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魔法使いと繋がる世界EP3~Clover destiny & World end archive~  作者: shiori


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第七話「断罪される救世主」3

 公園からの帰り道、梅雨の季節が始まりを告げるような突然の雨が降り始めた。


「くそっ!! くそっ!! くそぉぉ!!」


 俺は降り始めた雨が思いのほか雷雨となってスコールのように激しかったこともあり、家路までの道のりを懸命に走った。俺と同じく傘を持っていなかった手ぶらの知枝も今頃雨に濡れているだろうが。だけど、あんなことがあった後で、引き返すことは出来なかった。


 家までの道のりを走り続け、呼吸が乱れる中、家の前までやってくると、真奈が玄関の前で俺の帰りを待つように立っていた。


 救われない気持ちで帰ってきたのに、さらに救いようのない対面だった。


「どうして、家の外で待ってたんだ、家の中で待っていればよかったのに」



「おにぃ、ちえおねえちゃんを叱らないでほしいのです」



 はっきりと真奈は言った。もうすべてを悟っているようだった。


「なんだよそれ……全部、さっきまであったこと知ってるみたいじゃないか」


 反射的に言葉が口を付いて出ていた。まだ、俺は信じきっていなかったのだろう、いや、無自覚すぎたのだ、知枝と真奈の絆の深さを履き違えていたのだ。


 俺は無意識に、自分のしたことを理解してくれると思っていた。

 悪いのは知枝で、俺や唯花ではないと……。しかし、真奈は俺よりもずっと出来た妹で、やり場のない怒りを知枝に向けていた俺よりもずっと、大人だったのだ。



「知ってますですっ!! あたりまえのことなのです。ちえとマナはまほうつかいのキズナでつながっているのです。だから、ちえのかなしいきもち、くるしいきもち、さびしいきもち、ぜんぶわかります。

 

 今もずっとこうえんで雨にぬれて、くやんでいることも。ぜんぶわかってしまうです。


 だから、おにぃ、ちえとちゃんと仲直りするですよ、これは、マナのおねがいです」



 本当に知枝の心の声が聞こえると、そう言わんばかりに涙ながらに俺の服を掴み強く訴えかけると、胸に顔を押し付けて真奈は感情が決壊したのか本気でそのまま泣き出し始めてしまった。


 真奈はとっくの昔から知枝を俺や唯花と同様に大切に想っていて、テレパシー能力を通じて、知枝のことが分かるようになっていたのだ。



 俺は知枝のあらゆることが半信半疑だったのだと思う、あの男たちを気絶させた超常的な力も、自分を魔法使いと呼び、黒い服を身にまとう姿も、全部半信半疑だったのだと思う。


 でも、知枝は稗田家の人間で、その家系には多くの著名人がいて、知枝は多くの責任を背負いながら、次期後継者として育てられ、生きて来たのだ。



 俺が気付こうとしなかっただけで、知枝はたとえ笑顔でいるときだったとしても、いつも不安を抱えていたのかもしれない、怖がられているかもしれないと思って……。でも、知枝は自分のことを打ち明けてくれた。俺はそれを単純に理解して、その重要さに気付こうとしてこなかったのだ。



”知枝は信じて欲しかったんだ、自分自身のことを”



 俺はそれを裏切った、その事に俺はやっと気付いた。



「ちえおねえちゃんは命をかけてマナのことを救おうとしてくれました。


 ちえおねえちゃんはマナにとって命のおんじんなのです、それでもおにぃはちえのことが許せませんか? 


 ぜんぶ、こんなことになってしまったのはしんぱいさせたマナがわるいのです、叱るならマナにしてほしいのです。


 うにゅ……おにぃはちえおねえちゃんを許してくれますか?」



 真奈の優しさに目を覚ました俺は、真奈をぎゅっと抱きしめ、謝った。



「ごめんよ真奈、真奈を守ってやれなかったのは俺の責任だ。


 知枝も悪くない……っ、ほんと、気付くのが遅くなってごめんっっ」



 雨の音が異様に響き渡る中、真奈の肩の力がようやく抜けていくのが分かった。



「いいのです、おにぃのつらいきもちもわかるです。


 マナは元気にここにいるですから、おにぃも元気を出すですよ」



 俺の頭を撫でてくれる小さな真奈の手のひらが、心に染み渡っていく。

 真奈が見せる強さも優しさも、全部俺は受け止めてやりたいと思った。



「ほら、ゆびきりですよ、おにぃ、ちゃんとゆびを差し出すです」



 真奈に言われるがままに、俺は泣きながら真奈と指切りをした。


「おにぃ、おぼえていてください。ちえは、とてもじゅんすいなココロをもったまほうつかいだって」


 真奈は俺との会話の中で、もう、知枝をお姉ちゃん付けしなくなっていた。

 それはきっと、真奈なりの知枝への恩義も含めた、信頼の証なのだろう。


「俺、仲直り……できるのかな……」


 色んな事が一気に巻き起こって感情がぐちゃぐちゃになっていた俺は、気付けば真奈に甘えていた。


「おにぃ、泣いてます。それは、ちゃんと向き合おうとしているあかしなのですよ」


 俺は真奈と一緒に泣いた。真奈の小さな指が、俺の目から零れるしずくに優しく触れる。それで、俺の中にあった苛立ちはすっかり全部、跡形もなく消え去っていった。



「うん、遅くなったけど、夕食まだだったよな……。

 安心したわけじゃないけど、一緒に中に入って食べようか……メシ作る時間も待てないから、カップラーメンでもいいか?」


「マナはおにぃといっしょなら、それだけでじゅうぶんいいのですよ」


 雨が強く降りしきる中、俺は真奈の手を握り、一緒に家の中に入った。


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