そんな顔 ◆ベルフリーデン視点◆
満身創痍で崖から落ちる寸前で先輩(天翔騎士エルファー)に助けてもらって事なきを得た。
その後、特級モンスターとの戦闘による霊装騎纏の反動と灼砲剣使用時の火傷でボロッボロの俺の体調を顧みず、先輩は気絶してる間の事をひたすら聴取してきた。
「……ん?は?特級が2体もいたのか?事前にそんな報告はないぞ?」
「いや、その事前の報告に聞いてた【特級(水妖妃)】の手下に〈特級(黒豹蛇)〉が混じってたんすよ……てか、先輩。俺もう疲れたんすけど、身体ボロボロなんすけどっ」
「……いや、状況説明が先だ」
「…………はぁ……」
(なんなの?この人。じいさんにブチのめされて伸びてただけのくせに……)
うんざりしてる中、メリーは目の届く範囲で息を整えている。
《…………ザザーーンッッ……》
微かに波を音が聞こえる。
それに反応してメリーが崖の上から海岸の方を確認しに行くのが視界の端にうつる。
くどくどと聴取が続く中、少し神妙な顔したメリーが確認を終えて戻ってきた。
「…………じゃ、アタシ行くから。あ、アンタ、ちゃんと治療して休みなさいよ。ボロボロなんだから」
「ん?あ、あ!メリー……あのさ!俺が動けるようになったら……一緒にっっーー
『ーーオイ!お前からも事情聞くから勝手に行くなっっ』
空気の読めない先輩は俺の言葉を遮ってメリーを引き止める。
「ーーはぁ!?何言ってんのよ!嫌に決まってるでしょっ!!ーー」
「従わないと言うなら騎士団としてお前を……ーー
「ーー先輩っ!!ちょっと!!ーー」
《……ガシッ……》
メリーを拘留するような意図を示す先輩の腕を掴んだ……まだ、霊装騎纏の反動で大した力も入らない腕をプルプルさせながら。
「ーー?何の真似だ?」
「頼みます。先輩。見逃してやって貰えませんか?……か、彼女は俺の恩人です。メリーの助けがなければ、俺は特級に殺されてました……」
「ーーフン!関係ない。それとこれとは話は別……ーー」
《……ガシッ!……ググッ……》
制止する手を振り解こうとするが俺は先輩の腕を離さない。
「…………お前……」
「……マジで……お願いしますよ。先輩……」(……クソッ、力が……入んね……)
先輩はしばらく俺を凝視する。
「……フンッ!」
《ーーガバッーー》
先輩は鼻を鳴らして、意図も簡単に俺の手を振り払う。そして、視線をメリーに向ける。
「ーーオイッ!次に会ったら容赦しないぞ。あと、連れのジジイにもそう言っておけ!」
「……………………」
メリーはあえて、何も言い返さずの場を去っていった。去る時、1回だけ……振り返って俺の方を見た。
……気にかけてくれたんだろうか……そうだと……嬉しい……。
先輩は視線を俺に戻す。
「……フン。いつもクソ生意気なお前が……珍しいな。どうせまた、いつもの通り少し遊んで捨てるだけだろう?」
「彼女は……、メリーはそんなんじゃ…………他の女とは比べられねぇっすよ……マジで」
名残惜しそうにメリーが去った先を見つめる。
「……お前……本気であの女のこと……。ハッ!いやいや……あのお前が!まさかな!……ハッ!……」
「……………………」
茶化すように先輩は鼻で笑う。それに反応を示さず、メリーが行った後を変わらず見つめ続けた。
「……オイ、何か言えよベルフリーデン……」
「……………………」
「…………ベルフリーデン……?」
「……………………」
「…………オイッ!」
「……え?何すか?」
「………………オイオイオイ……
…………お前の【そんな顔】、初めて見たわ……」




