第2話 実習開始!クセスゴ園児たちと保育現場の真実
保育園出向の開始です。大我を待ち受けるものは…キャラ濃い園児たち!
「税金泥棒は、まず手を洗え」
――保育士初日、開口一番それだった。
出向先の保育園。
テキストは復習した、動画も見た、エプロンも用意した。
完璧なはずだった。
「初めまして、増子大我です!全力で――」 「靴履き替えて消毒しろって言ってんだろ!」
目の前には、天使みたいに可愛い保育士。
中身は鬼軍曹だった。
「高梨真凛。あんたをしごく担当だ。覚悟しとけ」
……ラブコメ、開始3秒で終了。
「はじめまして、園長の安西です」
この人だけが救いだった。
「テレビのおバカ議員だー!」
登園してきた子どもにいきなり刺される。
(このガキ……いや違う、子どもだ)
「タイガー先生だよー。おはよう!」
笑顔を作る。
だが保護者の目はもっと冷たい。
無視、ため息、露骨な嫌悪。
――退職代行、初日で使える?
その時だった。
「ママと一緒がいい~!」
泣き崩れる女の子。
どうすればいいか分からない俺の横を、一人の男の子が通り過ぎた。
「寂しいよな。でもここまで来れたんだろ?すごいじゃん」
涙が止まる。
「好きな遊びは?」 「お絵描き…」 「じゃあ行こう」
手を引いて連れていく。
……え、何それ。プロ?
「うちのれおです」
現れたのは、柔らかな笑顔の男性。
「立花玲央名。ホストをしています」
納得した。対応がプロすぎる。
「新しい先生か。まあ悪くないけど、俺とパパの方が上かな」
れおくんが腕を組む。
……五歳児にマウント取られた。
玲央名さんは母親たちに囲まれていた。
「イケメン!」「目の保養!」
その一方で、「ホストなんて」とひそひそ声も飛ぶ。
それでも彼は笑っていた。
「パパの仕事は、人を笑顔にする仕事なんだ」
れおくんの言葉に、空気が変わる。
……なんだこの親子、強すぎる。
保育室は戦場だった。
走る、泣く、転ぶ、笑う。
しかも濃い。
演出家気取りでダメ出ししてくる子。
難しい本を読みながら会話拒否する子。
俺はただ追いかけるだけで限界だった。
その中で、真凛先生は別の子にしゃがみこんでいた。
「痛かったな。ばいきんバイバイしよ。どれにする?」
泣いていた子が、笑う。
――さっき俺に怒鳴った人と同一人物か?
「抜けるから見とけよ」
はい、同一人物です。
昼休み、職員室。
「体力だけはあるな」
真凛先生が言う。
それ、褒めてるのか?
「人手が足りなくてね」
園長が説明する。
「もう一人は休職中。公立だから配置人数も決まってるの」
真凛先生が吐き捨てた。
「現場知らないやつが決めてんだよ。だからムカつくんだ」
――何も言えなかった。
「でもまあ、今日のあんたはマシだった」
不器用な一言。
少しだけ、救われた。
夕方。
最後に残ったのは、たつきくん。
母親は保育士で、迎えが遅いらしい。
「ママね、いつも謝るんだ。遅くなってごめんって」
胸がざわつく。
「悪いことしてないのに、なんで謝るのかな」
……昔の俺だ。
「たぶんね、本当は“ありがとう”って言いたいんだと思う」
たつきくんは静かに頷いた。
扉が開く。
「ごめんなさい、遅くなって――」
「ママ、お仕事お疲れ様!」
たつきくんが走る。
俺は思わず口を開いていた。
「いつもありがとうございます。たつきくん、ちゃんと分かってます」
母親の目に涙が浮かぶ。
「ママ、これ」
差し出された絵。
笑顔の二人と、拙い文字。
『いつもありがとう だいすき』
「ありがとう……!」
抱きしめる母親。
その光景に、胸が詰まる。
――俺も、言いたかったのかもしれない。
怒鳴られて、嫌われて、走り回って終わった一日。
正直、最悪だ。
でも。
「……なんでだよ」
帰ろうとした足が、止まる。
「明日も来る気しかしねぇ」
保育士、向いてない。
でも――逃げるのは、もっと向いてないらしい。
大丈夫だ、大我!むしろ第一印象最悪から始まる恋愛ものの方が多い!




