スライム戦記
大陸には五つの国があった。
農業が盛んな『肥沃な国』
質の良い鉄鉱石と加工に優れた『鬼の国』
高度な魔法の扱いに長けた『魔法の国』
人の形をした神を信じる『信仰の国』
様々な物の加工と唯一港があり貿易ができる『貿易の国』
――――戦場跡で不意に気づいたスライムは、自身に『意志』がある事に気づいた。
誰の物か分からない眼球を携え、水面のような体を震わせる。人は彼の同胞を殺し、安堵の表情を浮かべる。意志のある彼には気付けずに。
スライムは考えた。
自分達が殺される理由を、自分に意志がある理由を。
前者は簡単だった。自分を含めた他の同胞も、人を理由もなく食っていたから。
溢れる憎悪がなんだったのか理解したスライムだが……長い年月、人と関わらず生きて尚分からない事があった。
それは後者だ。
自分になぜ意志があるのか、それだけはどうしても分からなかった。
……ある日、風の噂で化物にすら慈愛を向けるある国の王妃の話を聞いた。
彼はそこへ向かった。その王妃に合えば何かがわかるかもしれない、と。
城を守る為に作られた溝の底、彼は人を襲わずに住みだした。
いつも誰の物か分からない眼球を上に向け、王妃に会えることを願い……
答えは未だ見つからない。
だが代わりを見つけた。友人であった王と王妃、スライムはその意志を継ぎ、今も『底』で守り続けている。
彼らとの約束を果たす為に。
農業が盛んな『肥沃な国』
質の良い鉄鉱石と加工に優れた『鬼の国』
高度な魔法の扱いに長けた『魔法の国』
人の形をした神を信じる『信仰の国』
様々な物の加工と唯一港があり貿易ができる『貿易の国』
――――戦場跡で不意に気づいたスライムは、自身に『意志』がある事に気づいた。
誰の物か分からない眼球を携え、水面のような体を震わせる。人は彼の同胞を殺し、安堵の表情を浮かべる。意志のある彼には気付けずに。
スライムは考えた。
自分達が殺される理由を、自分に意志がある理由を。
前者は簡単だった。自分を含めた他の同胞も、人を理由もなく食っていたから。
溢れる憎悪がなんだったのか理解したスライムだが……長い年月、人と関わらず生きて尚分からない事があった。
それは後者だ。
自分になぜ意志があるのか、それだけはどうしても分からなかった。
……ある日、風の噂で化物にすら慈愛を向けるある国の王妃の話を聞いた。
彼はそこへ向かった。その王妃に合えば何かがわかるかもしれない、と。
城を守る為に作られた溝の底、彼は人を襲わずに住みだした。
いつも誰の物か分からない眼球を上に向け、王妃に会えることを願い……
答えは未だ見つからない。
だが代わりを見つけた。友人であった王と王妃、スライムはその意志を継ぎ、今も『底』で守り続けている。
彼らとの約束を果たす為に。