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アーティフィシャル・2nd・ライフ  作者: 藍瑳
筆やすめ:恋愛話(アクションなし)

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【スピンオフ・恋愛編】Ⅸ.3年後

*スピンオフは恋愛ストーリーのみ、アクションはありません。(本編の続きはスピンオフ・恋愛編のあとに順次掲載していく予定です)*


この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません

 宝探しイベント参加者と役員たちは、再び砂浜に集合していた。


「皆さま、四日間のサバイバル、大変お疲れ様でございました!それでは、お宝探しの結果を発表いたしまーす。」

 道端(みちはた)はそう言って、プロレス実況のように抑揚をつけながら賞品名と獲得者を順に読み上げていった。

 (りん)たちIKGの位置からは、アスカの姿を確認することはできなかった。


「…以上となります。毎年賞品獲得数1位のIKGさんがなんと今年はゼロでしたので、お宝が皆さまに広く行き渡ったのではないでしょうかぁー。」

 道端のコメントを聞いてクロエは、「そうだったの?やぁねぇ、ズルでもしてるんじゃないの?」とつぶやいていた。

(クロエだってドローン飛ばしてたし。)と凛は思った。

 サバイバル参加者たちはクロエが飛ばしていたドローンを、島内のセキュリティーか何かだと思っていた。


「それでは、また来年お会いしましょう!」という締め括りと共に、その年の懇親イベントはお開きとなった。



「はい、どうぞ。」といって、アリーはアスカに靴を差し出した。

小辻(こつじ)さん、ありがとう。昨日は先に帰ってごめん」アスカが小声で言った。

「ホントですよぉー、先輩。今度、埋め合わせしてくださいねー」アリーは甘えたような声で返した。


「なぁんだよ、アスカ。結局、お宝一つも見つけられなかったのかー?」同僚がからかうように声を掛けた。

 アスカは靴を履きながら笑い返した。そしてばらばらと散って行く参加者の向こう側に凛の姿を確認すると「見つけた。」とつぶやき駆け出した。



 (あ!あ!こっちに来るわよ!)クロエはドキドキし、隣に立つ昌磨(しょうま)の腕を絞るように握った。


 砂浜の向こうからアスカが駆け寄って来るのが見えた。

「おーアスカ君!」昌磨が声を掛けた。

 凛は嬉しそうにアスカを見た。昨晩アスカが来ていたということは、昌磨から聞いた。

「皆さん、お世話になりました。昌磨さん、今朝お借りした服、後で返しに行ってもいいっすか?」

「おう。いつでも来てくれ!」昌磨は威勢よく返した。

「今度改めて、みんなでお食事しましょう!」とスカイが声を掛けると、アスカはいいっすね、と答えた。そして最後に優しい眼差しを凛に向け、片膝をついて凜と向き合うように座った。


 (ちょっと!片膝ついてるわよ!まさかプロポーズでも始めるんじゃないでしょうね!)クロエはさらにドキドキした。


「凛さん、また会いたいんで。連絡先、俺に教えてもらえませんか?」アスカが笑いながら言うと、凛は「うんいいよ!」と即答した。


 (え!あんたたち、まだその段階なの?)クロエは拍子抜けした気分になった。


「あなた、アスカ君っていうの?初めまして。天城(あまき) クロエです。クロエと呼んでね。」

 クロエはそう言って手を差し出し握手を求めた。アスカは立ち上がると初めまして、と言ってクロエと握手を交わした。

 同時にアスカは手の中に、こっそりと名刺を握らされていることに気が付いた。


「あなたの()()()、ファンになっちゃいそうよ。凛に会いに来る時は、連絡してちょうだい。」

 クロエはそう言い、ウィンクした。アスカは了解す。と笑って答えた。



 以来、アスカは休みの日になると必ず、凛に会いにIKGのある式呉島(しぐれじま)を訪れた。


 やがて社員用のレジデンス(居住区)に部外者は立ち入ることが出来ないと分かると、アスカはすんなりとIKGへ転職した。(クロエや昌磨、スカイが転職をごり押ししたのは言うまでもない。)


 そしてIKGの社員になって初めて、凛の()()()の秘密を知ることとなった。


 二周目はそのプログラミングされた人格ゆえに危険を冒しやすく、短命の傾向にあると知ったアスカは、ならばせめてその間だけでも一緒に過ごしたいからと、凛にプロポーズした。(アスカはなぜか昌磨に結婚の承諾をもらいに行っていた。)


 アスカは凛と出会ってから2か月で転職、3か月目には結婚を決めた。あの日、アスカが凛の手足になると言った瞬間から二人の交際は始まっていたように思えた。二人は例の無人島でこじんまりと式を挙げた。ちなみに、結婚式の司会進行はHPIの道端が務めた。

 アスカはそのときも、凛を背負って再びあの岩山を訪れた。





 それから3年が経ち、現在に至る―――




 アスカは音を立てずにそっと玄関のドアを開けた。時刻は午前2時を回っていた。

 リビングに進むと、小さな明かりをひとつ灯してパソコンに向かう凛の姿があった。凛はアスカの帰宅に気づくと「あ、おかえりー。もうこんな時間かぁ」と言って壁に掛かった時計を見上げた。


 アスカは無言で近づき、凛を車いすの後ろから抱きしめた。そして凛の右肩に顔をうずめ、はぁーっ、と、消沈した様子で深い溜息をついた。凛はアスカの腕にそっと手を載せながらすこし右に振り向き、肩に乗っているアスカのドレッド・ヘアに自分の頭を寄せた。


「…辛いもの見た?」凛は慰めるようにささやいた。



 アスカはごく稀ではあるが死体を目にしたとき、凜を失うのではないかという漠然とした不安感に襲われるときがあった。

 そんな日は一秒でも早く家に帰り、凛の生存を確認しないと心が落ち着かなかった。アスカの過去のさまざまな経験がトラウマとなり、凛を想う気持ちに影響を及ぼしているのだろうと精神科医は分析していた。

 凛はアスカが今日は()()()だ、と思った。


「アスカー、大丈夫だよ。」

 凛はアスカに明るく声を掛けた。アスカは死んだ魚のような目をしながら少し顔を上げた。


「アスカも私も、まだ、生きてるよ。」凛はアスカに微笑みかけた。

 アスカは凛の顔を見つめ返しながら徐々に生気を取り戻していき、「…あ、そうか」とつぶやくと、ようやく安堵した表情になった。


「おかえり。」凛が笑顔で言った。

「ただいま。」アスカもようやく笑顔になった。もう寝る?と尋ねると、凛が(うなず)いた。

 アスカはそっと凛を抱きかかえ、立ち上がった。


「ねぇ、アスカ、先にシャワー浴びてきたら?なんか、ほんのり磯の香りがするよ。」

 凛は抱きかかえられたままアスカの首に手をまわし、クンクンと匂いを嗅いだ。

 アスカは冗談まじりに「いや、もうあの時みたいに我慢しない」と言って笑った。「ん?何を?いつの話?」凛はきょとんとしながら尋ねた。

「海泳いで会いに行ったあとの、()()」とささやき、アスカは凛の唇にゆっくりと自分の唇を重ね合わせた。そして全身で愛情を伝えるかのように何度も、優しく、凛の唇を吸い上げた。

 凛は目を開けていた。キスをしているときのアスカの伏し目がちな顔や長いまつげ、温かい舌の感触、次第に荒くなっていく呼吸を観察しているのが好きだった。

 それはいつも、初めての時みたいにどきどきわくわくした。


 アスカはそのまま、凛を抱え寝室へと向かっていった。




 アスカがキリコらと共に、一美(ひとみ)海運へ潜入した夜の出来事であった。






― 【スピンオフ・恋愛編】 おわり ―

※【スピンオフ・恋愛編】を最後までお読みいただきありがとうございました。本編も引き続きお楽しみ頂けましたら幸いです※


アーティフィシャル・2nd・ライフ©2025

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