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アーティフィシャル・2nd・ライフ  作者: ジョウ
第Ⅰ章

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九.トレーニングルーム

※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません※※

 クロエはサングラスをかけ、トレーニングルームのベンチに腰掛けていた。片手にはポップコーンの入った容器を持っていた。

 IKGビル地下2階のトレーニングルームでは、キリコと(けん)が練習試合を行っていた。二人の稽古は傍から見ると取っ組み合いの喧嘩そのものだった。


 キリコはじりじりと健との間合いを詰め、襟首(えりくび)(つか)もうと一気に健の懐に攻め入った。健は向かってくるキリコの肩を掴み、自分の腰に引っ掛けて左のほうへキリコを投げ飛ばしながら回転させると、肩を掴んでいた右腕をそのまま首に回し、立ったまま背後からキリコの首を締め上げようとした。

 キリコは左腕の(ひじ)で真後ろの健に勢いよく肘鉄を入れた。健がそれをよけた拍子に腕の力が緩むと、キリコは即座に首にかかっていた健の腕を両手で掴み、勢いよく一本背負いで健を前方に投げ飛ばした。そして床に倒れた健の上に素早く馬乗りになり、健の首元に自分の腕を交差しひと息に締め上げる手前で動きを止めた。

 10分以上かけた試合にようやく勝敗がつくと、二人はそのまま はぁはぁ、と息を切らしながら何秒か見つめ合った。キリコの汗がこめかみを伝い、健の頬の上に滴り落ちた。


 クロエは「わーお」と声を上げ、ポップコーンを口に入れた。


 キリコは大きく息を吐き立ち上がると「健さん、相手(えて)してくれてあいがとぐゎした」と言って健に手を差し出した。健はキリコの手を取り、「どういたしまして」と言いながら立ち上がった。

「二本目の戦闘スタイルは何を選んだ?」健が尋ねた。

「剣術にしようかち思うちょいもす。」

「…そうか。俺は剣術が得意じゃないから、ハンドウさんに相談して他に稽古を頼める人を探すといい。」

 健がそう言うとキリコは分かりもした、と(うなず)いた。


「専門スキルのほうは問題ない?」と続けて健が聞くと、「はい、先日”さしすせそ”ちゅうスキルを教わったので、問題ないです!」とキリコは自信たっぷりに答えた。

 健は黙ったまま、無表情でキリコを見つめた。


「そういえば、健さんの専門スキルは何じゃっとな?」キリコが尋ねると、健は少し間をおいて「…語学。」と答えた。

「へえー、そんたまた立派なもんじゃなあ。ないか国語話せっと?」キリコは目を輝かせた。健は表情を変えずに「十二。」と答えた。

「十二か国語?」キリコは目を丸くした。

「わぁー驚いた!大したもんじゃなあ。健さんは()っぜ優秀なんじゃなあ。」

 キリコは陽気に言いながら、健の背中を叩いた。健はまた少し間をおいて「…どうも。」と表情を変えずに礼を言った。



「クロエー、トレーニングルームは飲食禁止ですよー。」と声がした。クロエが声のするほうを向くと、有生(ゆい)がいた。


「あらー有生どうしたの?まだ金魚のフンしてるの?」クロエはポップコーンを口に運びながら言った。

「うん、キリコさんが色要員の合格認定をちゃんと貰えるまで、かな。」有生が答えた。

「…あんた、いつまでこんな便()()()やってるわけ?親の七光りでも使っていれば今ごろ幹部クラスにはなれたはずなのにぃ。」クロエは呆れながら言った。

「七光りなんて…使わないよ!」有生はそう言い返し、キリコと健を見つめた。クロエは有生の視線の先を見た。

「ひょっとして、まだ()()()のこと追っかけてるの?」

 有生は黙っていた。

「…だったら早く何とかしないと、バービーに取られちゃうわよ。」

 クロエはつんとした態度で言い放った。有生は何も言わずに頬を赤らめた。


 そこで「あークロさん、有生さん、こんちわ!いらしちょったとなー?」と言いながらキリコと健がこちらに向かってきた。クロエは手を上げて挨拶した。

 有生は二人に向かって会釈をしながら(…うん?)と、違和感を感じた。そして、キリコに近づきTシャツをまじまじと見つめた。


「キリコさん…あなたまさか、()()()巻いてます?」

「はい、激しか動きにはこいが一番(いっばん)じゃど!」キリコは笑って答えた。


 有生は慌てて「ダメですよ!色要員なのに、形が変わっちゃう!せっかく(みね) 不二子(ふじこ)みたいなおっぱいしてるのに!」と言ってすぐ、横に健がいたことに気が付き、ハッとして口を閉じた。


「…峰 不二子って、誰じゃっとな?」

 キリコが尋ねると、健がすかさず「ルパン三世のガールフレンド」と答えた。


 有生は恥ずかしさから、さらに顔が熱くなった。


「ルパン三世は知っちょいもすど。じゃっどん、峰 不二子って(だい)?」

 有生と健は顔を見合わせた。


 するとクロエが「あー、アニメは学習させたけど、セクシーなキャラは除外したのよ。ほら、私と被っちゃうから峰 不二子なんて特に。」

とポップコーンを口に運びながら言った。


(……………)



(………え?!)


 1ミリも被ってませんけど?、と有生は思った。健も押し黙っていた。キリコはそうやったか!と言って笑っていた。



 やがて、ハヤトが「キリコ姉さーん、交代でーす!」と言いながらトレーニングルームへ入ってきた。





引用

「ルパン三世」「峰不二子」©モンキー・パンチ/TMS・NTV


アーティフィシャル・2nd・ライフ©2025 ジョウ

本作品の内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

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