第九話「Unibirth」1
「……光、実は相談があるんだ」
午後十時、俺は光に通話を掛けた。
「どうしたの浩二君? 珍しいね、困った事でもあった?」
今、光はこの時間になって突然何の相談かと思考を巡らせながら話していることだろう。親しい間柄でありながら、頭のいい光のことだ、こちらの意図を先んじて察しようとしていることは分かった。
「……そうだな、困ってると言えば困ってる」
「そっか、もしかして、お姉ちゃんの事かな?」
光が”お姉ちゃん”と俺と会話をするときに言う人物は一人しかいない、知枝と出会った時に、俺の家で介抱することになった時に、結局知枝を迎えに来てくれたのは光だった。いつだって頼りになるのは光だったのだ。
そして、いよいよ行き詰っていた俺は光に相談をすることにしたのだった。
*
「お姉ちゃん、今度の日曜日は空いてるかな?」
光は水原家に移り住み二か月あまり経過してすっかりダンボール箱から家具の配置まで片付いた知枝の部屋へと訪れた。
「えっ?! もしかして、お誕生日祝ってくれるのかな? かな?」
自分の誕生日である今度の日曜日の話題が出て、光の方に向き直りながらパッと花開くように明るい笑顔を浮かべた知枝だった。
「うん、舞と相談して、”ファミリア”でお食事をって思ってね。
舞が手作りケーキを用意してくれるってさ、行くでしょ?」
「うんうんうん、もちろんだよ!! 未来のパティシエのケーキを食べれるなんて行くに決まってるよ!!」
「……いや、”ファミリア”は創作料理店だってっ」
「うふふふっ、舞のケーキか……舞のこと、諦めずに仲直りに出来てよかったなぁ、そう思うでしょ? 光?」
”ファミリア”で働き始め、年々料理の腕からお菓子作りの腕までプロ級に上達していく舞の姿は知枝から見ても誇らしく思うのだった。
「もぉ……頭の中はケーキでいっぱいじゃない。
それじゃあ伝えたからね、当日は僕と一緒に”ファミリア”に行くからよろしく!」
光は呆れた様子で話しながら自然と距離を縮めてくる知枝に動揺し、約束を取り付けたところで部屋から立ち去った。
(大丈夫、お姉ちゃんには勘づかれてないはず……浩二君、そっちも頼んだよ)
部屋を出た直後、緊張を抑えていたため心臓の鼓動が早くなるが、光は今のところ計画が順調に進んでいることに安堵するのだった。




