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エクストラ ゼロ  作者: at-tky
18/18

手に入れたもの

3章最後です。

おまたせした分だけ、文量が多くなっています。


では、どうぞ~

「あのリッチが学園の創始者だとはな。まぁ……それで色々納得できるけどな」

 アリストの話を聞き終えたギルベルが声を上げる。

 その表情は驚きと納得が半々。


「色々って何よ?」

 コスモはアリストの話の流れについていけず、ギルベルに補足を促す。


「あぁ、そういやぁ、気絶してたんだったな。……戦闘の様子がな。俺らなんていつでも殺せる感じだったんだよ。俺なんか魔術無しで相手をしてもらって、手も足も出なかったぜ」

 その光景を思い出したのかギルベルの表情は少しだけ暗くなる。

 ここ1ヶ月、成長度合いで言えばギルベルはこの学園の誰よりも"伸びていた"。

 事実、1ヶ月前にはほとんどウォーレンへと届かなかった剣も、今は対等一歩手前まで打ち合える所まできていた。

 ……今回の一件はギルベルの自信を奪い、心に少し暗い影を落とす。

 彼はS級の魔族相手にやり合えると彼自身がまだ思っているからこそ、その感情を抱くのだと気づかない。

 それは……ある意味で心の強さだ。


「いやいや、そもそもあんな馬鹿げた存在に剣を向けられるだけで、称賛に値するだろう」

 だからこそアリストは正当に彼を評価する。

 彼女は彼の事を自信過剰だとは笑わない。

 あの絶望を味わってまだ先に進もうとするその姿はまさしく武人だった。


「というか、あれと本当に撃ち合ったの? このウォーレン?」

 コスモはアリストの膝の上で寝こけているウォーレンを指さしながら、最初の重圧に当てられた時の事を思い出す。

 存在そのものが闇。

 恐怖が蘇り少しだけ身体が震える。

 リッチに害意がなかったとしても、……コスモにとってあれは絶対に触れてはいけない化け物だ。


「あぁ、なんかやったら凄そうな杖出して、狂ったように魔術ぶっ放してたぜ。あれは魔術科の教師のアリエッタの比じゃねぇ」

 ギルベルが知っている魔術師の比較対象。

 それはただの学園の一教師。

 だが、ここはルーエンスで、アリエッタはその学園の実力派の教師だ。

 聞くものが聞けば、ギルベルの言葉は耳を疑うようなセリフだった。


「まぁ、同意だ。私とてアリエッタ先生の魔術の全てを知っているわけではないが、それでもウォーレンの方が数段上だと思う。たぶん、勝負にすらならない」

 彼女はここ一ヶ月、アリエッタのスタイルに自分を重ねていた。

 だから、気付く。

 アリエッタがいるのはまだその道の途中だと。

 ……アリストが浮かべるのは微かな喜色。

 近づいては遠くなるウォーレンという存在。

(――楽しいじゃないか)


「……最初からずっとそれ使ってればいいのに」

 コスモはアリストがウォーレンに対して贔屓目である事を良く知っている。

 さが、しかし彼らの口ぶりから、本当にウォーレンがリッチと対等に渡り合ったのだと分かる。

 ……彼女が抱いたのは微かな恐怖心。

 だが、それは言葉に出さない。2人にも悟らせない。


「色々と制約があるのだと思われる。実際、今も杖自体にはほとんど残ってないしな」

 アリストがウォーレンの手の中にある杖へと目をやる。あの時感じた禍々しいまでの魔力はもう感じない。

 今の姿だけ見れば、実用品と云うよりも芸術品の一種に見える。


「まぁ、確かにいつでもあんなもんぶっ放されちゃ、世の中の魔術師はたまったもんじゃねぇな」

 門外漢のギルベルでもそれくらいは分かる。

 ウォーレンという存在は魔力が無い事でギリギリ一般の常識の中に収まっていた。

 魔力を得たウォーレンは常識外の"異質"だった。

 ギルベルが幼い頃から夢見ていた英雄譚の主人公達と比べても遜色が無い。

 彼の奥歯がギリギリと音を立てる。

(……俺は奴を追うぜ)


「気絶してたのが少し勿体無く感じるわ」

 コスモの魔術の捉え方はアリストとは異なる。

 アリストが現象第一で魔術を捉えるとしたら、コスモは魔術式の美しさで魔術を捉える。

 そのため、彼女がウォーレンを本格的に認めたのは迷宮内で、芸術品の様な魔術式を見てからだ。

(もしも、上級魔術が飛び交うような状況だったら……)


 コスモは背筋がゾクリとする。

 ここから先は全く未知の領域。


「まぁ、このメンツでこの先もやってりゃ、また見れんだろ?」

「同意だな」

 何気なくギルベルが口から吐き出した言葉に、アリストが追従する。

 彼らにとってはこれからもウォーレンを追う事は決定事項だ。

 何故ならば、それは酷く魅力的な事だからだ。

 彼らの主観で考えるならば、その話はコスモにとっても魅力的な話となっている。

 だから、彼らにはそんな未来しか見えていない。

 ウォーレンの迷惑も全く考えていない。


「え、ちょっとそれ私も数に入ってるの!?」

「ん? 入らないのか?」

 アリストの瞳は純粋に疑問の色を浮かべている。

 彼女にはコスモの事情など一切見えていない。

 ギルベルも全く同様の様子だ。

 コスモは彼らの様子を見て深くため息をついていた。


「いやいや、どう考えても私じゃ力不足でしょ!? あんただってギルベルとウォーレンに着いて行くのは精一杯なのに。……私じゃ無理よ」

 それはある側面から見れば正論だった。

 著しく実力が劣ったものがPTにいる場合、役割が上手く"回らなくなる"。


「まぁ、実力的にはそうなんだろうけどな。PTっつーのはそういった物だけで測れねぇと思うぜ。馬鹿な俺だって人間ってものを少しは知ってる。……S級の魔族との戦いにいきなり巻き込まれて、死ぬほど怖い目にあって、死にかけて。なのにてめぇは恨み言一つ言わねえ。そんな奴は少なくとも俺の知人にはお前以外いねぇよ」

 流石に言っていて照れくさくなったのか、ギルベルはそっぽを向いている。

 ギルベルは口ではコスモの実力は低いと言った。

 しかし、内心ではそこまでの事は思っていない。

 もしも、コスモがいない場合、この3人ではバランスが非常に悪い。

 ウォーレン、アリストの両者共、回復にも回れるが、ウォーレンは魔力量の制約の問題が、アリストには適正の問題が浮上する。

 アリストが今後磨くべきは彼女の特性を生かしたものだ。

 それが何なのか、ギルベルには分かっていないが、少なくとも回復役で無いことは確かだ。

 それならば、ギルベルの基準で言う"信頼出来る人間"に背中を預けた方が良い。


「ふっふっふっ、コスモは私の誇れる親友だからな! ギルベルもようやくその魅力に……」

 アリストが全てを言い終わる前に、コスモのショートロッドがアリストの後頭部を襲う。

 ウォーレンを抱えている状態で身動きが取れず、アリストは甘んじてその攻撃を受ける。


「アリスト、口開いたかと思えば、あんた馬鹿なの?」

 ぜぇはぁと息を切らしながら、コスモはアリストを睨みつける。


「うむ、やはり口の悪さがマイナスポイントだな。しかし、ギルベルもだいたいは筋肉で出来てるし、気づかないんじゃないか?」

 アリストはさしてダメージを受けた様子もなく、ただありのままに彼女が思った事を口にする。

 彼女は優秀だし、頭の回転も早い。しかし、思慮深さが全くと言っていい程足りてなかった。


「おい、てめぇ。さりげなく俺の事、脳筋って言っただろ!? 泣かすぞ、このアマ!」

 ギルベルも口は回るが言葉程の迫力は無い。

 なぜなら、ここにいるメンバーの中で一番の疲労を負っているのが彼だからだ。


「ふっふっふ、口の聞き方には気をつけるんだな、ギルベルよ。貴様の得物は私の手の内にある」

 弱っているギルベルを相手にアリストは遠慮なく、切り札を切る。

 彼女が背後から引きずるように持ち出したのは、ギルベルが撤退時に置いて行った彼の愛剣。


「おぉ、俺の大剣! つーか、てめぇの話だとリッチに一緒に送ってもらったんだろ!? てめぇ、何もしてねぇじゃねえか!」

 ワープなしに運んでもらったのならギルベルも感謝はする。

 それはただの女が運ぶには重過ぎる代物だからだ。


「いやいや、リッチに頼み込んださ。『戦友の形見だ、こいつも頼む』と」

 真面目そのものの顔でギルベルに言い放つアリストだが、その口の端が微かに上がっている事に当然ながらギルベルも気づく。


「……形見とか、あっさり殺してんじゃねぇよ! この女、マジであり得ねぇぜ……」

 声を発する度にギルベルは自分の身体から微かに軋む音がするのを感じた。

 疲れ切った身体のため、それ以上の追及は諦める。


「はっはっはっ、冗談だ。さすがに私もそれぐらいは弁えてる」

 ほれとギルベルに差し出されたのは彼と共に戦い続けた大剣。

 装飾などは一切なく、実用一辺倒のもの。

 彼は愛剣をそっと撫でる。

 ……その刀身には無数の傷と、微かなヒビが入っていた。

(まぁ、あんだけ無理に打ち合えば、こうなるか)


 吐き出したため息は彼自身の未熟な腕を嘆いたものだったのか。

 ……ギルベルはその時、ふいに空気のゆらぎを感じた。


「うーん」

 アリストの膝上で意識を失っていたウォーレンが目を醒ました。

 3人が彼に目を向け労いの言葉をかけようとする。

 そんな注目の中、ウォーレンは立ち上がろうとした。

 しかし、身体に力が入らないのか、バランスを失い、アリストの膝の中に再び倒れ込む。


「あぁ、これ三半規管やられてますねぇ。ちょっと動けないです」

 密閉された空間からウォーレンのくぐもった声が聞こえる。

 アリストは少しだけ顔を赤くするが、それよりも先にコスモが吠える。


「あんた、どこに顔突っ込んでんのよ! 冷静に分析してる場合じゃないでしょ!? ふざけんじゃないわよ!? 早くそこをどきなさいよ!」

 言うが早いがコスモはウォーレンの首を掴み、アリストの膝の中に顔を埋めていたウォーレンを引き剥がす。


「おいおい、コスモ。そんなに揺らすんじゃない。それはさすがにまずいと思うぞ。それに別に不快な訳では……」

 ウォーレンが膝上からいなくなり、なんとなく手持ち無沙汰になったアリストの手は名残惜しむかのようにウォーレンの服を軽く掴む。

 コスモは容赦なくアリストの手を振り払い、ウォーレンの身柄を確保する。


「……ほら、病み上がりなんだから、ここに横になってなさいよ」

 意識が未だにはっきりとしていないのか為すがままになるウォーレン。

 視界は未だ暗いまま、強引に身体を引っ張られ、横にされる。

 ……後頭部に先ほどのような柔らかい感触を感じた。

(先ほどの方が柔らかい気がしますねぇ)


 彼がその言葉を口に出さなかった事は、この日一番の賢明な判断であった。


「すみません。久々に戦闘で意識失いました……。うーん、ここはワープポールですね」

 後方から感じる特有の魔力の波長にウォーレンは口にする。


「……それで、オネスト氏とはどうなりました、委員長?」

 状況の説明をしようとしたアリストの機先を制して、ウォーレンが言葉を紡ぐ。


「「「え?」」」

 3人が上げるのは驚きの声。


「いやいや、おかしいだろ。ウォーレン、てめぇのその発言はどっから出てくるんだよ?」

 傷を負っても気配探知だけはギルベルも怠らない。

 だから、今の今までウォーレンが本当に意識を失っていた事は彼には分かっていた。

 彼は間違いなく、3人の会話を追えてはいない。


「あぁ、なるほど。失礼しました。私は直接魔術をぶつけ合ったので、だいたい把握してるんですが、確かに見てるだけだと分からないかもしれませんね」

 ウォーレンは掴み所の無い発言をする。


(いやいや、それはさすがにおかしいでしょ!?)

 なんとなく納得している2人の手前、コスモはその思いを口に出す事が出来ない。

 言葉通り解釈すれば、彼は魔術さえ交えれば相手の正体が分かるという事。

 ……相手がたとえ、生前とは全く異なった容姿をしていても。

(そもそも、オネストって何百年か前の人でしょ? 会ったこともない人でも分かるものなの?)


「ウォーレンはあのリッチが学園の創始者のオネスト氏だと分かっていたのか?」

 オネストと直接会話を交わしたアリストが話を切り出す。

 が、そもそもピンポイントでオネストの名前が出てくる時点で、その問いの答えは分かりきっていた。


「はい。会う前は5割ぐらいでしたが、魔術を撃ちあってからはほとんど確信してました」

 ウォーレンの雲を掴む様な回答は続く。


「ごめん、私の頭が悪いのか、全然ついていけない。5割の所から説明して」

 したり顔で頷いている脳筋のギルベルと、ウォーレンに傾心しているアリストは捨て置き、コスモはさらなる説明を求める。


「えーと、この迷宮って何が動力になってるか考えた事がありますか? 普通は大量の魔力を持った強力な魔石、もしくは魔力の溜まりやすいスポットが通説なんですが……」

 迷宮の仕組みはまだ解明されてはいない。

 しかし、一つだけはっきりとしている事がある。

 それは、生成と維持に膨大な魔力を必要とするという事。

 だから、迷宮は一部の例外を除きウォーレンの話した条件のどちらかに当てはまる。


「委員長とコスモさんは分かると思うんですが、ここって魔力溜まりではないんですよ。とすると魔石が有力になってくるのですが、その理由でもないと思ってました」

 ウォーレンはここで一呼吸を置く。

 視界はまだ戻らないため、目をつむり、コスモの膝に頭を預けたまま話を続ける。


「少し話を戻しますね。……迷宮の10階層に張られていた結界なんですが、あれ内側から外側に向けて張られたものなんですよ。供給源が迷宮奥になっていました」

 この事はアリストとコスモには理解出来た。

 もし、学園が危険区域を封印するという意味で結界を張るのならば、その理由も周知されていなければおかしいだろう。

 そもそも、そんな危険区域を学園の中に放置しておく理由がない。


「そうすると少しおかしいんですよ。迷宮って基本的にひらけているというか、人の侵入を大本から妨げる仕組みにはなってないので。外から封印するという逆の発想はあるんですけどね」

 アリストとコスモの思考をなぞる様にウォーレンが補足を続ける。

 ギルベルは既に思考する事を諦めていた。


「簡易迷宮の奥に内側から張られた偽装結界。……なんだかまるで、未熟な学生が踏み込まないように考慮されて張られたように思えませんか? まぁ、その考え方は多少踏み込みすぎてますが、なんらかの恣意的な働きが介在していたのは間違いないと思います」

 ふむと唸ったのはアリスト。


「ここから先は私しか分からないんですが……。あの結界に穴を開けるための魔術式。あれを結界に組み込んだのは結界を張った人間とは全く別の人間なんですね。……というか私の師が組み込んだものです。供給源を結界自体にして半永久的に動くようにしてますね」

 少しだけウォーレンの顔が苦笑いを浮かべたのがコスモにはやけに印象的だった。


「ウォーレンは師からその話を聞いていたのか?」

 事前にウォーレンからは情報共有はされていない。

 迷宮にあんな化け物が潜んでいて、それを仲間に共有していなかったのであればそれは酷い裏切りである。

(まぁ、あり得ないとは思うがな)


「いえ、あの人は基本的に昔の事は覚えてない人なので、術式組み込んだ事自体忘れていると思います。まぁ、師がここの学生だったのは50年ほど前なので、それも分かる気はするのですが……。ただ術式にあの人の癖が残っていたので、師が細工していたので間違いないと思います」

 間違いないとウォーレンは言い切った。

 彼のように自分の師の術式だと断言出来る魔術師はほとんど存在しないだろう。

 だが、アリストもコスモも彼の言う事に疑いは持たなかった。

 ウォーレンが魔術についてそういっているのならば、それが"事実"なのだ。

 この2人は、彼との付き合い方を理解しだしていた。


「師が10階層の先まで行っていたとしたら、その術式が残っているのは、かなり不思議なんですよね」

 ウォーレンは師の懐かしい気持ちで、師の性格に思いを馳せる。


「もし、魔石なり強力な魔物なり、なにか目的の物をあの人が見つけたら、たぶん不要になった術式は外すと思います」

(そう。意味が無い事はしない人でしたね)


「同様に手に負えないレベルの自体が発生したとしても、危険ですから、簡易的に奥へ進めるようにしたあの術式は外すと思います」

 もっともその簡易解除の術式ですら多くの学生は気づかないようですがと、ウォーレンが呟く。

 そこには少しだけ師に対する哀れみが含まれていた。

 元々の偽装結界自体は非常に高度な作りになっており、並の魔術師では到底解除できないものであった。

 しかし、ウォーレンの師が仕組んだ術式はきちんと解析さえ行えば、解除コードが入手出来る仕組みになっていた。

 彼の師は後の学生のためにわざわざあんな物を残したのだ。

 それを最初に見つけたのが、その弟子のウォーレンだというのだから、なんとも報われない話である。


「なので、あの先には師にとって頻繁に赴く程に、興味が引かれる何かがあったと推測出来るんですよ」

(……それが単なる魔石のはずがないんですよね)


「そして、師の術式が残っている時点で、おそらく現在進行形でそれは残っているのかなぁと」

 それが何なのか、ウォーレンは組み込まれた術式に解除コードを撃ちこむ際に考えた。

 もう半年以上も前の話だ。

(まさか自身の魔力の少なさが原因で、オネスト氏に今まで会えなかったと思うと残念な気持ちになりますね)


 この迷宮奥は、進む毎に探索の困難さを劇的に増していった。

 それは、深さも考慮に入れれば、ウォーレンが躊躇する程のものだった。

 だから、彼は今日の今日までオネストの元に辿りつけなかった。


「ようやく話が繋がった。迷宮を維持しているのは、莫大な魔力と明確な意志を持った何か。そして、それは人外というか魔族だという訳か」

 アリストが話をまとめる。

 しかし、ここまでオネストの話は一切出ていない。


「えぇ。それで、その魔族が師と遭遇して、なぜ"生きてられるか"というのが次の疑問なんですよね」

 ウォーレンはそう断言した。

 それを聞いた3人は驚愕を顔に浮かべる。

 ウォーレンの口ぶりからすると、まるで彼の師はあの強さのリッチすら凌駕しているという事になるからだ。

(50年前ってそりゃあ、俺達と一緒の学生って事だろ!? どんだけ化け物なんだよ、こいつの師匠は!?)


 ウォーレンにとって、彼の師とはそういう人物であり、それが当たり前だった。

 若かろうが、老いようが、そんな事は彼の師にはまるで関係ない。

 ウォーレンは3人の雰囲気にはまるで気づかずに話を続ける。


「友好的な魔族ぐらいしか可能性が思い当たらず、結局迷宮の記録を漁ったんですよ。それで、ようやくオネスト氏と繋がりました」

 ウォーレンは結論を前にして一呼吸置いた。

 だれかが息を飲む音が聞こえた。


「……この迷宮。出来たのはオネスト氏が没したとされた"後"なんですよ」


*************************************


 その後、ウォーレンはアリストから話を聞くと、疲れが出たようで再度眠りに落ちた。

 ウォーレンが動けるようになるまで迷宮を出る気にはなれず、ギルベル、アリスト、コスモの3人は他愛もない話を続けた。


 ギルベルは自身の故郷の話や彼が見る壮大な夢の話。

 アリストはウォーレンの戦いの話やギルベルに引きずられるように語ってしまった彼女のまだ曖昧な将来の話。

 コスモは自身のくだらない学園入学の動機の話やウォーレンの魔術式の美しさの話。


 そして、3人の……いや、4人のこれからの話。


 ギルベルの豪快な笑い声が。

 アリストの時に冷静で、時に熱い言葉が。

 コスモの容赦のない毒舌が。

 ――迷宮に響き渡る。


 ウォーレンの無事が確認出来た事でギルベルは背負っていた緊張が解けていた。

 次に彼の中に蘇ったのは死と隣合わせだった戦いの余韻。

(こいつらと過ごしてりゃあ、最高にスリリングな日常が送れるかもしれねぇな!)


 アリストは止めどなく脳裏に浮かぶ、ウォーレンの魔術に思いを馳せた。

 オネストはあの戦いをウォーレンの用意した舞台だと言った。

(いつか私もウォーレンに見せれるような魔術を……)


 コスモの手がゆっくりと膝の上に乗ったウォーレンの頭を撫でる。

 ウォーレンは深く眠っているようで、全く反応がない。

(私はこんなの柄じゃないと思ってたんだけど……悪くはないかぁ)


 ……3人はそれぞれの未来に想いを馳せる。


 知らず知らずの内に手に入れたものを、眠れる青年は……まだ知らない。

これにて、一区切りつきました。

ここまで、お付き合い頂きありがとうございます。

もし、よろしければ、この時点での作品の評価を頂けると励みになります。


また、活動報告にて私にとっては"重大な"お知らせがあります。

そちらも目を通して頂けると非常に嬉しいです。


それでは次の話でまた会いましょうノ

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