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【本編完結】神様のうっかりで転生時のチートスキルと装備をもらい損ねたけど、魔力だけは無駄にあるので無理せずにやっていきたいです【修正版】  作者: きちのん
第二章

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33 大事に着させていただきますの

~メルさま視点~


 リリナさんの買い物に付き添う形で、みなさんと一緒に街へ買い物に行きました。

 いつもながら、王都自慢の複合店の品揃えは驚かされてばかりです。

 せっかくなので、わたくしは薬の調合に使う器具をいくつか購入しました。


 わたくしと行動を共にしていたミっちゃんさんですが、途中でいなくなったと思ったら、不審者の如く周囲をせわしなく見回しながら書籍を購入していた様子。

 ご本人は、わたくしから隠れていたつもりなのでしょうか。

 一部始終を見ていたのは、黙っておいた方がよろしいかもしれませんね。


 ちなみにミっちゃんさんが購入する書籍は、大抵の場合がとても仲の良い殿方同士の物語です。

 人の趣味はそれぞれですので、わたくしからは何も申す事はございません

 それはさておき。


 買い物を終えて各自で昼食を済ませると、リリナさんのお引っ越しと新パーティーのメンバールームの清掃作業を再開です。

 わたくしはアンこさんと一緒に、リリナさんのお部屋を受け持つ事になりました。

 どうやら力仕事をさせないようにと、ミっちゃんさんとロワりんさんに気遣われた気がします。

 そのような気遣いは不要ですと、以前から申していたのですけど……。


 ちなみに重い荷物等は、あらかじめセッキーさんがリリナさんのお部屋に運び込んでくださっていたので、わたくし達の作業は家具の配置や荷物の整理といったところでしょうか。


 リリナさんは本がお好きでいらっしゃるみたいで、本棚に収納する書籍の冊数に少しばかり圧倒されてしまいました。

 書籍の内訳は、古代史・歴史学から魔導工学、資格取得の参考書や英雄が活躍する冒険小説に、少し甘酸っぱい恋物語まで多岐に渡って読まれていらっしゃるようです。


 流石にミっちゃんさんが好みそうな殿方同士の恋愛小説はありませんでしたけど。

 そのような事を考えていると、『お手軽! 薬殺の基礎』などという素敵な本を見つけてしまいました。


 ……どうしましょう。もの凄く読みたいです。

 後でリリナさんにお願いして借りられないでしょうか。


 ひとつ断っておきますが、誰かを薬殺するつもりはありませんよ。

 ただの好奇心ですからね。


 ふと、わたくしの隣で作業をしていたアンこさんを見ると、なにやら興奮している様子です。


「うわぁ! この『古代遺跡発掘の軌跡』って面白い本ですね。特に遠方の遺跡で発掘された遺物を違う遺跡に埋めて、そこで発掘されたように装った捏造事件の特集は胸が熱くなります!!」


 そう言って、アンこさんは片付けの手を休めて読書に夢中になってしまいました。

 わたくしはリリナさんと顔を見合わせて苦笑いです。


 本の収納作業の合間、気になるセッキーさんとの関係をリリナさんに聞いてみました。

 ですが、上手くはぐらかされてしまいました。

 リリナさんからすれば弟みたいなセッキーさんが、どのようにして彼女の心を掴んだのかをご本人から詳しく聞いてみたかったのですが……。

 あくまでも、『私はお姉ちゃんだから』の一点張りでした。

 中々ガードが固いお方のようです。


 本棚の整理もあらかた終わると、次は衣装棚です。

 この部屋はウォークインクローゼットまであって大変羨ましいです。

 リリナさんは大人の女性らしく、フェミニンな服が多い印象ですね。


 可愛らしい柄のワンピースを見つけてしまい、少しばかりテンションが上がってしまいました。


「この花柄のワンピースが可愛いですの。どこでお買い求めになったのですか?」


「ああそれはね、買ってはみたのだけど、私にはちょっと可愛すぎるかなと思ってぜんぜん着てないの。良かったらメルさんがもらってくれない?」


「よろしいのですか?」


 まさか頂けるとは思ってもみませんでした。

 一応は貴族の娘であるわたくしですが、古着でもまったく気にしません。

 むしろ贅沢を言っていたら、エルファルド神から天罰を受けてしまいます。


「私のお古で良ければこの辺のとかも、もらってくれるとうれしいな」


「ありがとうございます! 大事に着させていただきますの」


 そんなわたくし達のやり取りをアンこさんが羨ましそうに見ていました。


「私も、リリナさんのお洋服欲しいな……」


「私とアンちゃんとでは、サイズがちょっと合わないから……ごめんね。でも、これなんてどうかな?」


 リリナさんがパステルカラーのキャスケットとも呼ばれるハンチング帽をアンこさんに手渡しました。


「素敵な帽子ですね! ……頂いてよろしいのですか?」


「うん、いいよ。買ったのだけど、私にはやっぱり似合わないなと思ってたの。アンちゃんには似合いそうね」


 アンこさんは垂れ耳のうさぎ耳なので、人族用の帽子も普通に被れるみたいです。

 それにしても、リリナさんは買って満足してしまうタイプなのでしょうか。

 わたくしとしては、無駄遣いは如何なものかと思うところですが、買い物によって精神を安定させる方もいらっしゃいますので、自分の価値観を押し付けるのはよくありませんね。


「リリナさん、ありがとうございます。嬉しいなぁ!」


 アンこさんもご機嫌になって良かったですね。


 その様なやり取りをしていると、何やら外で音がするので窓から外を覗いてみれば、セッキーさんが光る棒のような物でガラクタを叩いています。

 初めて彼にお会いした時から、少し変わった方だと思っていましたが、少しどころではなかったみたいです。

 場合によっては、今後のお付き合いの仕方を考えないといけません。


 彼のその横でミっちゃんさんが指導している様子ですが、あちらはちゃんと作業を進めているのでしょうか……。


 そんなわたくしの心配をよそに、セッキーさんを見守るリリナさんの目がとても優しかったのが印象的でした。


 ……なんだか妬(や)けてしまいます。


 運び込んだ荷物の整理も終わり、寝台も整えて先程購入したカーテンを取り付けしたら、リリナさんのお引越しは、ほぼ終了です。

 手の空いたわたくし達も、新パーティー用のメンバールームの清掃に参加して、それも終わりに近付いた頃、ベルゲル先生が差し入れを持ってきてくださいました。


 たい焼きというお菓子らしいですが、わたくしは食べた事がありませんでした。

 ちなみに中のカスタードクリームが大変に美味でした。

 セッキーさんは何かご不満の様子でしたけど。


 それにしても、このメンバールームは広くて良いですね。思わず住みたくなりますが、ベルゲル先生に却下されてしまいました。

 でも、それにめげるわたくし達ではありません。

 どうにかして、なし崩し的に住み着いてしまおうと新たな計画を練っていると、ピアっちさんがこの建物に大きなお風呂があると仰りました。


 早速みんなで見に行きます。

 流石に寮の大浴場よりは小さいですが、ここにいる全員が一度に入れるぐらいの大きなお風呂でした。

 もちろん、後で入らせて頂きましょう。


 今日は色々とありましたが、一番の収穫はミステリアスだと感じていたリリナさんが実際は親しみやすい普通の女性だというのが分かって嬉しかった一日でした。

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