格好つけよって
沿岸に向かう騎士達が前線を押し上げることが出来ずにモタモタしてるのが遠目に見える。
「オレは商会の依頼もあるし、ちょっと手伝ってくるわ。じいさん達は先に帰っときな」
「ーーあっ!ちょ……ーー」
メリーが声をかけようとするがダンキュリーは颯爽とモンスターの方へ走っていった。
「おや?ダンキュリーさんに何か用じゃったか?」
「いや、大したことじゃないんだけど……」
歯切れが悪いメリー。
「さっきポーションを無理矢理に飲ませられた時にダンキュリーさんに触れたじゃない?その時に魔力の残量が分かったのよ……」
「ほほぅ……それで?」
「減ってる、なんてものじゃないわ。ほとんどゼロよ!ヴォルグなんて一発だって打てないわよ……たぶん」
「ふむ……」(そんな状態にも関わらず、メリーにポーションを全部やってしまったんか……)
メリーは怒ったような顔で心配の様子を見せる。その話を聞いていたイズも心配そうな顔を老体に見せる。2人の様子を見て呆れたように息が漏れる。
「はー……全く、あの男は、本当に顔に似合わず……優しいというか……不器用というか……損する性格じゃのう」(格好をつけよってからに)
「ねぇ、さっきのポーションもう1本ないの?」
「ない。最後の1本じゃった」
「……そう」
「じゃからワシらもダンキュリーさんの手伝いに行くぞい。メリー」
「え?あ、うん!行こう!」
少し驚いたが、すぐに良い返事をするメリー。
「ぼ、僕も!行きます!」
「イズや、お主は……先に宿屋へ……えっと……ーー」
「…………むむむ……」
イズの表情と無言の圧が、言いかけた老体の言葉を止める。
「……えっとーー……」
(……いつ戻れるか分からんし、追っ手のこともあるし……長時間1人にしておくのは得策とは言えんか……)
思考が巡る中、メリーがイズの頭を撫でながら老体に視線を向ける。
「この子はアタシが結界魔法でちゃんと守るわよ、だからみんなで行きましょ」
「お、お姉ちゃん!」
メリーからの意外な提案に驚きと喜びを隠せないイズ。
「あい、わかった。ーーただし!特稀魔法は絶対に使わんことっ!ええの?イズ」
「ーーは、はい!」
イズにそれだけ約束させて一緒に行くことを了承した。




