第九話「Unibirth」2
―――そして、日曜日当日、樋坂家。
「真奈、準備できたか? そろそろ時間だから行くぞ」
「あいです! おにぃ、楽しみだね!!」
そういって階段から降りて来た真奈はいつも小学校へ登校するときに着ている制服姿だった。ワンポイントに羽の付いた白いベレー帽と赤を基調とする制服にチェック柄のスカートは真奈のお気に入りにすっかりなっていた。
「制服で行くのかよ……」
「そうなの~! ”ファミリア”の人にもちゃんと成長したところ見て欲しいから!」
挙動不審なくらい落ち着きのない上機嫌な真奈がスカートをヒラヒラと揺らしながら俺の横にくっ付いて来る、元気な真奈の姿を見るとこっちも嬉しくなって、ついなんでも許してしまいそうになるほどだった。
きっと舞や”ファミリア”のスタッフも真奈の制服姿を見れば、可愛さのあまりあっという間に見世物になってしまうことだろう。
そういえば、真奈のためにパーティー用の服も用意してあるって光が言ってたっけ……なら心配いらないか。俺は思い出したようにそのことに気付き、制服姿のまま行こうとする真奈を止めることをやめた。
「今日はたつやにぃも来てくれるんだよね? マナのお誕生日お祝いしてくれるんだよね?」
「そうだぞ、”ファミリア”まで向かって行けば先に待ってるはずだ。だから、俺たちも行くぞ、今日は誕生日パーティーだ」
今日は真奈の誕生日。昨年は唯花の家で誕生日パーティーをしたが、唯花の体調が依然として優れないこともあり、”ファミリア”で達也を呼んで軽い誕生日パーティーをすることにしたと、”真奈には直前まで説明していた”。そうすることで光と計画したサプライズパーティーは順調に当日を迎えることが出来たのだった。
柄にもなく俺は今日の誕生日パーティーを緊張しながら迎えた。
実のところ真奈や達也を”ファミリア”に誘うだけで、後のことはほとんど光に任せてしまったのもあった。それは光の好意で光も楽しみにしてくれているから納得しているが、上手くいくかどうか、その不安は俺の中にまだ残っていた。
「うん、ありがとなの、おにぃ」
真奈は自分のことを大切に考えてくれていると分かっていて、感謝の気持ちを口にした。真奈は、俺の気持ちを気遣って永弥音家で誕生日パーティーが出来ないことも、唯花が今日の誕生日パーティーに来ないことも咎めることはなかった。
俺は、唯花と会わせてやれないことを悔いる気持ちはありながらも、唯花の名前を出すことはしなかった、今はそれが今日を楽しく過ごすために、真奈のためだと思った。
俺は真奈を引き連れ樋坂家を後にすると、創作料理店”ファミリア”へと向かうため、焦る気持ちを抑えながら歩き始めた。
天気予報によれば今日の日曜日は一日晴れだそうで、空からは眩い太陽の光が降り注いでくる。
「おにぃ、きんちょうしてる?」
「そ、そんなことないって……」
「うにゃにゃん、そんなこといって、やっぱりきんちょーしてる!! 手が汗ばんでるよ」
「そっか、バレバレだったか……」
「バレバレなの。おにぃががんばってるときって、ほんとうに横から見たら分っかりやすいんだから!」
手を繋いで歩く制服姿の真奈が嬉しそうにこちらを向く、小さな身体なのに、真奈は相変わらず頭が良くて、なんでもお見通しなのだった。
「だいじょぶだよ、そんなにしんぱいしなくても、ちえは許してくれるよ」
真奈が勇気づけようと言ってくれるのは、今の俺には何より嬉しかった。
”ファミリア”の近くまでやってくると、眼鏡を掛けた達也が待ち伏せていた。
俺は達也と合流し、そのまま緊張した面持ちで”ファミリア”へと向かうのだった。




