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【漫画連載決定】Reason for tears  作者:
past and future
29/50

29話 呪いの石


『研究は80年前に始まった、80年前から今に至るまでにどのような経緯があったのかをここにまとめる。それを記載する上で1人の研究者のデータが最も参考になるだろう。』


『能力はどのようにして生まれたのか。それは戦時中の出来事であった。この研究者の名は【江口タカシ】20歳。当時、軍医だったタカシは戦争で足と左腕を負傷し、医者としても軍人としても戦えなくなり地元である京都へと帰って来ていた。タカシは早くに父親を亡くし病気の母親と二人暮らしだった。ある日、タカシは足のリハビリも兼ねて趣味である山登りに行っていた。』


『そして腰を下ろし空を眺めていると上空から何かが落ちてくるのを確認した。タカシは落ちた場所に行った。そこには手のひらサイズでオーラのようなもの纏った光る石が落ちていた。タカシはそれをじっと見つめ手に取った…。』


-1943年 京都~


「光っているこの石は何だ…?それにしてもすごいオーラだ。きっと熱いんだろうな。」


最初は木の枝でつついたりいろんな角度から見た。


そして軽く手を伸ばし熱があるのかを確かめようとしたその時だった。


吸い込まれるように石へと手が伸びた。


「まずい!手が勝手に!」


タカシは反対の手で手首を掴み止めようとした。


しかし手は石を掴んだ。


「なんだ…?まったく熱くない…?こんなにオーラがあがっているのに…。」


『タカシは小石を持ち上げた。重さはほとんどなかったらしい。だが1つここでタカシはあることに気づいた。』


「俺の体からも同じオーラが上がっている…?なんだこれは!負傷していた腕の傷が癒えてきているじゃないか。もしかしてこれは不思議な力を持っているのか?」


『その小石を持った瞬間、戦争で負傷した傷が癒えたという。タカシはこれは魔法だ。これがあれば戦争に役に立つと大はしゃぎしたそうだ。タカシはその石を家に持ち帰り、病で寝込んでいた母親にも試した。』


「お母ちゃん!この石を握ってみてほしい。」


「ゴホッゴホッ…タカシその石はなんだい?それにあんた体の傷が…。」


「いいから。握って。」


『そしてタカシの母は言われるがままその石を握った。さっきタカシが体験したのと同じオーラが体から上がったそうだ。』


「なにこれ…?なにが起こっているの…?」


「母ちゃん胸苦しないか? 体は痛くないか?」


「え…?嘘…。体が動く…咳もまったく出ない。痛みもない。治ったんか私…。」


(やっぱりそうだ。怪我やら病気を治してくれる石なんだ。)


「母ちゃんこれでもう病気に苦しまなくていいよ。」


母親は涙を流して喜んだ。


『この時はまだ石の怖さにまったく気づいていなかった。神からの贈り物程度にしか見ていなかったからだろう。母親が初めての【人体実験】の1人目になっていることも知らずに。彼はこの石を使い、病気で苦しんでいる人、怪我をした兵士たちいろんな人達に使った。中には戦争で負傷した敵の兵も大勢いた。行列が出来るほどタカシの元に怪我や病気を持った人が昼夜問わず押し寄せるようになった。その噂を小耳にはさんだ大学病院の医院長はタカシを病院に勤務させ運ばれてくる人たちを次々と治していったそうだ。』


『すべて【石の力】で…。』


『ここまでは普通にすごい石を発見したというだけで終わりそうなものだが、ここから石の恐ろしさを身をもって知る事となる。』


『タカシは病院に勤務して1年になった。ある時、石の力を使って今まで治してきた患者たちが急に押し寄せてきた。』


「先生!待合室に大勢の患者が来ています!」


「なに?石の力が効かなかったのか…?」


タカシは診察室を出て待合室に向かった。


するとそこには100人以上の患者が苦しそうにしていた。


「どういうことだこれは…?」


原因を調べるため1人の患者を診察した。


「異常は全くないな。どこも悪くない。」


「先生…急に体中が痛くなったんだ…。手の震えも止まらない…。治してくれ…。」


「治すと言われても外傷もなければその他も悪くない。」


「あの石で…もう一度直してくれ。お願いだ…。」


タカシにはもうこの石以外選択肢がなかった。


「わかった。それじゃあ、石を握ってくれ。」


「これで痛みから解放される…。うっ…!!」


患者の体からオーラが噴き出した。


「うあああああ!熱い!!燃える!」


患者はもがき苦しんだ。それを見ていたナースは壁を背に張り付き恐怖した。


「石を放して!早く!」


タカシは叫んだ。


患者は倒れ石が転がった。手から放した途端、オーラが消えていった。


タカシは患者の脈を測ったが、既に死んでいた。


「嘘だろ…?一体何が…?」


「先生…。一体どういうことですかこれは…。」


この時はまだタカシは偶然だ。この石のせいではないと思い込んでいた。


「先生…?」


「次の患者を…。」


「え…?でもこちらの患者は…。」


「発作ということにしておけ。裏口からこの患者を安置所へ。」


「…」


「いいから早く。」


「わ、わかりました。」


タカシはこの患者の死によって人が変わったように石を使い始めた。


この日の診療だけで50人ものの死者がでた。


だが、例外もあった。


「次の患者を…。」


「先生こんなのおかしいです…。その石が原因ではないんですか?」


「たまたまだ。こんなご時世だ。未知の病にかかっていたに違いない。さっさと次の患者を通せ。」


「は、はい。」


『そして次の患者こそがその例外であった。』


1人の女性が椅子に座った。


だが、彼女は全く苦しくなさそうだった。


「…。今日はどうなさいました?」


「以前、先生に石を使ってもらって結核を治してもらいました。今度はこの腕の痛みを治してほしいんです。」


今までの患者とは違い落ち着いていた。 


「それでは見せて。」


「はい。」


特になにもなかった。


そしてまた石を取り出した。物事の判断が出来ないところまできていたタカシは苦しんでいようが苦しんでいなかろうが石を使った。


「先生!」


すごく怖い目でナースを睨んだ。


「いえ…なんでもないです。」


女性患者に石をまた握らせた。


「これでよくなる。もう大丈夫だ。」


女性の体からオーラがでた。 だけど全く苦しむ様子はなく腕の痛みが消えた。


(2回触ったのにこの患者は死ななかった…。何故だ…?)


「ありがとうございます。先生。おかげで痛みが治りました。」


「1つ聞きたいのだが、苦しかったりそういった症状はないかね?」


「え?いえそれよりも力がみなぎってきます。なんというか今まで出来なかったことができそうな感じでしょうか。不思議な気分です。」


「そ、そうか…。じゃあもう帰って大丈夫です。」


「先生。有難うございました。」


『その後もタカシは石を使い大勢の人が命を落とした。かなり稀にだが石に2回触れても生き続けた患者はいた。それでも手で数えられるほどだ。』


『それから1ヶ月後、この時既に何千人と言う犠牲者が出ており、タカシの名前も少しずつ悪い方向に伝わりだしていた。指をさす者、タカシには絶対に見てもらいたくない者、石の事を呪いの石という者が後を絶たたなかった。それからは石をなるべく使わず診察をしていたそうだ。』


『そしてそんな時、1人の男が病院に訪れ、院長と話していた。タカシはその男から話がしたいと呼ばれ院長室で話し合う事となった。』


「自分に何か用でしょうか?」


「椅子にかけたまえ。」


「はい。」


突然、男が口を開いた。


「石を見せろ。」


「え…?」


「いいから早く見せろ。」


「江口先生。いうとおりにしなさい。」


「は、はい。」


「これです…。これが例の石です。」


「ほぉこれがそうか。触るとなんでも病を治す石。」


「…。」


男はタバコを吸い始めた。


タカシは男を直視できず下を向いていた。


「それで今まで何人の患者にこの石を使ってきた?」


「え…?」


「答えろ。」


「正確に数えたことはありません。ですが、恐らく1000人弱には使ってきたと思います。」


「それで何人死んだ?」


タカシは思った。


この人は警察…?もしかしたら自分は捕まり死刑になるんだと思い体が震えた。


「ただ聞いてるだけだ。答えろ。」


「覚えている限り使っても死ななかった患者は10人…いやもしかしたらもっといたかもしれません。後は…。」


「なるほどな。それなら十分に可能性は秘めているな。」


「どういうことでしょうか…?」


「これからも石を使い実験を続けろ。死体の処理は国で処理する。」


「国…?」


「医院長この病院の地下を研究に使わせてもらう。そして明日からはこの病院は国が管理する。いいな?」


「わかりました。是非国のお役に立ててください。」


「医院長…この方は一体…。」


「江口先生。口を慎みたまえ!この方は…。」


「私は国家の人間だ。」


「国家…?!」


「明日から君は国の研究員として動いてもらう。その石の秘密を解明し、どういった効果を最終的にもたらすかをだ。そのためなら何人でも人間を送る。」


「この石は治療するための…。」


「違うな。治療はおまけだ。本来の目的はまったく別のものだ。」


「え…?」


「この報告書を読んでみろ。」


『そこには石を2回触った患者のその後が記録が記されていた。』


『名前【有坂サヤ】年齢12歳。サヤは石による治療後、友人と一緒に道を歩いていたとき空襲によって直撃に近い被弾をしたが、ほとんど無傷で生還していた。友人の方は即死。その理由は撃たれる直前にオーラを体に纏い最小限に攻撃を防いでいたそうだ。少なからず傷は受けていたみたいだが、その後サヤが行ったことこそ我々が注目した点だ。なんと手にオーラを纏わせ、傷口にその手で触れた。するとあっという間に傷が完治した。我々はすぐに彼女を保護し、いろいろなテストをした。自分以外の誰かを治療することはできるのか? 答えは【出来ない】。自分にだけ、それを使うことができた。もしかしたらこれからできるのかもしれないということで引き続き様子を見る。』


『名前【米原ヒロト】15歳。ヒロトはよく市場から盗みを働く少年だった。親は1年前に死亡しており、恐らく石が原因と思われる。盗みを働きだしたのも親が丁度死亡した後の事からだ。ある時このヒロトは影みたいなものを使い盗みを働いた。店の人間はこれを人間ではない何かが盗んでいったと訳の分からないことを証言した。実際に我々が調査したところ、確かに黒い何かが盗みを働いていた。我々は少年に交渉をした。安全に暮らせる場所、空腹を常に満たすことを条件に保護した。テストの結果、影自体には痛みなどはなし。銃弾などによるダメージもない。じゃあこの影は本体と同じような動きが出来るのかというと答えは【出来ない】。決まった動きしかできず、戦争による戦力としてはまったくもって役に立つものではないとわかった。だがこちらも今後、更なる成長が期待できるため引き続き様子を見る。』


「我々が現状、保護しているのはこの2人だ。」


「この患者なら覚えています。確か親子で来ていました。」


「その親なら両方死んだ。」


「何故ですか?私は子供の方には石を持たせましたが親には持たせておりません。」


「この2人は石と同じ力が体に働いていたようだ。どっちも親に触れたときもがき苦しみ死んだそうだ。」


「そんなまさか…。」


「明日、そこに書かれている2人を連れてくる。24時間常に観察するんだ。そして石を触っても死ななかったやつは丁重に扱い、力を更に引き出させろ。」


「この実験の目的は教えてもらえないでしょうか…?」


男はまたタバコをくわえた。


「そんなの決まっている。この戦争に勝つための兵器として使うからだ。ここから先はこのことを市民に話したり、勝手な真似をしてみろ。地獄を見ることになるぞ。」


「は、はい…。」


「だが、我々はお前に期待をしている。石に触れてもなんともないお前にしかできないことだ。国のために頼んだぞ。」


「はい。国のため命をかけてもこの実験を成功させます。」


「それじゃあ院長、私はこれにて失礼する。明日また来る。」


「はっ。外までお送りします。」


「江口先生。今日は実家に帰りたまえ。明日からはもう家には帰れない。今日のうちに母親にお別れを言ってこい。」


「わかりました。それでは自分もこれにて失礼します。ではまた明日。」


タカシは久しぶりに実家へと帰った。


「お母ちゃんただいま。国家の人達から俺必要とされたんよ。それで明日からもう帰れないから最後にお別れ言いたくて帰ってきた。」


家の中はシーンとしていた。だけど母親の下駄は玄関にあった。


「お母ちゃん?」


居間に腐敗が進んだ遺体が転がっていた。


「え…?お母ちゃん…?」


鼻をつくにおいと変わり果てた母親の姿にタカシは外に飛び出し、気分が悪くなっていた。


だが死んでいたのには十分、心当たりがあった。


「この石のせいか…。1回触った後しばらくしてから体中が痛くなった患者を沢山見てきたが、それを放置した結果がこれか…。俺には影響がなかった。しかしお母ちゃんは死んだ。ということは血縁は関係ない?いや待て…子ならどうだ…?知りたい…。もしこの研究で力を最大限に引き出すことができれば…とんでもない人間を作ることができるかもしれない…。」


タカシは母親が死んでいたのを目の当たりにし、一瞬はショックを受けたが、すぐに自分の母親も研究の記録にした。その時の表情は涙を浮かべながら笑っていた。


『もうこの時点で最初の研究者である【江口タカシ】は既に国の研究者として動いていたのかもしれない。いや、国家に言われなくとも自分自身が本当はやりたかったのかもしれない。逆に言えばその野望を国は利用したのだろうと僕は思った。その石は人の性格までもを変える恐ろしいものだった。ここまでで【江口タカシ】が研究したデータを元に石についてわかったことをここに記す。』


『この石は一度触ってしまうと能力が手に入るか死ぬかの2択しかない恐ろしいもの。何故、傷、病気を治したのかはこの石によって大量に注ぎ込まれた精神力が治療に繋がったのではないかと後の研究でわかった。だが、もっとも恐ろしいのが限界を超えた量が一気に注ぎ込まれるため、体が耐えられなくなり、痛みへと変わる。そして臓器、体全体に広がりやがてもがき苦しみながら死に至る。逆に体が受け入れた場合は能力へと変化し、信じられない力を使うことができるようになる。ただ成功する確率はほとんどない。能力を取得した場合、子から孫の代まで引き継がれることがわかった。僕はこの石の事を【呪いの石】と呼ぶことにした。』


ティナは一旦読むのを止めた。


「みんなはここまで聞いてどう思った?」


「…言葉が出ないというのが正直な感想だな。」


「ええ。聞いていて吐き気がするような内容ばかりだった。呪いの石か。まさにその通りだな。」


「俺は少し気になった部分があったんだ。【有坂サヤ】と【米原ヒロト】だがヒマリとレンの能力に似ていないか?」


「似てるも何も【米原ヒロト】は俺の死んだ爺ちゃんだ…。」


「私のおばあちゃんの名前も【有坂サヤ】。」


「何だと…?ということはお前たちは子孫か。」


ティナは深く考え込んだ。


「どうしたティナ。」


「だとしたら石に触れて生き残った祖先たちの子孫は今この中にいるみんなってことになる。」


「まぁそういうことになるな。それに今まで戦った能力を持った奴らもだ。俺も含めてな。だが、ウルハのように精神力を引き出すタイプだっているわけだ。石がなくとも引き出せるのではないか?」


「そう思ったんだけど私とミナは元々過去と未来が見える能力を持っていた。ウルハのは力が既にあって能力が使えるのが前提だと思う。だから私も恐らく祖先が石に触れていたはず。それならお父さんが能力を使えたのも納得がいく。」


「ティナのいうとおり、私の能力は力を既に宿してるのが前提の能力。まったく力が使えない人には逆に石と同様、危険に晒してしまう可能性がある。ただ呪いの石ほどの力はない。あくまで補助的なレベル。ティナとミナの時同様にトオルとイオリの更なる能力を引き出せたのも元々は2人の精神力の強さがあったから出来たこと。私は少し手助けしただけの話。」


「ふむ。ということは石そのものがなければそもそも能力自体を得るのは不可能というわけか。そういえばヒマリとレンの祖父母は能力を使えたのか?」


「いいや、そんな話聞いたこともないし見たこともない。親父もそんな力は一切使えない。」


「私も。お婆ちゃんはそんな話をしたこともないし、ふつうのお婆ちゃんだった。」


「父さんは呪いの石で能力を封印したと言っていた。それが関係しているのかもしれないな。」


「そうだね。その逆で封印が解かれたということはその石を使ったやつがいる。」


「まぁ国の連中ってことは間違いないと思うがな。」


「私が気になったのは国のトップとレポートにでてきた国の男がなんか少し似ている気がするんだ。力を持った者を集めようとしていた部分とか。」


「確かに共通点はあるな。だがもしこの男が生きているとしたら相当な年だ。国のトップはそこまで年齢はいっていないはず。恐らく別人だろう。」


「うん。まだまだわからないことだらけだ。だからこそ、このレポートをすべて読む必要がある。」


「ああ。俺はどんな内容だろうが、全部受け止める。」


「私も。」


「わかった。じゃあ続きを読むね。」


ティナは更にレポートをめくり読んだ。

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