集団戦 スキルの効果
スキルの数は個性のように数多く存在するが、その分類を二つに分けると、「能動的スキル」と「受動的スキル」の二つに分けられる。
能動的スキルは、剣技の【一閃】【兜割り】、槍技の【三段突き】【一直閃】、体術の【剛体】【浸透勁】などと言った、自らの意志で発動することができるスキルの事を言う。
対して受動的スキルは、コウラの持っている【直感】、魔法使いなどが多く持つ【高速詠唱】、血を見ると発動する【狂戦士】と言った、自らの意志とは関係なく常時発動しているスキルの事を言う。
ドリンク隊所属のペッパーは農家の三男として生まれた。
裕福ではないがそれでも仲の良い家族に囲まれ、ペッパーは朝から晩まで汗水たらしながら毎日働いていた。
そしてペッパーが成人になった15の時、誰にいわれるでもなく自分から家を出ると告げた。
少し前に一番上の兄が近所に住む同じ農家の女性と結婚し、その女性のお腹は最近服越しでもわかるほど大きくなっていた。
裕福でも無い家庭に新しい家族が増える。
今のままでは生活はさらに苦しくなる。
だからペッパーは家族のためを思い、家を出ることにした。
家を出たペッパーは職を求め街まで来た。
だがそこで待ちうけていたのは厳しい現実だった。
今まで農業ばかりしてきたペッパーは、何とか数字と自分の名前、それからいくつかの単語がわかるぐらいの学しかなく、お世辞にも頭が良いとは言えなかった。
そのためペッパーが就ける職は、頭をそんなに使わなくてもいい体力系の仕事ばかりになってしまった。
これまでの暮らしと同じように朝から晩まで汗水たらしながら、商店の重い荷物を運んだり、河川工事のために土を掘り土嚢を積み上げたりしていた。
日々体力をフルに使い、飯を食べたらあとは泥のように眠る、そんな生活を二年ほどしていた時ある事件が起こる。
いつものように商店の荷物を運んでいると、たまたま前にいた同じ荷物を運んでいた男の荷が崩れペッパーの顔や腕などに当たった。
荷物があった個所から痛みが走るが、それよりもペッパーの心の中では激しい炎が燃え上がっていた。
そして燃え上がる炎に従うように、ペッパーは荷を崩した男に殴りかかった。
ペッパーの心が落ち着いたとき、周りは血を流しながら倒れる複数の男たちがいた。
顔からひどい出血をしているのは服を見る限り荷を崩した男だろう、では他の倒れている男達は?
彼等は気を失っているのにまだ殴り続けるペッパーを止めようとした男たちだった。
この事件のせいでペッパーは傷害の犯人として警備隊に連れて行かれた。
取り調べの際、警備隊の人間に「なぜこんなことをした?」と聞かれたが、ペッパー自身もなぜこんなことになったのかわからなかったので、ただ茫然と「わからない」としか答えるしかなかった。
その後身元とスキルや加護などを調べるために、【鑑定】スキルを持つ人間に見てもらい、ペッパーのスキルに今回の事件の原因があることが判明した。
「なんだ、お前さん【血気盛ん】持ちか」
「【血気盛ん】?なんですかそれ」
「あ~、知らなかったのか。
ついてないなお前さん」
警備部の話によると、【血気盛ん】とは兵士や冒険者など戦闘を行う若者を中心に現れるスキルらしい。
「経験の浅い若者っていうのはどうしても頭に血が上っちまいやすいからな。そんな奴らにこのスキルが現れてちまう」
スキルの効果は身体能力のアップ、ただし精神面でかなり安定が無くなる。
なのでこのスキルが現れた若者は、このスキルを教訓に冷静さを学んでいくことになるそうだ。
「でも俺戦闘なんてした事ないですよ」
「戦闘した事無く手もその体だからな、お前さん肉体系の仕事ばっかりやって来ただろう。
そんな奴にも時たまこのスキルは現れることがあるそうだ」
「そんな……」
自分は突然現れたスキルのせいで、こんなことを起こしてしまったのか。
ガックリと項垂れるペッパーの姿に、警備部の人間も気の毒そうな視線を送る。
「まぁ気の毒とは思おうが、それでもお前さんが人を傷つけたってことには変わりないからな。
こちらから事情を説明して前科だけはつかないようにしてあげるが、その分慰謝料や謝罪金を多く払うことになると思う」
その後、警備部がペッパーの事情を説明してくれたことあり、被害者たちはペッパーを罪には問うことはなかった。だがその変わりに彼等にかなりの金額を支払うことになってしまう。
そしてその金額を払うため、また現れたスキルを制御できるようになるためペッパーはドリンク隊に入ることにした。
それから戦い方を知らなかったペッパーは、戦い方を学び何とか半人前から抜け出せそうなぐらいの力を付けてきた。
これは今まで培ってきた体力があったからこそである。
慰謝料の方もコツコツだが返していけている。
ただしスキルの方の制御はいまだに上手く行かない。
訓練中血が出てしまったら、自身の歯止めが効かずすぐに暴走してしまう。
そして今回も、血が出てしまった俺は周りの声など無視して、ただ血を出させた敵目掛けて走り出していた。
身体能力が上がった事で、俺はすぐさま通路の出口までたどり着く。
出口前にはそれまで見た事のない鬼が喉をさすりながら立っていた。
その鬼を目にした瞬間俺は理解する。
さっきの攻撃はこいつがやったのだと。
理解した瞬間それまで以上の力が足に入り、一気に鬼との距離を縮める。
そして間合いに入った瞬間、腰に差した剣を抜き横薙ぎに振るう。
クッソ、硬いなこいつは。
痛めているであろう喉を狙ったというのに、手に感じる手応えはまるで大木に斬りつけた感じで、表面だけしか斬れなかった。
それでも鬼の喉から血が出て、鬼がこちらの存在に気づく。
一方的な攻撃をしてくれたんだ、たんまり仕返ししてやるよ。
そんな気持ちで視線を向けた鬼に、血を流しながらも不敵に挑発をする。
「ずいぶん寂しい出迎えじゃねぇか。
たった一人で俺達を歓迎してくれるのか?」
俺の言葉に鬼が口角が上がる。
さぁ、戦いはこれからだ。
◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇
ヤード視点
(血を流しながらこちらを挑発してくるか、実にいいな)
目の前にいる男を見ながら自身の口角が自然に上がって行く事に気づく。
「出迎えが一人で悪いな。
だが一人でも盛大に歓迎してやるよ」
言うと同時に妖塵棒を叩きつけるように振り下ろす。
地面を陥没させる一撃を男は横に飛び跳ねて避け、すぐさまこちらに反撃してくる。
「うらっあっ」
掛け声とともに剣を振るい斬りかかってくるが、その剣撃を妖塵棒を立てて防ぐ。
(力はまあまあ、早さもなかなか。
だが決定的に経験が少ないな)
一度の攻防でヤードは男の力量がどれぐらいか見抜く。
それからさらに男はヤードに向かい剣撃を繰り出してくるが、それらは全て妖塵棒に阻まれ肉体に届く事は無い。
(身体能力と戦闘経験に大きく差があるな。
おそらく身体能力はスキルか加護によって引き上げてるんだろう。
男の様子を見る限りスキル、【血気盛ん】か【狂戦士】あたりだろうよ)
今までの戦闘経験から男のスキルに見当をつける。
(このままこいつのチャンバラに付き合うか?いや、通路から足音が近づいて来ているな)
すでにヤードの中では、男とは戦いでは無くチャンバラ遊びに変わっている。
(仲間が増えたら面倒なことになりそうだからな。……こいつに付き合うのはもういいか)
「くらぇー」
「喰らうかよ」
勢いよく振り下ろされた剣を妖塵棒で弾き返す。
いくらスキルで身体能力が上がっていると言っても、今の自身の力に勝てるとは思えない。
「知ってるかい?
血を流す事で発動する【血気盛ん】や【狂戦士】を、強制的に解く方法があるってことを」
「そんなのあるわけねぇだろうがーー!!」
叫びながら再びこちらに向かってくる男に、ヤードはただ眼光を鋭くして睨みつける。
「ヒッ」
それだけで男の足が止まる。
「言ってみれば【血気盛ん】や【狂戦士】は頭に血がのぼった状態だ。なら頭から血を下げればいい」
スキル【鬼圧】、殺気よりもはるかに濃厚な死の気配を放つ。
このスキルを発動させた事で頭に血がのぼっていた男の血を下げ、強制的にスキルを解いたのだ。
「さっきの威勢はどうした?
隙だらけだぞ」
スキルが解かれ、濃厚な死の気配味わったせいで男は棒立ちになってしまう。
「じゃあな、良い準備運動ぐらいにはなったぞ」
それだけつぶやくとヤードは妖塵棒を勢いよく振り下ろした。
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戦闘描写もっと上手くなれれば、そう感じてしまう回でした。




