314.斜坑の先には
ベックは機械のような身体が嫌だった。かつての科学力という名の魔道の力によってこんな身体にされたというのに、こけたら重いからといわれたので、余計に腹が立っていた。こんな身体にした奴をぶん殴りたかった。でも、あの青銅人形七十一には出会いたくないと思った。そこのバウムとかという爺さんの娘のようだけど。
「すまぬがベック、もう少し急いでくれぬか? 躓いてしまいそうだからな」
そのバウムにせかされ、余計に腹が立ってきたが、表情が変わらない青銅人形ゆえ、怒りを表現できないのがなおさら嫌だった。それにしても、元に戻れるのか! そう思っていた時の事だ。踏みしめた階段の金属が腐食していたらしく、ベックは態勢を崩して転げ始めてしまった! 大きな音と共に! このとき、自分は玉のように転がっているように感じた。そして青銅人形になってひとつだけ良いことが分かった。そうだ、これぐらいじゃ死なないんだと!
「大きな音を出さないで! そう言ったのに!」
バウムがベックの事を思いやっていないような事をいった。普通の人間だったら大けがか死んでいるっていうのに! 腹が立ったベックは斜坑の先に辿りついていた。そこは大きな金網がはめ込まれていて、転落は免れた。その先にある光景が見えた。それは「新しい世界の選ばれた民になれる」という言葉で勧誘された者たちの末路であった。




