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【本編完結】神様のうっかりで転生時のチートスキルと装備をもらい損ねたけど、魔力だけは無駄にあるので無理せずにやっていきたいです【修正版】  作者: きちのん
第三章

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81 もう黙って寝てろよ!!

「お邪魔しまーす☆」


 そう言いながら俺のベッドに入り込んできたのは、ロワりんだった。


「あのう、何をしてるんですかね……?」


 俺は寝ぼけ眼をこすりながら聞いた。


「ほら、さっき言ってたじゃない。ピアっちと一緒の部屋を見張るって。それで今日は私が当番なんだ」


 そういえば、そんな話もあったな。

 って、今夜からなのかよ。明日からでいいじゃないか。

 予備のベッドだって運び込んでないし。


「それは分かった。で、なんで俺のベッドに入ってくるの?」


「……? だって私が寝る場所って、ここしかないじゃない?」


 まったく何を言っているのか分からないという顔をしている。

 ロワりんときちんと向き合うとは言ったけどさ、ベッドの中で向き合うとは言ってないからね?

 仕方ない、ここはピアリに助けてもらうとするか。


「リョウヤ君。今夜のボクは何も見えないし、聞こえない設定だから自由にやってね」


 絶妙なタイミングで、ピアリが自分のベッドから無責任な事を言ってきた。

 そこは味方になってくれないのかよ!

 本当にピアリと契約を結んだのか、怪しくなってきたんですけど。


「……だってさ?」


 そう言って、大義名分を得たロワりんが堂々と俺のベッドに入ってきた。

 髪を下ろし、ふんわりとしたワンピースのパジャマ姿で石鹸のいい匂いがする。

 お風呂上りなのかな。

 ちょっとドキドキしていると、彼女がいきなり抱きついてきた。

 それはマズイ! 今密着されたら色々と本当にマズイ事になるから!!


「むふふふふ。今夜はセッキーを一人占めだ~」


 くそう! そうやって俺の胸元に顔を埋めてすりすりしてくるな!

 思わず抱きしめたくなる欲望をなんとか押さえつけるが、いつまで我慢していられるか分からない。


 ……あ、駄目だったわ。


 俺の胸に顔を埋めていた彼女が、何かを言いたそうに上目遣いで俺を見つめる。

 顔が近いので、思わず目を逸らしてしまう。


「えっと、それは俺の生理現象です。お願いだから気にしないでください」


「この当たってるのって、まさか『聖剣』に例えられるアレ? それにしては、少し心許ない気が……」


 やかましいわ。

 ベッドから追い出すぞ。


「あのさ、こういう事は恋人になってからするものだから、あまりよろしくないと思うのですよ」


 リリナさんにあんな事を言ったくせに、我ながら物凄いヘタレっぷりである。

 そんな俺をロワりんがジト目で見つめる。無言の抗議ってやつだろうか。

 そして彼女が一呼吸置いて口を開いた。


「じゃあ、言うよ。私と付き合って下さい──」


 まさかベッドの中でそんな告白をされるなんて、一ミリも想像していなかった。


 ぐぬぬぬ……。

 いずれその話が出るのは覚悟していたが、こんなタイミングで卑怯だぞ。

 普通は告白されれば、嬉しくて舞い上がってしまう物なのだろうけど、俺の胸中は複雑だ。

 そんな簡単に答えてしまって、いいものなのだろうか。

 リリナさんに頼まれたから、ロワりんと付き合う? いや、それは違う。

 よし、まずはお友達──


「断わっておくけどさ、『まずは友達から』なんて言わないでよね?」


 いきなり退路を塞がれてしまった。

 これはもう、YESかNOかの二択で答えるしか選択肢か無いのだろう。

 どちらにせよ、聞き耳を立てているはずのピアリに聞かれるのは何か嫌なので、布団を被る。


 暗くてよく分からないが、布団を被った狭い空間で目の前にロワりんがいる。

 密着している事により、彼女の心臓の鼓動や息づかいが手に取るように分かる。

 逆に俺のも感じ取られているのだろうか。


 不思議と不快感はない。

 もしこれが、不快に感じていたら駄目だったかもしれない。

 俺は深呼吸した。


「……こんな俺で良かったら、お願いします」


 何故か自分から告白するよりも、緊張して声が震えてしまう。

 直後、ロワりんが息を飲んだのが分かった。

 そして俺の胸に顔を埋めたまま、静かに嗚咽を漏らし始める。

 彼女もきっと、物凄く緊張していたのだろうな……。

 そんな彼女を俺はそっと抱きしめた。


 ……生理現象が当たらないように若干、腰を引きながら。


 その直後、いきなり布団を引き剥がされて、顔面に枕を叩き付けられた。


「ぐへぇ!!」


「なんで泣かしてるんだよ!!」


 ピアリか!? 不意打ちとは酷いぞ!!


「お前! 何も見えない聞こえない設定じゃなかったのかよ!!」


「それとこれとは別だよ! そんな男らしくない事をするなんて許せないよ!!」


 俺の怒声にピアリが息巻いて掴み掛からん勢いだ。

 そこへ慌ててロワりんが俺達の間に入り、状況を説明する。


「ピアっち待って! 違うから、逆だから!! 受け入れてもらったの!!」


 まったく、どんな修羅場なんですかね。


「……えっと、ボクの早とちりだったみたいだね? ゴメン。続きはごゆっくり」


 やっと状況を理解したピアリがてへっと舌を出して、そそくさと自分のベッドに戻って行く。

 こんちくしょうめ。後で覚えてやがれよ。

 ピアリの乱入で気が抜けてしまい、少し部屋の外の空気を吸いたくなった。


「セッキー、どこに行くの?」


 ベッドから出ようとする俺にロワりんが不安そうな声を掛けてきた。


「……トイレだよ。先に寝てていいから」


 なんだか彼女が飼い主に置いていかれる子犬みたいな顔をしているので、ちょっと可愛く思ってしまった。


「リョウヤ君、ビッグベン? それともリトルジョー?」


 すかさずピアリがくだらない事を聞いてくる。


「もう黙って寝てろよ!!」


 ピアリが俺に対して遠慮が無くなってきた気がする。

 喜ばしいことなのか、それとも憂慮すべき事なのか……。


 しばらくしてから部屋に戻ると、二人とも寝ているみたいだった。

 ロワりんのいるベッドに戻る気にもなれなくて、ソファーに腰掛けて天井を仰ぐ。

 そして今日……もう昨日だろうか。様々な体験を思い浮かべては頭の中で整理する。


 地下ダンジョンからシーラを連れ出し、シーラが偉そうなおっさん達を脅して大騒ぎ。

 その後にピアリと契約を結び、メディア校長に夕飯をご馳走になり、リリナさんと話し合ってロワりんから告白を受けた。

 恐らく今後一生、こんな濃密な一日を送る事はないだろう。


 本当に疲れた……。ソファーに腰掛けたまま目を閉じた。




  ◆◆◆




 気が付いたら何もない神様空間にいた。

 さて、今回は何に対してツッコまれるのだろうか。若干不安になってくるな。



「ウェーイwww」


 突然背後から体当たりを食らってつんのめりそうになった。


「いきなり何するんですかね!?」


 振り向くとやけに陽気な神様がハイタッチと言わんばかりに両手を上げている。

 俺はそのまま黙って成り行きを見守ることにした。


「ウェーイ……」


 神様は静かに両手を下ろす。


「リョウヤ君、ノリ悪いよ……」


 神様が悲しそうな顔をするが相手にしない。


「なんで俺が陽キャのノリに合わせなくちゃいけないんですかね」


「ちょっと! 周囲の空気に合わせる事しかできない、頭の悪そうな男子学生なんて言ったら物議を醸すよ!!」


「いや、俺そこまで具体的に言ってないんですけど。それとも自己紹介ですか?」


「そんな事はどうでもいいや、それよりもさ──って、今なにか聞き捨てならない事を言わなかったかい!?」


 本当に面倒くさい神様だな。


「いえ、特に何も言ってませんよ。ところで、俺に話があるんですよね?」


「あ、そうそう。今回は君がやらかし過ぎて僕も笑いが止まらないんだよ。一体なんなの? 魔人の封印を解いて手懐けたり、まがい物と契約を結んだり。いやあ、本当に笑えるよ」


 よくは分からないけど、俺がやった事は神様にとっては喜ばしい事らしい。だからさっきのテンションだったのか。


「それにベッドの中で告白されちゃうとか、予想の斜め上を行く動きを見せてくれるよね。君って」


「そんな事まで覗き見するなんて、趣味が悪いですね」


 マジでドン引きだわ。

 まあ、今に始まった事ではないのだろうけど。


「ゴメン、ゴメン。でも覗き見ではなくて、見守っていると言ってほしいな」


「それ言い方変えてるだけで、何も変わってないじゃないですかね」


「まあまあ。プライベート空間とかは見ていないから。でも本当に今回はよくやってくれたよ。これで『世界の意思』の奴らにも一泡吹かせる事ができたし」


「その言い方だと、世界の意思とやらは神様と敵対している存在ですか?」


「……あまり勘が鋭いのも感心しないなぁ。取り敢えず、君が気にする事ではないよ」


 神様が急に剣呑な目つきになり、そのまま話をはぐらかされてしまった。

 いつも肝心な部分をはぐらかされるので、モヤモヤする。


「それよりもさ、君が一度に色々な事をするから周囲のみんなも疲れちゃってるんじゃないかな? ちょっとテンションがおかしかったでしょ?」


 またいつもの軽い感じの兄ちゃんに戻った神様が、普通の世間話をする様に言った。


「そう言われれば、ボケ倒していたと言うか……」


 ちょっとだけ、ミっちゃん達がウザかったと内心思った。


「それは心の防御反応かも知れないよ。一度に色々な事がありすぎたからね」


 考えてみると、いきなり魔人のシーラを連れ帰って仲間として受け入れ、直後にピアリの正体が判明したりバタバタしてたから、そりゃ精神的にも負担になるよな……。


「だからさ、一段落したらみんなでゆっくりしてみたら? 例えば君の実家に帰省してみたり」


「なんでそこで俺の実家が出てくるんですかね?」


「それはヒ・ミ・ツ。まぁいずれ分かるよ。じゃあ今回はこの辺で――」


 人差し指を立ててウィンクする気持ち悪い仕草をしながら、神様が一方的に話を打ち切ってしまった。

 結局またこのパターンかよ。

 気にしても仕方がないので、素直に目が覚めるのを待つ事にする。


「ああ言い忘れていたけど、前に言った無限回廊の僕のコレクションの件、頼んだよ──」


 現実で目が覚める直前、そんな声を聞いた気がしたのだった。

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