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人との繋がりを信じた旅人  作者: ペンぎんさん


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雨の日と担任


 雨が降っていた。


 俺は傘を差しながら、校門の前に立っていた。


「…………」


 ただ立ち尽くしていた。


 しばらくして後ろを向き、その場を離れようとした瞬間だった。


「夏! どうした?」


 聞き慣れた声がした。


 振り返ると、担任がこちらへ走ってきていた。


「こんなところで何してるんだ? 早く教室入ろうぜ」


 俺はうつむいたまま動かなかった。


 すると担任は少し表情を変えた。


「夏……何かあったのか?」


 そして優しい声で続ける。


「俺で良かったら聞くぞ」


 俺は少しだけ傘を深く被った。


「別に、あんたに言って解決できるような話じゃないし」


 担任は少し渋い顔をしたが、すぐに口を開いた。


「確かにな。けど聞いてみないと分かんないだろ、そんなの」


 そう言って笑う。


「とりあえず中に入ろう。その後で聞くから、な?」


 担任は俺に微笑みかけ、手首を掴んだ。


 反射的に振り払う。


「な、何すんだよ! 触ってんじゃねーよ!」


 思わず声が大きくなる。


「てか、何で俺が校門前にいるの分かったんだよ!」


 怯えたような声で聞くと、担任は少し笑った。


「何分も雨の日に校門前で突っ立ってたら、誰だって目に入るわ」


 そう言って肩をすくめる。


「それに今はクラスの皆、体育で体育館にいるからな。教室で聞かせてくれよ」


 そして少しだけ真面目な顔になった。


「俺ももっと夏のこと知りたいし」


 そう言って歩き始める。


 俺は少し迷った後、その後ろについていった。


 教室に着き、自分の席へ座る。


 うつむいたまま黙っていると、数分の沈黙が流れた。


 先に口を開いたのは担任だった。


「あー……このまま下向いたままか?」


 冗談っぽく言う。


「話したくなったら話してくれていいぞ。それか個室行くか?」


 俺は顔を上げ、担任を睨んだ。


「あんたはどうしてそこまで俺に干渉する?」


 担任の笑みが少し止まる。


「あんたにメリットなんて無いだろ。頼むから俺に関わらないでくれ」


 担任は少し複雑そうな顔をした。


「メリットとかそういう以前に、俺は夏の担任だから聞くんだよ」


 その言葉を聞いた瞬間、俺の顔が険しくなる。


「担任じゃなかったら聞かないのかよ」


 自分でも驚くほど強い口調だった。


「大人って皆おんなじ感じなんだな」


 胸の奥に溜まっていたものが漏れ出す。


「俺は聞いてほしいなんて言ってないし、あんたのことも信用してない。このクラスの皆もだ」


 そして最後に言った。


「だから俺に関わらないでくれ」


 担任はしばらく黙った。


 そして真剣な顔で頭を下げた。


「夏からしたらそう聞こえたのかもしれないな」


「すまなかった」


 俺は目を見開いた。


 大人が子供に頭を下げるなんて思ってもいなかった。


 担任は顔を上げる。


「何があったのか俺には分からない」


「だけど少しずつでいい。俺を、周りを信じてみてくれ」


 そう言って微笑んだ。


「もし俺を信用できるようになったら、その時は話してくれるか?」


 俺は下を向いた。


「……あんたがそこまでするとは思わなかった」


 小さく呟く。


「俺みたいな子供に頭を下げるなんて」


 そして続けた。


「他の大人はしなかった」


 その後、担任は言った。


「とりあえず個室で世間話でもしないか?」


 教室を出る前に振り返る。


「あ、そうそう。職員室に寄るから先に行っといてくれ」


 そう言い残し、担任は去っていった。


 一人取り残された俺は、ふと思った。


(変な人だな)


 そう思いながらも、気づけば個室へ向かっていた。


 しばらく待っていると、担任が袋を持って入ってきた。


「よう、待った?」


 そう言って机の上にお茶とお菓子を並べる。


「ほら、好きなの食え」


 俺は思わず口を開いた。


「教師が生徒にこんなのあげて良いのかよ」


「他の生徒には内緒な?」


 担任は笑う。


 俺は苦笑しながらお菓子を手に取った。


 一口食べる。


 そして思わず口に出た。


「何にも入ってない……なんで?」


 担任の表情が変わる。


「何も入ってないって、どういう意味だ?」


 俺は目を逸らした。


「……何でもない」


 それ以上は言えなかった。


 黙々とお菓子を食べていると、担任が話題を変える。


「今のクラス、どう思う?」


 俺はお茶を飲んで答えた。


「別に。普通なんじゃないの?」


「関わられないならそれでいい」


 少し間を置く。


「信用はしてないけど」


 担任は静かに頷いた。


「そっか」


 そして立ち上がる。


「まあ、とりあえず世間話もしたし教室戻るか」


 俺も小さく頷いた。


 相変わらず信用はしていない。


 それでも――。


 少しだけ。


 本当に少しだけ。


 あの担任のことが気になっていた。

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