廃坑のお宝
シシーにまたがり揺られて暫く、件の廃坑に辿り着く。
入り口はすぐに分かった。
「あ?あんだテメェ?」
(律儀に挨拶までしやがる)
木組みの廃坑の入口、そこには四人の男がライフルを手に見張りをしていた。
ガンベルトを身に纏い、これでもかと言わんばかりのあらくれ達。
それを前にシシーから降りてその尻を叩いてその場を離れさせ、自身は靴底でマッチの火を付けて葉煙草を吹かし、悠然と歩き出す。
「いやぁ道に迷った上に喉が渇いちまってよ、相場の四倍出すから何か恵んでくれや」
「はぁ?」
言うと男達はゲラゲラ笑い出した。
「おいおい、そんな薄汚えナリで羽振りの良さ見せてるつもりか?素っ裸になって消えるかここで尻の穴増やすか、どっちか選べよ」
がちりとレバーアクションを起こす男達。
それを前にジョギーは葉煙草の煙を吐き出す。
「裸は勘弁だなぁ。煙草が吸えねぇと俺ぁ半日と保たず死んじまうんでよ。尻の穴も増やしたかねぇ」
「じゃあどうするってんだよマヌケ?」
せせら笑う男達に対し、ジョギーはじっと廃坑の奥を見つめていた。
(出て来る奴は無し。雁首揃えてここでクダ巻いてるってこた、こいつら木っ端な上に帰りを待ってるって所か。チッ、ハズレだな)
小さく舌打ちし、四人の前に歩み出る。
「おっと、それ以上寄って来たらよ、俺は許すがこのライフルが許さねぇぜ?とっとと身ぐるみ置いて消え」
そして、
「!?」
発砲。
喋っていた男の額に三つ目の眼窩が開く。
残る三人も反応ままならず悉く三つ目となり、どうと伏した。
対するジョギーはリボルバーをホルスターにおさめ、ビンゴブックを眺めて舌打ち。
「あーあー、クソぶち抜いただけかよ。お宝に期待だな、こりゃ」
そして悠然と廃坑に入った。
中はさして掘られておらず、睨んだ通り誰も居ない。
賞金首を逃したと舌打ちし、金目の物は無いかとどかどか荷物を蹴る。
だが、何も無い。
「チッ、ビクターの野郎、あのおしゃぶり保安官がよ。ふざけやがって」
手頃な物は無いかと探る中、鉄格子の扉が見えた。
そしてその鉄格子越しにうずくまる小さな影。
「……?」
まだ幼い少女。
その身にはボロがあり、痩せ細った身体で恐怖の眼差しをジョギーに送っている。
「■■……■■■■■■■!」
分からない言葉を吐いた。
それで全てを察した。
「ハドゥーンのガキか」
ハドゥーン、この新大陸の先住民。
女性比率の異常に高い種族で、各々異なる不思議な力を持つと言う。
その異能故に高値で売買され、今や彼女らのみの集落など一つとして無い。
奴隷同然で売られるか、もしくは虐殺されるか。
北部合衆国がその保護を掲げているがそれは実質的支配の為の方便に過ぎず、明確な解決には至っていない。
「……こいつが開けてビックリのお宝ってのか?」
失望した様に呟くジョギー。
怯えきった少女を助ける気はさらさらない様子だったが、
「……」
衰弱を重ねたその体躯に、魔が差したのか、
「……チッ、ビクターに押し付けるかね」
らしくない行動をしてしまった。