45話 飛べなくなった不死鳥
ティナたちは東京に向けて進行していた。
みんなは移動中も沈黙の時間を過ごしていた。
(大丈夫…やれる…私はやれる…。)
するとミナが手を握ってきた。
「絶対勝てるから大丈夫。」
「うん。」
「そろそろ東京目前だ!」
急に天候が変わった。
『tears』に忠誠を誓った民兵と国側の民兵が既に戦いを始めていた。
「『tears』の進行のためになんとしても道を開くんだ!命に変えても!!」
京都・滋賀・三重・愛知・大阪の民兵たちだった。
「みんな…。」
「本格的に最終決戦…か。」
すると上空から爆音が響いた。
上空を見上げると、無数の戦闘機が頭上を横切った。
先頭に見えるのは赤い戦闘機『フェニックス』だった。
無線機からジュリの声が聞こえた。
「ティナ聞こえるか?」
「ジュリ。聞こえるよ。」
「ようやくだな。」
「ええ。」
「道は我々が絶対に切り開く。だから安心して戦え。決して後ろを振り向くなよ。」
「わかった…。」
「それじゃあな。」
「うん。」
通信が切れた後、ジュリは思った。
(何故だろうな。ティナと話すと落ち着く。これから最終決戦だと言うのに…。ケンタ…見ていてくれ。私の勇姿を…!覚悟を!!シグレいくぞ!」
「わかってる!!」
(ティナに出会えて本当によかった。まだ出会ってそんなに長くはないけどあなたについてこれて本当によかった。私が出来ることはあなたを無事に辿り着けるようにすること!だからこの戦い…絶対に勝って!」
戦闘機は一斉に東京内へと突っ込んだ。
「始まるぞ!」
東京側からミサイルが無数に放たれた。
「やはり向こうも既に待ち受けていたか…!」
『フェニックス』の戦闘機が次々に撃ち落とされていった。
「くっ!凄まじい数のミサイルだ!」
東京側からも戦闘機が飛び立った。
「…お出ましか。シグレ倒すぞ。ここで奴らに負けたら地上にいるティナたちは終わりだ。」
「うん。死んでも食い止める。」
「いい覚悟だ。いくぞ。」
ジュリとシグレは敵の戦闘機を次々と落としていった。
すると真っ黒の戦闘機が地上から上がってきた。
「何だあれは…?」
「こちら第5部隊…リーダー気を付けてください!あれは普通では…!ビビビ…」
「こちら第3部隊…あの戦闘機のスピードが異常です…!まったく捉えられ…!ビビビ」
その黒い戦闘機は次々と『フェニックス』の戦闘機を撃ち落していった。
無線も混雑していた。
「シグレ。能力で奴を捉えられるか?」
「いや…無理。早すぎる…あれもきっと能力だ…。」
「以前私の機体を鈍くさせていたやつがいたが、その逆のことを出来るやつがいるとは…。恐らくあの黒い戦闘機に乗ってるやつこそ国の幹部…。『フュドラ』か。」
そして一瞬ではあるが、ジュリとその黒い戦闘機はすれ違い顔を見合わせた。
「あいつは…!『田島』…。生きていたのか…!」
ジュリは乗っている人物の顔に見覚えがあった。
「ケンタ…。ようやく仇を取れそうだ。」
黒い戦闘機に乗った田島という男もジュリの存在に気付いていた。
「ふっ。『フェニックス』というのが現れたときからまさかとは思っていたがやはりお前だったか…。俺の腕に深い傷を負わせた女…。今度こそ殺してやる…。」
「ジュリの動きが変わった?すれ違った瞬間になにがあったの…?」
「あのスピードを捉えるのは難しいな…。だが!」
そして『フェニックス』は大きく旋回し攻撃を仕掛けた。
旋回したその先には黒い戦闘機があった。
「なんだと?!こっちに突っ込んできやがる!しかし速度を早くすればいいんだ!」
すると黒い戦闘機は加速を始めた。
「この距離なら…!」
シグレがオーラを最大限に放った。
「私はやれる…!ここでやらないでいつやる!」
「なんだ?!操縦が効かないぞ!」
黒い戦闘機のバランスが崩れ速度が落ちた。
「よくやったシグレ!」
「だけどこの距離なら長くは無理…。恐らく5秒。」
「十分な時間だ!」
ジュリは攻撃を仕掛けた。
「こうなれば仕方ない…!!俺ごとやれ!!」
地上からミサイルが次々と放たれた。
「ちっ!」
ジュリはすぐに気づきミサイルで対抗した。
しかしそれでも地上から次々と放たれた。
「だめだ…この数は…!間に合わない!」
ジュリの周辺でミサイルが一斉に爆発した。
「ジュリ!!」
煙が段々薄れていくとなんとかジュリはその場から脱していた。
しかし…。
『フェニックス』から煙が上がっており警報がコックピット内で鳴っていた。
「はぁ…はぁ…。すまない『フェニックス』…。無理をさせすぎた。これは完全に片道切符だな。」
目の前には同じように爆風に巻き込まれた黒い戦闘機があった。
だが間一髪でシグレの能力が切れダメージはジュリほどではなかった。
「こっちもダメージをおったがなんら問題ない!次で奴は終わりだ!」
「もうミサイルもない…。こうなればあれをやるしかないか。最後の切り札。」
「シグレ!あと一回だけ…頼む。」
「何をする気?!」
「最後の覚悟を決める。」
この時その意味がシグレにはわかった。しかし止めることは出来なかった。何故なら覚悟を決めた人間を止めることはできないと自分がよくわかっていたからだ。それにもうその方法しかないと思っていた。
「わかった…。だけどそれをやるにはギリギリまで近づかなくてはいけない…。」
「…。」
「いいよ…。私も。」
「シグレ…。すまないな。最後まで付き合わせてしまって。またどこかで会えたらいいな。次は平和な世界で。」
「ええ。あなたと最後に一緒に戦えて嬉しく思います。」
「それはこっちのセリフだ。いくぞ!」
「ええ!」
(ケンタ待っていてくれ。私もすぐに行く。リク…アカネ…すまない。これからはお前たちが背負っていってくれ。私が最後まで守り抜いた『フェニックス』を。『tears』のメンバーも絶対に勝つんだぞ。それからティナ。お前に出会えて本当によかった。五十嵐と須藤を倒せよ!見守っているからな!!)
(『tears』は絶対に負けない。ティナ勝つんだ絶対に。私の分まで須藤にぶつけて!!)
地上では東京にようやく入ったティナたちが上空の状況を見ていた。
「おい。『フェニックス』が火を噴いてるぞ!」
「まずいあれでは落ちるぞ…!」
「ジュリ!!!!」
ティナはジュリに無線を送った。
「ジュリ応答して!!」
「…。」
「ティナ!お前は妹のような存在だった。もう抱きしめてはやれないがお前は1人ではない。これからはミナ…それから仲間たちと共に一緒に乗り越えて行くんだ。大丈夫お前ならできるさ。」
「え…?」
「ティナ…!突き進め!!絶対に止まるなよ!!これから起こることがどんなことでも受け入れろ!そしてお前たちの未来を切り開け!」
するとジュリとシグレが囲むように黒い戦闘機へと突っ込んだ。
「なんだと?!まだくるか?!早く加速しなくては!!」
「逃げさない!!絶対に!!」
シグレが能力を使った。
黒い戦闘機はまたも操縦ができなくなった。
「くそ!またか!!地上!それから上空のやつらはなにをしている!早くやれ!」
空に残っていた敵の戦闘機も一斉にジュリたちの方へ向かった。
(この『フェニックス』はこの時のためにとんでもない爆薬を積んでいる。発動条件は機体を爆発させた時。周りの奴らも巻き込むほどの威力。つもりそういうことだ。)
「お前も道連れだ!私と共にここで終わるんだ!」
「くそぉ!!こんな奴に…!!」
「うおおおおおお!!」
2人は最後の最後まで瞬きをせず目を見開いた。
そして…黒い戦闘機に2機の戦闘機が突っ込んだ。
上空で大爆発が起こった。
周りにいた戦闘機もすべて巻き込んだ。
「う…嘘だろ…?」
「特攻しただと…?」
「ジュリ!!!シグレ!!!」
「リーダー…嘘だろ…?」
そしてティナたちは車から降りた。
上空から赤い腕章が降ってきた。
「これはリーダーが付けていた…腕章…。」
そして戦闘機の赤い破片と黒い破片が降ってきた。
「命をかけて道連れにしたのか…言葉もでない…。」
リクが叫び地面に拳を叩きつけた。
「うああああああ!!」
ティナもまた呆然だった。
「もうジュリとシグレがいない…。嘘でしょ…。」
ミナが声かける。
「ティナ進もう。ジュリとシグレの覚悟を受け止めるんだ。無駄死にではない。ちゃんと役目を果たした上での死だ。」
「うん。わかってる。いこう…。」
「リク。行くよ。」
「ああ…。リーダー…。見ていてくれ。必ずやり遂げて見せるから。」
リクはジュリの腕章を頭に巻いた。
ここからは車を使わず徒歩で進んだ。
みんなの瞳からは涙が自然と流れていた。
悔しいとか辛いとかいろんな感情が交差していたからだ。
一方敵側でも動きがあった。
「なんて爆風だ。あれでは上空で生き残ってるやつはもういないか。」
「しかし『フェニックス』を巻き込んでの死だ。奴はやり遂げたと言ってもいいだろう。」
「これでは空はもうだめだな。ここからは我々が直接出向いて奴らを殺すしかない。」
「もう既にやつらは東京に侵入しているんだ。さっさと始末しないとトップに示しがつかんぞ。」
「ちっ。『フェニックス』のせいでとんだ面倒ごとになったな。それにあの空の色…。国が開発していた毒をバラまいたか。」
五十嵐はその光景を喜ぶ所か真顔で見ていた。
(不死鳥の死か。そこまでの覚悟で来られては本格的にこの戦い楽しめそうだな。ティナ。お前は仲間の死に今どう感じている?怒りか?それとも悲しみか?恐れか?いずれにしても俺とやり合うまでは死ぬなよ。)
「さて今度は俺がいこう。久々に腕が鳴る。」
「ほぉ。お前が行くのか。」
「『tears』だかなんだか知らんがトップは恐れ過ぎだ。あんな連中俺1人で十分だ。『ヒュドラ』の恐ろしさを思い知らせてやる。」
そう言うと男は出て行った…。
(これで残る首は8頭か。さてここからだ。)
空から雨が降ってきていた。黒い雨だった。
「この雨は一体…。」
「これは…まずいぞ。」
「どうした?レイナ。」
「これは有毒性を含んだ雨だ。」
「恐らくさっきジュリが命をかけて倒した奴の仕業でしょうね。こういうことまで計算にいれていたとはね。」
「絶対口に入れるなよ。」
「ええ。」
ティナたちは黒い雨に打たれながらもただ真っすぐ進んでいた。
ジュリ…シグレ…私絶対にやり遂げるから。
【ジュリとシグレはケンタを殺した『ヒュドラ』の1頭を巻き込む形で上空で死亡した。】




