18話 託された願い
【ティナたちは隊長のアカネに『フェニックス』の基地へと連れてこられていた。そしてリーダーと呼ばれる人物にこれから会おうとしていた。】
兵士と思われる連中が扉を開けた。
中に入ると今まで破壊されてきた光景ばかりを見てきたからか綺麗な空間だった。
どこも破損しておらず、この建物だけは厳重に守られてるんだと思った。
「この扉の先にリーダーはいる。それとここからはティナだけ入ってくれとのことだ。他のものはここで待つように。」
「俺たちは何故会えないんだ?」
「ただの話し合いではなく、指導者同士の話し合いだからだ。」
「みんなはここで待ってて。私だけで行ってくる。」
ミナが耳打ちをした。
「ティナ用心してね。」
小さく私は頷いた。
「リーダー。ティナが到着しました。中にいれます。」
「よし入れ。」
私は鉄で出来た扉を開けた。
中に入ると少し長めの廊下になっていた。そして左右には飛行機?いや戦闘機の模型がズラリと並んでいた。
その廊下を抜けた先に赤い扉があった。
私はゆっくりと扉を開けた。
すると迷彩の軍服を着た女ががいた。
「よく来たティナ。」
「あなたが『フェニックス』のリーダー?」
「そうだ。まぁそこに座ってくれ。」
私は言われるがまま椅子に座った。
そしてその女も私と向かい合うように椅子に腰をかけた。
私の顔をじっと見つめ口を開いた。
「はじまりは過去が見えると言う理由で国から狙われた。そして国がこのような状況になったのもあって戦うことを決意し自分の国『tears』を作り世界を変えようと考えた。そして今、国のトップを倒すため東京へ向かっている最中。あっているか?」
「ええ。どこでそれを?」
「こんな状況ともなると情報というのは命よりも大事となってくる。ましてや、同じ目的で動いている者の情報というのは一番に知っていないといけない。戦う理由も含めてな。」
「それなら私もあなたが戦う理由を知りたい。そしてあなたのことも知りたい。」
「…。そうだな…。知っておいてもらった方がこの先お互い動きやすいからな。」
「私の名前はジュリ。元々は国の組織に属していた。私はこの国が行おうとしていたことを何ヵ月も前から知っていた。当時の私は国のやろうとしていることに対し何も感じなかったしそれを止めようとも思わなかった。」
「元々組織の人間だったことは聞いている。けれど今のあなたは国と戦っている。なにがあったの?」
「…」
『今から話すことは私にとってもティナにとっても辛い話になる。覚悟して聞いてくれ。それでもいいならすべてを話そう。』
「う、うん。聞かせて。」
「…。わかった。」
「私には結婚を約束していた大事な人がいたんだ。名前は【ケンタ】って言った。 ケンタも同じ組織内に属していた。部隊は違ったが部隊の指揮官同士だった。そしてケンタだけはその作戦に大いに反対していた。」
「私はこの作戦が成功したら、組織を抜け、2人で一緒に暮らし幸せになろうと説得したこともあった。ケンタはそれでも作戦なんて成功してはいけないんだと反論した。その後、何度も私は説得を試みた。だが、私の説得は結局、ケンタには届かなかった。そしてとうとう作戦決行の時がやってきた。…今でも鮮明に覚えている。最後の会話を…。」
【国が国民たちの選別を開始した日、ジュリとケンタの組織は東京内で国がやろうとしていることに反対していた評論家、政治家などを抹殺するために送られていた。】
2人は官邸内を歩いていた。
「ジュリ 俺、国が隠している秘密を知っているんだ。」
「なに?急に。見てしまったんだ。」
「ここの地下に基地があるのを。国が極秘で何年もかけて作ったに違いない。」
「地下…?何のためにそんなものを?それに国のために戦っている私たちに隠す理由ってなに?」
「今、国がやろうとしていることに大きく関係しているはずだ。」
「それがなんだろうと私たちが知る必要も権利もない。ただ国の指示に従っていればいい。」
「ジュリ、やっぱりこんなの間違っている!今からでも遅くない。政府の連中を止めよう。」
「そんなことをしたらどうなるかわかっているの?私たちは殺されてしまう。この作戦が無事終われば組織を抜けて穏やかで幸せな暮らしだってできる。」
「お前は本当にそう思っているのか?もし俺たちがこの作戦を成功させたとして国が本当に何不自由ない暮らし、争いがない国にしてくれるとでも思っているのか?俺は違うと思う。これをきっかけに人々は殺し合い、奪い合い、そして大切な人を失っていくんだ。そんな中で穏やかで幸せな暮らしが出来るだって?ありえない。馬鹿げている。」
「国がやろうとしていることがおかしいのはわかっている。でもそれに従うのが今の私たちの仕事。ケンタが考えているほどそんなに甘くはない。それにこの計画は国がよくなるための作戦って上も言ってたじゃん。」
「そんなの嘘だ。選別なんかそもそも必要ないんだ。今まで通りでいいじゃないか。どんな人間でも生きる権利はある。国に従わないから国民として認められない?選ぶ権利もないのか?逆らったら人権もない?それなら俺はこんな国はいらない。捨てて自分の国を作るまでだ。地の果てまで命を狙われようともだ。だからジュリ俺に力を貸してくれ。そして一緒に戦ってくれ。もし戦いに勝ったら…また一緒にあの時見た景色を空から見よう。」
「…。ごめん ケンタ。それでもやっぱり私には出来ない。国に逆らうなんて無理だよ。」
そして作戦実行の時が訪れた。
「隊長そろそろ任務の時間です。」
「ああ。今から行く。」
「…。じゃあケンタ任務が終わったらまた会おう。そっちも頑張ってね。」
「ああ…。」
「ジュリ…。」
私はこの時、ケンタの言葉に対し、【わかった。一緒に戦おう。】と一言、言っておけばよかったと今でもずっと後悔している。
ジュリは作戦場所へと到着した。
「…任務を開始する。」
そして作戦が始まった。
ケンタとは違う任務だったから一緒ではなかった。 私は部下を連れ、標的がいる場所に向かった。
「こちらジュリ。標的を捉えた。いつでも射殺できる。」
ジュリはトップの人間と通信していた。
「わかった。奴は政府の作戦に猛反対している反逆者だ。一撃で楽にしてやれ。」
「はっ。それと1つ伺ってもよろしいでしょうか?」
「もしこの作戦を遂行出来たら組織を抜け、普通の暮らしは出来ますでしょうか?」
「何を言ってるんだ?お前。出来る訳がなかろう。これから戦争になるんだ。我々と我々に逆らうやつらとのな。お前は死ぬまで戦い続けるんだ。我々が新しく作る国のためにな。」
「…。もしそれに背いたら…?」
「親、兄弟、そしてお前の大切な人、友達すべて殺す。そんなことわかっているだろ?くだらん質問をするな。さっさと任務に戻れ。」
「…わかりました。任務を続行します。」
(ケンタの言う通りだった。やつらに情なんてないんだ。すべては国のため。自分の保身のため。賛同しないものは必要ない。人権すらもない。そんなやつらが作る国に希望なんてない。それなのに私はケンタの言葉に何一つ耳を傾けなかった。)
(今からでもまだ間に合うなら…)
私は心に迷いがある状態で標的を定めていた。作戦を遂行したとしてもまた繰り返すだけ。そうわかっていながらも任務に集中した。
引き金を引こうとした時だった。
無線が入った。
『こちら。官邸内で組織の裏切りが発覚した。 現在 交戦中。 手が空いてるものは至急応援求む。』
(組織内での裏切り…? まさか…)
私は銃を置き、ケンタに電話をかけた。
「出ない…。」
「すまないみんな。私は官邸へ行く。」
「隊長。まだ任務が…。」
「悪い。お前たちでここは頼む…!」
「隊長!」
私はもう前すら見えなくなっていた。もしその交戦相手がケンタだったら私はどうしたら。
私が任務を放棄したことは既に上にバレているだろう。だがもうそんなことどうでもよくなっていた。
「はぁ…はぁ…」
官邸内がざわついていた。そしてマシンガンのような銃声が鳴り響いていた。
私は音の鳴る方へ走った。
建物内に入ると死体が転がっていた。
私は銃を構え、死体の続く方へと進んだ。
その死体たちがケンタではないという安心感ともしかしたらと思う不安で押し潰されそうだった。
そして銃弾が私の足元の床に当たった。
私は障害物に身をすかさず隠れた。
「ケンタ…?ケンタなの?」
反応はなかった。警報装置の音と周りの騒がしい声が混ざり合っていた。
「ケンタ!ケンタだったら返事して。」
「ジュリ…。この先にあるんだ。」
「国の隠している秘密。俺は今からそこを爆破する。」
「何言ってんの?そんなことしたらどうなるかわかってるでしょ?」
「わかりたくもない。もう何もかも終わらせたいんだ。こんな国に生まれたこともこんな国に忠誠を誓ったことも全部だ!」
「ケンタ…。」
「でもなジュリと出会えたこと…本当に幸せだったよ。一緒になれないことぐらいわかっていたんだ。それでも最後に抗うことぐらいは出来る。可能性が1%でもあるなら俺は賭けたいんだ。わかってくれとは言わない。だけど俺からの最後の頼みを聞いてほしい。」
「なに…?ケンタ?」
「もう止めないでくれ。」
そして走る音が聞こえた。
「待ってケンタ!」
(私も戦う。だから私も一緒に行かせて。そしてこの戦いが終わったら2人で一緒に静かに暮らそう。)
その言葉を伝えようと思ったときにはもうケンタはいなかった。
私はケンタの行く方向へ追いかけた。
(ここのエリアは入ったことがない。こんな施設があったなんて。)
そして地下に続く階段の床が開いていた。
私は階段を下りた。
「ケンタ!どこなの?!」
私は叫んだ。そしてその瞬間…。
「ジュリ来るな!」
パン! パン! パン!
銃声が3発鳴り響いた。
私は銃を構え直し銃声が鳴った方へと走った。
血を流し倒れていたケンタがいた。
「ケ…ケンタ!」
「動くな。」
「どこに隠れている?!姿を見せろ!」
「お前は作戦任務に出ていたはずではないのか?どうしてこんな所にいる?」
「殺してやる!今すぐでてこい!」
「誰に向かって口を聞いているんだ?今すぐ死ぬか?」
「ジュリ…」
「ケンタ!死ぬな!」
「そうか。お前らグルだったのか。だったらお前も生かしてここから出すわけにはいかなくなったな。」
「1つ教えといてやる。この施設は新しい国が出来たときに使用される最大規模の地下基地だ。まもなく戦争が始まる。そして我々が目指すのは軍事国家。強いものだけが生き残り弱いものは皆滅びる。ここには数えきれないほどの兵器から戦闘機、戦車までほとんど揃っている。そしてようやく計画を始める準備が整った。」
「やはり…そういうことだったんだな…もっと早く止めるべきだった…」
「なんだと?」
「こんなことなら…国のトップをもっと早く始末しておくべきだったと言っているんだ…。」
「最後に言いたいことはそれだけか?」
「ジュリ聞いてくれ。国が裏でやってることが大体わかった。俺たちが仕えていたトップの上にもう1人いる。そいつが本当の支配者だ。俺たちも顔を知らない奴だ…。そして国家が今狙っている『ティナ』はそいつの娘だ。」
「自分の娘を殺そうとしているってこと…?」
「ああ。国を作る上で…過去が見える娘に脅威を感じたんだ。娘に自分の正体を悟られない為だろう。」
「なんて野郎だ…。自分の計画の為なら我が子の命なんて関係なしってことか!」
「組織が管理していた未来が見えるミナという少女がいただろ?ティナの故郷でもある京都へと向かった。そいつがティナの親友だそうだ。ティナの親は親友を使ってティナを殺す気だ。」
「なんていかれた野郎だ…。」
「その男は噂では人を操れるらしい。ミナって少女もきっと操られているはずだ。だからもし会っても殺すな。わかったな?その2人には罪はない。そしてその男を止められるのは娘のティナだ。俺にはそう感じるんだ。過去と未来が重なり合うとき希望が現れる。」
「ケンタも一緒にきてくれ…。」
「ジュリ。すまん。俺はもう無理だ…。最後にこれを持っていけ。」
「これは…ケンタの…。」
「ああ。ジュリの次に大事にしてきた相棒、【フェニックス】の鍵だ。横田基地にある。」
私は血のついた鍵を受け取った。
「あいつらを…国を倒してまた平和な日常を取り戻してくれ…。そしてティナという少女に会うんだ。泣くなジュリ…。空からの景色をもう見せてあげれなくてごめんな…。俺はずっとジュリのことを…愛してる…。」
「え?ケンタ…?ケンタ!!」
ジュリにすべてを託しケンタは眠るように息を引き取った。
私はケンタをゆっくり地面に置いた。
「出てこい…。」
「あん?」
「早く出てこい!!」
「もう最後の別れは終わったのか?お前もここから生きては出られないぞ。わかってんだろうな?」
「お前を殺してここから出る。そしてこんな国滅ぼしてやる。お前こそ死ぬ覚悟はできているのか?」
「俺も忙しいんだ。そいつと一緒に上に行かせてやるから大人しくしていろ。」
私は銃を突き出し、男を探した。
一発の銃弾が発射され私の足をかすめた。
「っ!」
「ちっ外したか。だが次は外さんぞ。」
そしてその時だった。
「隊長!」
「お前は…?ケンタが指揮していた部隊のメンバーか?」
「それにお前は私の部隊の…」
ジュリとケンタの部隊メンバーが駆けつけた。
「ここから出ましょう。」
「あ…ああ。」
男は焦ったのか無線で通信をし始めた。
『地下基地に裏切った部隊が侵入。応援求む。外に出す前に全員射殺しろ。』
男が上から飛び降りてきた。
「俺をあまりキレさせるなよ。ゴミが。」
「隊長早く!」
男は走ってきた。
そして隊員が男に飛び掛かった。
「ここは自分が!早く行ってください!」
「どけよ。」
パン!
男は隊員の頭を打ち抜いた。
(容赦がまるでない…これが国の本性。ケンタごめん私行くね…。)
私はなんとか出口まで辿り着いたが、目の前にはそれを阻止するように武装した兵士が銃を乱射した。
「ここからあの女と裏切った兵士共を出すな!殺せ!」
私も銃で対抗した。
そして後ろからさっきの男がやってきた。
「あんまり手間取らせるなよ。」
「隊長。手榴弾を投げるのでそのうちに!」
「あ、ああ。」
隊員は手榴弾を男の方と出口を塞いでる方へと二手に投げた。
すると大きく爆発した。
男は寸前で回避したが、怪我を負ったのか立ち上がれない状態だった。出口の兵はモロに受け瀕死状態だった。
「よし今だ。お前らもついてこい。」
「はい!いくぞみんな!」
部隊のメンバーを引き連れ脱出した。
この先に車を停めています。そこまで走りましょう!
いろんな感情を押し殺し私は軍用車両に乗り込んだ。
「隊長の事は本当に残念でした。もっと俺たちが早くついていれば…。」
「お前たちのせいではない。私のせいだ。私があの時もっと耳を傾けていればケンタは…。」
そして私はポケットから血の付いた鍵を取り出した。
(『フェニックス』…。)
「あまり時間が取れない中でのデートで何度か乗せてもらい操縦もさせてもらった。綺麗な空。そして空から見える美しい街並み。でも一番、私が見たかったのは優しく笑ったケンタの顔だった。」
「それがもう見られない…。」
私は涙をこらえるのに必死だった。体が震えて今にも心が壊れそうになっていた。
(ケンタ。私は生きてケンタがしようとしていたことを成し遂げるから。だから…空で見守っていて。)
「横田基地へ行きなさい。」
「横田基地ですか?」
「そうだ。」
「了解です。」
そして車は基地前で止まった。
いつもここに来るときはケンタが横にいた。
(今は思い出に浸っている場合ではない。)
そして私たちは戦闘機が止まっている場所に行った。
「あった。これだ。」
そこにはいつもちゃんとケンタが手入れしていた綺麗な状態の【フェニックス】があった。
「隊長これはケンタさんの…。」
「ああ。ケンタが最後に託してくれた希望だ。」
私は国から支給されていた国の紋章を外し、無線機を踏んで壊した。
私は【フェニックス】を見つめ呟いた。
「【フェニックス】…。」
「え?」
「私は新たな国【フェニックス】を作る。そして国と真正面から戦う。いつか争いがなく誰もが幸せになる国を目指して。」
「ついていきます。」
「自分もです。」
「私もです。隊長…。いやリーダー。」
「フェニックスは空を得意とする。各自戦闘機に乗れ。目指すは三大都市の1つ愛知をまずは占拠する。そして全国に仲間を集め東京にまた戻ってくる。」
「はっ!」
(ケンタ。また戻って来て無事目的を果たせたら墓を立ててあげるからね。だからそれまで待ってて。)
「それじゃあいくぞ。 飛べ『フェニックス』!
『フェニックス』と何機かの戦闘機は東京の上空を飛行した。 町は既に煙が上がり戦闘が始まっていた。 そんなものには目もくれずジュリは前だけを見ていた。
これが『フェニックス』が出来るまでの話だ。
ジュリが話し終わるとティナは涙を流していた。まるで自分を責めるように。
今まで『フェニックス』はティナと同じ目標で戦っているだけの存在だと思っていたが、本当の黒幕がまさか自分の父親だという現実に受け入れられなかった。そしてその娘であるという事実もまたティナの心をかき乱した。
「私のせい…?」
「私のせいで近代町のみんなも…セイジの娘さんもレンのお母さんも死んだ…?未来の私はそんなこと一言も言っていなかった…。嘘をついた?隠していた?偽善者ぶっていた…?」
ジュリは否定した。
「それは違う。ティナのせいではない!ティナは何も知らなかったんだ。悪いのはティナの…実の父親だ。ティナは関係ない。」
「違う…私がいなければ…過去が見える邪魔な私がいなければ私の周りの人間は死ななかった!」
ジュリはティナの両肩を強く持った。
「それは違う!国の計画が動き、それに逆らった時点でどのみちティナの故郷の人達もケンタも死んでいた。だからティナは悪くない。」
それでもティナの精神は崩壊寸前だった。
ティナはまっすぐ前を見つめ徐々に光が目から消えていった。
この世の終わりを見るように…。
【ティナは『フェニックス』のリーダーであるジュリに会った。そこで衝撃的な回想を聞かされた。ジュリの婚約者の死によって結成された『フェニックス』は信じたくないほどの悲しみを背負っていた。そして黒幕がティナの父親だと知ったティナはその事実に言葉を失うのであった。】




