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第3話 言えなかった言葉、聞けなかった気持ち

「れお!お前のとこママがいないからって、俺のママたぶらかすなよ。

 泥棒じゃないか!」

「?りく、俺は今真凛先生一筋で必死に口説いてるんだぞ。二股なんて真凛に失礼じゃないか!」

「違う、お前じゃない!お前のパパさん!」

 なんだ、漫才でも始めたのか?と注目していると…

「なんだと!?俺のパパだって死んだママ一筋なんだよ。そんなこと、するわけないじゃん!」

「でも、パパが言ってたもん。デパートで一緒に買い物してるのを見たって。俺からママを取るでなければ、お客さんにしてお金もらおうとしてるって。やめさせてよ、お願い!」

「おい!うちのパパをバカにするなよ!」


 れおくんは目を見開き思わずりくくんに手を出してしまう。

 りくくんも負けじと応戦し、取っ組み合いになってしまった。

「待って!待って!!お互い別々の場所で話そう!」

 俺はりくくん、真凛先生はれおくんに離れて話を聞いた。

「りくくん!パパもママもりくくんが大好きだし、2人も仲良しなんだろ?大丈夫だよ。」

「れおくん。大好きなパパの悪口言われたと思って悲しかったんだよね。でも、手が出るのはよくないよね。」

 保護者のトラブルかもと感じた安西園長がお互いの保護者に連絡を入れる。

「これは子どもだけの話ではなさそうね。まずは大人同士、きちんと話しましょう。」


 りくくんパパと玲央名さんがそろい、会議室で話を始まった。

 りくくんのパパが来て早々怒っているように見える。

「先生、このホストがうちの妻をたぶらかして一緒に買い物してたらしいんですよ。こんな保護者の家庭壊すやつ退園にしてください。」

 そ、それは確かにお父さんが怒るのは分かる。

 でも、玲央名さんがそんな相手の家庭を壊したり傷つけるようなことはしないと思う。昨日の挙動からは感じられない。ただ玲央名さんは何も反論しないままだ。時計の秒針の音がやけに響いている。

 この冷戦状態は一体どうしたら…


 会議室の慌ただしいノックがこの沈黙を救ってくれた。

「遅くなってすみません!りくの母です!」

 救世主が現れた!りくくんのお母さんだ!

「あなた、不安にさせてごめんなさい!2日早くになっちゃったんだけど、お誕生日プレゼント!」

 大事そうに抱えてた包みはりくくんパパへのプレゼントだったんだ。

「私があなたの好きなもの本当に渡せてるか不安になって、れおくんパパに相談したの。りくにないしょねって言ってたのも、誕生日に驚かせたいからっていうのを私がきちんと伝えられてなかったし、本当ごめんなさい!」

 りくくんパパは驚いてしばらく沈黙してようやく口を開いた。

「ほ、本当なのかそれ?俺に愛想つかしたんじゃ?」

「何言ってるのよ!いつも仕事も頑張ってくれて、りくにとっても良いパパで大好きよ!」

 りくくんパパは涙をこらえている様子だった。


「お、俺の方こそ信用せずに突っ走ってごめん。開けていい?」

りくくんパパが開けると、本革の上品なシステム手帳だった。

「すごく嬉しい!大切にするよ!本当は今までも嬉しかったのにもらうのが当たり前になってしまって不安にさせたかもしれない。俺、甘えてたんだな。本当にごめん。」

 会議室の空気が柔らかくなった。りくくんパパはまずりくくんを抱き上げた。

「りく、ママがパパを嫌いになったって勘違いしていたみたいだ。ごめんな。不安にさせること言って。ずっと大好きなりくと一緒だよ。」

 りくくんの顔には安心した表情が浮かび、

「僕がママに内緒って言われたのに、約束破ってパパに言ったからごめんなさい。ママがいなくなるかもって不安になったんだ。」

 りくくんママも駆け寄って一緒に抱擁した。

「りく、あなたにも不安な気持ちにさせてごめんね。ママもパパもりくが大好きよ。」


 ーそうか、みんな家族それぞれが大好きだけど、みんなの思いやりが少しタイミングがずれてしまったんだろうな。でもきちんと話し合えば、こんな愛にあふれた親子になれるんだ。


 りくくんはハッとしてれおくんに近づく。

「れお、お前とお前のパパさんにひどいこと言ってごめん。また遊んでくれる?」

「…もちろん!俺もついカッとなって手を出してごめん。りくがそれだけパパとママが大好きで、俺に勇気を出して言ったんだろ?りくはかっこいいよ。」と頭ポンポンしてりくくんは照れた。


 ーれおくん、ホストの才覚がもう出ているよ。


 それを見たりくくんのパパも玲央名さんに深々と頭を下げた。

「立花さん、本当に申し訳ございませんでした。俺はその前もチャラい職業と言って傷つけてしまいました。」

 玲央名さんは微笑みを浮かべて優しく伝えた。

「いえいえ。勘違いさせる僕の行動も配慮に欠けてました。申し訳ございません。りくくんの心に不安の影を落とすつもりは、毛頭ありませんでした。ママさんとても考えてたんですよ。朝も送り迎えしてくれるし、子どものことも愛してくれる最高のパパだから本当に喜んでもらいたいって。」

 それを聞いたりくくんパパはこらえきれず涙を流していた。

「本当にありがとうございます。パパ同士…これからもよろしくお願いします。」

 そう言って、パパ同士は固く握手を交わした。


「良かった。思っていることを口に出すことは本当に大切ですね。”分かってくれるだろう”っていうのは甘え…私も学びになりました。」真凛先生は穏やかな表情で親子たちを見つめる。


「家族を思うからこそ、不安になって他人を傷つけてしまう人はいるかもしれないわね。根っからの悪人て案外少ないのかも。」


 園長先生のその言葉におれはハッとした。

 ——たしかに、そうかもしれない。不安とか、満たされない気持ちが、誰かを責める言葉に変わることがある。

 それって、あのときの俺と一緒じゃないか——

 いや、もしかしたら国民の声もそうだったのかもしれない。怒りや批判の裏に、不安や孤独がある。

 届かない制度に、追い詰められていたのかもしれない。

 真凛先生や園長の言葉が、それを教えてくれた。

 そして改めて決意する。

 だったら、俺がやるべきことはただ一つだ!

 誰かの声が怒りに変わる前に、ちゃんと届く仕組みを作ること。

 子どもも、大人も。不安を飲み込まないで済む社会を。

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