天敵 ◆メリー視点◆
霊装騎纏を唱えたベルフリーデン。纏う光が〈白〉から〈赤〉へ変わる。それと同時に灼砲剣から放たれる蒼い炎の火力が爆発的に上がる。
《ーーゴォォゴォォオオオオオオオオゥゥゴォォゴォォオオオオオオオオオオオオオオゴォォオオオオオオオオオオゥゥゥゥッッッッ!!!!ーー》
《ーーボコォッ!ボコォ!ボコボコォッ!!ボコボコボコボコッッ!!ボコボコォッッッッ!!ーー》
『ーーァアアアアーーッッ!!ァアアアアッッ!!ーーアツイィィィィッッ!!アツィィィィ!!ァアアアアァァーーッッ!!ァアアアアアアアアーーァアアアアッッ!!ーー』
水妖妃は、自身を包む水の玉ごと地面に落ちて熱さに悶え苦しむ様を見せる。落ちて尚、形を保とうとする水の玉の中はボコボコとした沸騰音と主の断末魔を反響させる。
「ーーハァッッ!!ハァッッ!!ざ……ざまぁみやがれっ!!グフッウッ……ガハッッ!!ハァ!ハァ!ハァ!ハァッッ!!ーーーー」
この尋常ではない火力を維持するベルフリーデンにも相当な負荷がかかっていることが息遣いだけで分かる。
「ーーちょっ!アンタ……大丈夫っ!?ーー」
「ーーハァ!ハァッ!ハァッ!……俺のことはいい……!そんなことより……メリー……絶対に近づくなよ?……冗談じゃなく……一瞬で【溶けるぞ】……ハァッ!ハァ……ハァ……ハァ……クソ……ヤバい……もう足が……」
片膝を地面に落として体勢を崩すベルフリーデン。火力が少しずつ落ちていく。それに乗じ、目の前の水妖妃は上体を起こし始める。
『……イマスグニ……コロシテ……ヤル……』
ボコボコと沸騰する水の玉の中でベルフリーデンに向けて手をかざし、魔法を使う所作を見せるが…………………何も起こらない。
『…………ナゼダ……?……ドウシテ…………?』
「……ハァッ!ハァッ!…………ん?なんだ?……ハハッ……俺に見惚れて……攻撃出来ないってか?……」
体勢を崩して尚、蒼い炎を放出し続けるベルフリーデンは余裕がないくせに疑問符混じりに軽口を叩く。
アタシも水妖妃と同じ疑問を持っていた。この【蒼い炎は何かがおかしい】。
良ぉく凝視してみる……。
「……分か……っった!!ま、混じってるんだ……〈炎の魔力と水の魔力が〉……。だから、魔法そのものが安定しないんだ……」(元から生成してる水の玉も維持するのでやっとのはず……)
こんなにも【溶解性】の高い魔力があるなんて知らなかった……もしかしたら唯一無二かも知れない。
蒼炎騎士ベルフリーデンはまさに……
……【魔法を扱うものの天敵だ】。
「ーーハァッ!!ーーハァッ!!ーーハッ!……しぶといなっ!……まだ火力が足りないってのか!?……だったら!上げてやろうかっっ!!?ーークッ!ーーハァッ!ハァっ!……ーー」
『ーー……ツヨガルナヨ……ムシケラ……ガァァッッ!!ーー』
《ーーゴボボッッ!!ブシャーッッ!!ーー》
鬼の形相をする水妖妃はかろうじて水重線を発動させる。
「ーー多段結界っ!!ーー」
《ーーバシャッッ!!……シュゥゥウウウウゥゥ…………》
ベルフリーデンへ放たれた水重線をアタシの魔法で防ぐ。弾かれたブロッシャーは瞬時に蒸発し、アタシの多段結界は魔力が【混じって】すぐに瓦解する。
「……助かった……メリー……でも、わりぃな………ハァ…………俺……もう……」
既に限界のベルフリーデンは意識を失いかけている。直後、炎が急激に勢いを落とす。
「ーー十分よ!【ベルッ!】良くやったわ!後はアタシに任せなさいっ!!」
(……もう目眩もない、反動も落ち着いたわ。……打てるっ!!ーー)
『ーーーーナメルナァァアアアアッッ!!……
ーー【ディブリ・シュト・エストロナイオ】ッッ!!ーーーー』
「ーー【神弓魔法ディルアンク・ガ・トロン】ッッ!!ーー」
水妖妃が激昂し、唱える。それと同時にアタシも唱える。
《ーーゴォォオオオオオオオオゥゥッッ!!ーー》
轟く雷鳴と共に天から一直線に落ちる雷撃は水妖妃に直撃し、辺りは土煙を舞い上げる。




