警備隊特務課、社会不適合者たちの魔窟
2036年6月6日 午後12時32分
天乃と水無月が《結界》の外に向かおうとしたとき、《結界》の効果が切れたようであった。どうやら、午後十二時三十分になると切れるように設定されていたらしい。
「ねぇ、さっきの《結界》。アンタの目にはどう見えてたの?」
気まずい空気を換えようと水無月が天乃に問い掛ける。
「《結界》ってのが、実はよくわからなくて。どういうものなんだ?」
「《結界》は基本的には人払いを用いた閉鎖空間のことよ。あと、狭義の範囲指定型魔術を指すときもあるわ。まぁ、前者は、本来はそんなに広い範囲を囲めるものじゃないんだけど。この《結界》は多分あの偽間森が事前に準備してたんでしょうね。結構な範囲を囲ってるわ。というか、記憶喪失ってそんなことも忘れるものなの?」
「オレの記憶喪失はただの記憶喪失じゃなくて常識改変も含むものらしい。おかげで魔術に関する知識もごっそり失われてる」
「それは……ここで生活していくうえで結構なディスアドバンテージよ?」
「そうなんだよなぁ。なんかいきなりわけのわからん奴らに殺されかけるわ。散々だよ」
「でも、神の術式か。なんでそんなものがアンタに掛けられてんのかしら? 何か心当たりは? ってそういう記憶もないわけか、厄介ね」
「あぁ、それで、最初の質問に戻るけど。オレの目には特に何かで囲っているようには見えなかったよ」
「ふーん。そうなんだ。多分、人払いをしている何かを見つければ、流れは見えるんでしょうねぇ」
「……そうかもな」
二人はとりあえず、今回の件に間森啓吾の偽物が関わっていたことから、水無月の姉である水無月雹霞に会うため、移動を開始していた。
「…………ねぇ、アタシを助けてくれるって話、なんだけど。どの程度本気でゆってる?」
「勢いで放っておけないって気持ちになったが、どうすればいいか見当もつかない。水無月は、どうして――――くそっ、誓約に引っかかるのか。ちょっと抽象的な表現をする。アレを手放せないんだ?」
「それは……ナイショ。というか今日会ったばっかりの人に話す内容じゃない」
「そうか。できれば、手放してもらいたいんだがな。アレは水無月の――――――――……誓約って不便だな」
「ふふふ、そうね。実はね、アタシを助けようとしてくれてる人、アンタの他にもう一人いるの」
「へぇ。これから会いに行く雹霞って人か? 確かお姉さんなんだろ?」
「雹霞姉ぇはどうだろ? 助けてって言えば助けてくれる気がするけど……アタシの意志は尊重してくれなさそう。多分強引に取り上げようとするでしょうね。そうゆう人なの」
水無月はそう言って苦笑いを浮かべる。
「でも、その推理は惜しかったわね。アタシを助けようとしてくれてるのは烈火兄ぃってゆうの。アタシと雹霞姉ぇの兄に当たる人かな」
「へぇ。三人兄妹か」
「みんな血は繋がってないけどね」
「家族か。オレはそういうのも覚えてないからな。会ったこともない保護者がいるってだけだよ」
「あぁー、なんか、ゴメン。配慮が足りなかったかも」
「いいさ。神の術式とやらでオレの記憶が戻るのは絶望的なんだろ? だったら、これから知っていくさ」
「前向きね」
「それが取り柄だと言えるように頑張るよ」
「そ。まぁ、アタシが何をゆいたかったかってゆうと、アンタだけじゃないから。あんまり張り切らないようにってことよ」
「肝に銘じておくよ」
天乃と水無月は、とある建物の前で止まる。
「ここか? ここって……」
その建物は、ずばり、浅木における警備隊の本庁であった。
警備隊とは浅木区における警察機構である。浅木区の敷地は、丸ごと国立大学法人浅木大学の敷地という扱いになっていることから、警察機構の設置が認められておらず、浅木大学は自費で警備員を雇用している。その警備員の組織を警備隊と呼び、大学は、警備隊に警察機構さながらの権力を認めているのである。なお、警備隊は警察機構というよりもむしろ民間軍事会社(PMC)の流れを汲んでおり、その訓練は軍隊さながらであるともいわれる。
それというのも、本土の警察機構と警備隊の最大の違いとしては、警備隊は常に非殺傷武器の携帯をしているという点が挙げられる。浅木区で発生する犯罪は魔術が絡む案件も多く、それ故に警備隊は魔術師との戦闘を考慮してテイザー銃やゴム弾、閃光発音筒等で武装しているのである。
「そ。ここよ。雹霞姉ぇって警備隊の実行部隊のお偉いさんなの」
水無月が若干誇らしげに胸を張っていると、建物の中から警備隊員が向かってくる。
「えーっと、君たち。どこの学校? いや、堂々とここに来てまでサボる度胸はすごいけど、あまり感心しないね。って君、怪我してるじゃないか」
警備隊員が天乃の肩付近の出血を見て血相を変える。
「傷害事件かい?」
「えーっと、微妙に違います。アタシは第三高校の水無月風華といいます。こちらの天乃慎くんがそちらの特務課に呼ばれていたので、案内していました。学生証です」
百目鬼亜澄が水無月雹霞に天乃の身柄の確保を要請していたことは、医師と偽間森との会話で確定している。とりあえず、水無月はそういうことにした。
「第三……高校?」
警備隊員は水無月の容姿に疑問を持ちながらも学生証を手持ちのカードリーダーに通す。
「確かに……承りました。こちらへどうぞ」
特に問題はなかったのか、警備隊員は二人を建物の内部に案内する。そして、入り口の受付にいた別の隊員に話しかけた。
「なぁ、天乃慎って記録にあるか?」
「ちょっと待ってくれ。……あったぞ。今日の十三時から特務課と面会の予定になっている。今、連絡する」
「そうか。では、天乃君……こっちへ。おっとその前に君の学生証を見せてもらっていいかい? 規則なんでね」
「が、学生証!?」
俄かに天乃が慌てた様子を見せる。
「まさか、アンタ持ってないの?」
水無月がジト目で天乃を見やる。
「さぁ、使ったことないからなぁ」
天乃は唯一可能性がありそうな財布の中を見る。
中には現金の類は一切なかったが、複数のカード類が散見された。
「おぉ、あった。よかった」
天乃は警備隊員に学生証を提示すると、警備隊員は例のカードリーダーに天乃の学生証を通す。ただ、水無月のときとは違い、ピピッと警戒音のようなものが鳴る。警備隊員は不思議そうな顔をしたが、カードリーダーに表示された文字列を読むと、何かに納得したようであった。
「問題ないみたいだね。それじゃあ、案内するからついてきて」
「じゃあ行ってくる。いろいろありがとうな、水無月」
「次は、平和なときに会えることを祈ってるわ」
そう言い残して水無月は去ろうとした。
「あっ、水無月さん。学校にはこちらから報告しておくので、君も一緒に来るようにとのことだ」
受付にいた警備隊員が電話で指示を受けたのか、水無月に声をかける。
「ふぇ? あの、できれば帰りたいなぁ……なんて」
「そういわれてもね。上からの指示だ。私としては帰ってもらっては困るよ」
「はぁ、ですよね。わかりました。行きます」
「では、こっちだ」
天乃と水無月は入り口で声をかけてきた警備隊員に連れられ、エレベーターに乗る。
「(なぁ、何で水無月も呼ばれたんだ?)」
「(さぁ? 多分、雹霞姉ぇが呼んだんだと思うけど)」
天乃が小声で水無月に耳打ちすると、水無月も小声で返して来る。エレベーターはそのまま地下二階に到着すると、案内役の警備隊員が降り、ついてくるようにと二人を促す。廊下を数メートル歩くと、そこには特務課の文字が書かれた扉があった。
案内役の警備隊員は、ドアをノックすると、扉を開き、中に向かって「失礼します。天乃慎、水無月風華両名を連れて参りました」と報告した。
「お疲れ様です。後はこっちで引き継ぎますよ」
そう言って出てきたのは、線の細い男だった。警備隊の面々が鍛えられた肉体をしていることからしても、その細さは目立つことこの上なかった。
「やぁ、風華さん。お久しぶりです」
「お久しぶりです、新保さん。雹霞姉、姉はいますか?」
「はい、お待ちですよ。天乃さんもお久しぶりです。といっても覚えていないですよね。新保覇夏といいます。以後、お見知りおきを」
新保覇夏と名乗った男は、握手を求めるかのように手を差し出す。
「あー、お知り合いの方ですか? ご丁寧にどうも。改めて、よろしくお願いします」
天乃がそれに応じようとすると、新保は驚いたかのように手を引っ込めた。
「え? どうしました?」
「すいません。実は記憶喪失の件、私は疑っていまして。ちょっとした悪戯を仕掛けたのですが。あなたがあまりにも無防備に私の握手に応じようとするので、驚いてしまって」
「はぁ」
天乃には何のことかはさっぱりわからないが、どうやら、浅からぬ因縁があったようだ。
「人の人格を形成するのは記憶と環境なのですねぇ。どちらかが失われるとこうも変わるものですか。いや、忘れてください。いまのあなたなら、私は歓迎しますよ」
そう言って差し出されたままになっていた天乃の手を掴み、握手する。
「それでは、こちらにどうぞ。水無月課長がお待ちです」
「ほうら、きなすった。言ったとおりでしょう? こいつは外さないんですよ。こういうイベントはキチンと時間どおりこなす。そういう男なんですって」
新保に案内されて入った部屋には、水無月雹霞以外にも人がいた。というか間森啓吾であった。服装は学校の制服だったが、サングラスはしている。
「よう、久しぶりだな、慎。といっても、記憶がない上にいきなり俺の偽物と出会うとは、業が深いというかなんというか。まぁともかく、俺が本物の間森啓吾だ。よぉろしくぅ」
間森は来客用のソファに我が物顔で腰かけており、一人だけやたらテンションが高い。
「大丈夫。こいつは本物よ。ウザいけど」
水無月は固まっている天乃にそう囁く。
「えぇ、っと、天乃慎です。よろしく、啓吾」
「おう、テンション低いな。こっちは首が飛びそうでテンション上げてないとやってられなかったぜ」
ふぅ、と間森は額を拭うゼスチャーをする。
「だけど、一三〇〇(ひとさんまるまる)には間に合ったんだ。これで、お咎めなしでしょ? 雹霞さん」
「そうだな、結果論だが、奴は間に合った。賭けはお前の勝ちだよ、啓吾。ムカつくから一度死ぬような目に合わせた方がよいとは思うがな」
そう言ったのは、入り口に立つ天乃の正面に座っている若い白髪の女性だった。肌も髪と同じように病的に白いが、体つきはむしろ豊満であり、新保よりむしろ健康的に見えた。座っている席と間森との会話からして、この人が水無月雹霞なのだろうと天乃は当たりを付ける。
「そんなご無体な」
間森はお道化るようにその場に崩れる。
「ふん。間に合ったようだな、天乃。まぁ、とりあえず死んで――じゃない。啓吾の隣にでも座れ。風華はそっちの椅子だ」
雹霞が指す先には、明らかに部屋の主である雹霞の椅子と同等と思われる椅子が用意されていた。それも、明らかに水無月の体型に合わせて小さめに設計されている。
「……ねぇ、雹霞姉。なんでアタシだけ専用の椅子があるの?」
「お前は客ではなく家族だからな。扱いは特別であって然るべきだ」
「いい加減、妹離れしてよ……」
「断る。それに今回は多分に私情を挟むが、理由あってお前を呼んだのだ。決してお前に会いたかったから、無理に呼んだわけではないぞ」
(あぁ、この人ダメな人だ)
というのが天乃の雹霞に対する第一印象である。
「相変わらずのシスコンっぷりだな。それじゃあ、まずは、慎。悪かったな。いきなり死にかけただろう? それを防げなかったのは、ひとえに俺が後手に回ったせいだ。謝罪する」
間森が隣の天乃に向かって頭を下げる。その間に雹霞は水無月を無理やり抱きしめて専用の椅子にぬいぐるみか何かのように押し込もうとしていた。水無月は座らされまいと抵抗している。
「どういうことだ?」
天乃は間森の言葉に真剣に反応するものの、目の前で展開されている姉妹のじゃれ合いのほうが気になって仕方ない。
「どうもこうも、まずはこれを見てくれ」
間森はじゃれ合う姉妹のことは完全に無視することにしたらしい。そこはかとなくプロっぽいな、というのが天乃の感想である。
「これが、今日午前五時十二分の浅木港の映像だ。……見てくれ、ここを」
そう言って間森はノートパソコンの映像の一部を拡大する。そこには、小さなモーターボートのようなものに乗った何者かが浅木港に接近する姿が映されていた。その人物は、黒いスーツ姿にサングラスという恰好の西洋人であった。彼は港に着くと、上陸し、モーターボートを陸に引き上げる。
モーターボートはそのまま一瞬甲冑姿の騎士になると、すぐさま消えるようにいなくなっていた。ちなみに、水無月は抵抗を諦めたのか、雹霞の為すがままに可愛がられている。
「これは、《偽装の騎士》だな。啓吾の偽物が使っていた甲冑の一つだ」
「ほぉ、《偽装の騎士》を使ったのか。こいつは、アーサー・リードというフリーの傭兵だ。得意なのは騎士を召喚する魔術で通称十三騎士と呼ばれている」
(えーっと。初めに一体。追加で九体。伏兵二体に、偽装の騎士で合計十三体か。なるほどね)
「十三騎士はそれぞれが特殊な力を持つらしいが、そのなかでも偽装の騎士は奴が好んで使う騎士だ。偽装の騎士はそれ自体が別の何かに偽装できるし、これを召喚している間、アーサー自身の外見も何者かに偽装できるらしい。それ以外には何がいた?」
「それ以外?」
「あぁ、様々な能力を持った多彩な騎士を召喚するのが十三騎士の真骨頂なんだよ」
「それは、わからないな。水無月、なんか特殊な甲冑はあったか?」
雹霞に一通り可愛がられ、抜け殻のように椅子に座っていた(座らされていた?)水無月は、天乃の問いかけに気だるげに返答した。
「さぁ、基本的には一撃だったから、仮に特殊な力があってもわからないわよ」
「そうか。だ、そうだ」
「わかった。つまり、アーサーはこの外部との連絡口である浅木港経由で侵入してきたことが判明している。偽装の騎士を使えば、業者に成りすますこともできるだろう。それじゃあ次、これが午前九時三十二分の大学病院のカメラの映像だ。アーサーが先生とお前と話している。先生にも確認したが、このとき、アーサーは俺の姿をしていたんだよな」
「そうだな。カメラにはアーサーが映ってるな」
(アーサー自身は幻覚で外見が変わっているだけだから、カメラにはそのままの姿で映るんだな……)
「俺が来たのはこの約十分後、午前九時四十分だ」
「確かに、啓吾が一人で来たな。病院を出た後は、オレと啓吾は水無月と会うまで一緒に行動してた。水無月と会ったのは十時ちょっと前くらいだったから、このとき、啓吾が一人で行動しているはずがない。やっぱり、オレは偽者と共に行動していたとしか考えられないな」
「俺は、病院の先生から俺が慎と共に立ち去ったという話を聞いてから、すぐにここに引き返して街頭カメラの精査を行った。病院から出たお前らを追いかけたんだが、その五分後には見失った。多分《結界》に入ったんだろうと思われる。この段階で十時を少し回っていたな。《結界》があったこと確認した俺は、すぐに専門チームに《結界》の解除を依頼した。ところがだ、専門家の判断ではあそこには《結界》なんて存在しないときた。結局、打つ手なしになっちまってな。そうこうしている間にお前らが現れたってわけだ」
「これが最新の映像だ」
散々、水無月を玩具にして満足した雹霞は、自分のデスクトップの映像を公開した。それは、午後十二時三十一分の映像であり、天乃と水無月が並んで歩いている映像であった。
「今回、ここで面談することになっていたのは別件だが、先にこの事件について調書を作っておきたいと思ってな。風華を呼んだのもそのためなのだよ。この空白の二時間三十分ほどの間の出来事と《結界》について知りたい。協力しろ」
それから、天乃と水無月は《結界》内で起こった事柄について話した。もっとも、天乃は誓約に抵触することは話せないし、水無月も話さない。結果として、大筋の流れはあっているが詳細が微妙にぼやけた話となったのだった。
「なぁ、風華よ。本当にこれだけか? もっと何かなかったか」
「これだけよ。《結界》についてはわからないわ」
「そうだな、例えば、そこの天乃慎に強姦まがいのことをされたとか」
「されてない!」
(セクハラまがいのことはされたけど)
水無月は内心でそのようなことを考えていたが、間違ってもこの義姉の前では話すことはできない。
「あぁーあ、もっと異常性を発揮しろよ、天乃。お前を殺処分する口実がないだろう? これじゃあ、ただの風華におんぶに抱っこの一般人じゃないか」
雹霞が実に残念そうな口調で天乃に語り掛ける。
「実際に水無月を担いで運んだのはオレですけどね。あと、事あるごとに人を殺そうとしないでください」
(異常性の話なら魔眼のことを話すことになる)
そう、天乃の魔眼については、結局話していないのだ。水無月もその判断を尊重してくれているのか、何も触れてこない。
「んー、妹さんのことは調書には書きづらいっすよ。《王宮勅令》のくだりはいいとして、魔力放出だけで長時間飛翔したとか間違っても公には出来ませんよ? 雹霞さん」
「それは公然の秘密だから、いい。いつもの処理をしてくれ。ついでに死んでくれ」
「わかりまし――いや、死なないっすよ。隙あらば人を殺そうとしないでくださいよ」
雹霞は間森に対しても辛辣であった。
「あのー、ところで、啓吾って結局どういう立場なんだ?」
ここで、天乃は疑問に思っていたことを間森に尋ねた。
「俺か? 俺は、お前のクラスメイトであり、ここで雑用のバイトをしているただの学生君だよ。今日は公欠だからここにいるだけ。普段はちゃんと学生してるっての」
「そうなのか。ところで、特務課って何なんだ? 何をする部署なんだ?」
「特務課……ここは社会不適合者が集う魔窟だよ」
間森が冗談めかしてそういうと、部屋の体感温度が少し下がった気がした。
「云うじゃないか、啓吾。その魔窟のボスがここにいることを忘れてるんじゃないだろうな?」
雹霞が口を歪めて笑っている。
「口が滑りました。まぁ、特務課ってのは……社会奉仕を目的とした慈善事業団体の一種だよ。ごみ処理とか。部屋の清掃とか。害虫駆除とか。そういうのが主な仕事だな」
「なんか、あまり警備隊っぽくないな」
「そうかな? 実に警備隊っぽいと思うがね、俺は」
「おい、うちの義妹もいるんだ。その辺にしとけよ。殺すぞ?」
「うーい」
間森はそれこそただのバイトとは思えないほどフランクに返事をする。
「それと啓吾、お前は別室でさっきの二人の話をまとめて調書作って来い。風華もその椅子を持っていっていいから、別室で待機だ。ここからは天乃とサシで話がある」
「了解でーす」
「あの、雹霞姉ぇ、勘違いしないで欲しいんだけど、アタシ別にこの椅子気に入ってないからね?」
間森は適当に返事をしながら、水無月は傷ついた様子の雹霞をしのびなく思い、結局、椅子を引きずって退出した。それを確認した雹霞は部屋の入り口に鍵をかける。
「さて、今日の本題だ」




