお姉ちゃんよりさらに真剣な顔で、

「いいか、リーマ?

おまえが街に行ったら、男がたくさんおまえに群れてくるんだろうが、絶対に絶対に男を信じてはダメだぞ。

あいつらがおまえに甘い言葉を注いでも聞くな!信じるな!

おまえは自分の身をしっかり守るようにな。騙されないように気をつけるんだぞ。

わかった?

男を信じるなよ。街の男はみんなケダモノだ!」

と言った。


隣に立っていたジゼルお姉ちゃんも、何度もニックお兄ちゃんの言葉に頷いた。


私は心の底から街の人が怖くなった。

街の人って化け物か何かなの?


ルネおばちゃんに声をかけられて、

「あたしみたいになりたくなかったら街の人を絶対に信用しちゃダメだよ」

と簡潔に言われた。


みんな同じことを言うんだね。

私の進路よりみんなこのことだけ気にしている。


街は絶対ひどくて残酷で悲惨な場所だ。

街の人も絶対ケダモノで最低で最悪な人たちだ。


怖いよ……。


どうしておじいちゃんは私にあんな危険なところに行かせたがっているの?


めちゃくちゃ怖いんだけど……。



おじいちゃんから少しお金をもらった。

昔、おじいちゃんが「こういうものもあるんだ」と言って、お金の価値や使い方を教えてくれたことがあった。


でも、村では使うことがないから、私はお金の存在をすっかり忘れていた。

街では、お金が必需品らしい。


「これがあれば一ヶ月ぐらい安い宿に泊まって、しばらく生活もできるはずだ。

その間にちゃんと仕事を見つけて、給料をもらえれば心配することはないぞ。

お金の使い方、覚えてる?後でちゃんと練習しな」


「だいたい忘れかけてるよ。後でもう一回教えて。何というお金だっけ?く、く、くれん、だっけ?」


「セルだよ、セル。忘れかけてるより、すっかり頭から消えたんじゃないか」

おじいちゃんが大きなため息をついた。


「ほら、これは一セル」


「これは一セル」


「これは十セル」


「これは十セル」


「これは五十セル」


「これは五十セル」


「……金、要らんか?」


「めちゃ要るに決まってるでしょう!!」


…………

……


「よし!覚えた!ありがとう、おじいちゃん。

でもさっき一ヶ月ぐらい生活できるって言っていたけど、それって二十年前のことじゃない?

今の相場はどうなっているの?

全然変わっていないの?

本当に足りるの?

二十年経った今でも五セルで果物を三個買えるの?

十セルで果物三個の可能性はない?

本当に十セルでご飯を食べられるの?

二十セルの可能性は?

どうなの、これ?」


「……知らんわ。足りなかったら自分でなんとかしろ。自分で稼げ!」


「えっ!無責任なことを言わないでよ!足りなかったら私どうするのよ!?」


「知らん」


「……シクシク」


「泣いても無駄だぞ」


「……」


涙作戦失敗……




四日後、村を出る日がついにやって来た。


今日もいつも通り、まだ暗い朝の時間に起き、水を汲み、朝ご飯を作る。

ブランちゃんと鹿ちゃんたちにお別れをして、おじいちゃんのことと村のことを頼んだ。

これからおじいちゃんと一緒に朝ごはんを食べたら、出発するのだ。


「リーマ、元気でな。道中気を付けるようにな。森で動物や植物と遊んでばかりいないでちゃんと街に行くんだぞ。いってらっしゃい」


私は自分の荷物を背負いながら、おじいちゃんにお別れをした。


「うん!おじいちゃんも元気でね!じゃね!行ってくる!」


意外とあっさりしたお別れだった。


背にはかばんと弓矢。

腰には短剣。

準備満タンだ。



この瞬間から――


私はおじいちゃんと一緒じゃなくなる。


……そんな不安と寂しさと楽しみを胸に抱えながら、


私は一歩、また一歩、歩き続けた。



……村の外って、どんなものかな。


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