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社畜思考

     九

 十日が過ぎた。

 朝の光が窓から差し込んでいた。豪華な天井を見つめる。

 目がチカチカした。

(社畜隠れゲーマーに明るく豪華な部屋は似合わねえ。居心地が悪過ぎだ)

 朝一発目のボヤキを入れる。

 いつの間にか豪華な寝間着に着かえさせられていた。寝落ちしたようだ。

 目をこすって考える。

(昨夜、寝る前のアンの一仕事だな。俺の小さなひよこも見られ放題か)

 三十五歳の俺は少し気恥ずかしくなった。

 気を取り直す。

(俺は糞ゲー地獄で生き延びると誓った)

「ステータス」

 声に出し朝の日課と定めたステータスの確認をする。

「何だ。何が起こったんだ」

 上半身だけ飛び起きた。ステータスを見つめる。

 ステータス

氏名:カルロス・ルースター ルースター王国 第六王子(秘匿:神園裕也:国士無双)

 性別:男 5歳

(以下日本語表記)

 加護:女神の加護(秘匿:女神エルピス希望の星)

 レベル:10+1(秘匿555/∞)

 HP:30+1(秘匿3000/∞)

 MP:20+1(秘匿2000/∞)

 魔法適正:火2、風2、水2、地2、光2、闇2、雷2、氷2、聖2、

(秘匿:魔法適正:火∞、風∞、水∞、地∞、光∞、闇∞、雷∞、氷∞、聖∞、無属性∞、、生活∞、創造∞、付与∞、全制限解除∞)

 武力:10+1(秘匿1000/∞)

 ……etc

(秘匿機能付き、文字修正、数値修正が可能です)

(部外者開示は実数のみ。秘匿数値は開示不可)

 秘匿数値の桁が、変わっている。0が、零が一つ多い。

(異世界ではこれが普通か? いや違うだろう)

 社畜隠れゲーマー特有の危険察知能力の針が振り切る。鳥肌が立った。

(絶対、他人に知られてはいけない情報だ)

 鳥肌が収まると少し落ち着いてきた。

 礼儀を欠いては社畜隠れゲーマーは生き残れない。

 俺はすぐさま窓辺に膝まずいた。頭を垂れ小さな手を合わせた。

(女神エスピル様、過分な加護と能力を感謝いたします。『天使を探せ』は過酷な世界ですが生き残って見せます。これからもご助力ください)

 感謝をささげ終わり柔らかいソファーに座った。

 少し呆けた。

 無為な時間が過ぎる。

 時間の中で社畜隠れゲーマー的な思考が働いた。

(あまりにもチートだ。なぜだ?)

 恐らく女神の恩恵を最大限に使用して、やっと乗り切る難題が起こるいう啓示か? カルロスの地力が高いのか? 合わせ考えると、それだけ過酷な世界だとの事実が残る。

(努力し、警戒しろ)

 三十五年ゲーマーを隠し生き延びた勘がそう告げていた。

 考えてみれば、王は聖紋授印する男児を多く設け、戦力を整えなければ魔人や魔王に対抗しえない。色狂いではなく現実的選択肢として子沢山なだけなのかもしれない。だが生まれた王子にとっては必然の激しい王位継承争いとなる。

 魔人と戦うには優秀な王子が欲しい、だが優秀な王子は王位継承争から兄弟に殺されやすい。

(糞、設定だな)

 一瞬に雷が頭に直撃するに似たショックが駆けめぐった。

『天使を探せ』場面の一コマが頭に浮かぶ。主人公の残念王子が兄弟の死を嘆く場面だ。

「第六子王子が生きていればよかったのだが。優秀なのに七歳の誕生会で死んでしまった」

 俺は二年後の誕生会で確実に死ぬ。

 確か……パーティー会場で母子共に葬られる運命だ。

 うつむき落ち込む。情報が浮かび上がった。

 正確には魔人の襲撃を受ける。阿鼻叫喚のなか騎士や王が応戦する。

 手薄になった会場で毒殺される。

 当然、犯人は不明だ。

 王位継承問題のあおりか?

 俺が転生せずともカルロスの持つステータスが、他の王子より秀でている可能性が高い。

(金髪坊主の能力数値が露見したのか? でないと殺されないわな)

 異端者は露見時に社会に切られてしまう。出る杭は打たれる。今いる異世界では抹殺対象だ。

(普通、王妃と王子を毒殺するか? どんだけ地獄なんだよ)

 神園裕也にとって家族が生きている意味合いは大きかった。

(守れるものなら守りたい。そして守るだけの力を頂いた)

 再び空の見える窓辺に寄った。

 何にせよ、生き残る希望と能力をくれた女神さまには感謝を捧げよう。

 膝をつき祈った。

(女神様、生き延びるために抗ってみます)

 俺には運命を変える力があるはずだ。

 今から俺の行動と選択に、俺たち親子兄弟の命が懸かっている。

 静かなノックが三回聞こえた。アンが来たのだろう。

 思考をカルロス仕様に切り替える。

(今からお子様タイムだ。フルチンも仕方ない……)



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