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集団戦  癖が強い連中を舐めるなよ!

本日二回投稿の二話目です。

 ホウジーが叫ぶ前から、コウラは【直感】のスキルで何かが来ると感じ取っていた。


 (今回の直感は嫌な予感がプンプンしやがる。

 今までの経験からして、恐らくは敵の攻撃が来る前兆なんだろう、この狭い空間で奇襲の攻撃か?だとしたら逃げ場は無いから、防ぐ準備だけはしとかないとな)


 そう考え、部隊に注意喚起しようとした瞬間、前方からホウジーの叫び声が通路に響き渡る。


 「敵ニャーーーーーー!!!!」


 チッ、思わず舌打ちが出てしまう。

 こちらが手を打つより先に相手の方が手を打ってきやがった。

 ホウジーの叫び声からして、すぐにでも敵の攻撃が来るだろう。だとしたら前方にいる第一隊へのフォローは間に合わない。


 「ウーロン、第一隊は任せる。全力で守れ!!」

 「了解です」


 ウーロンならば、並大抵の攻撃からなら第一隊ぐらいなら守ることはできるだろう。

 あとは自分がいる第二隊と、後方にいる第三隊だ。


 「第三隊、急いでこちらに近寄れ!

 カーフェ、オウレ、二人持ってきた魔道具『陣中御見舞(ハーフタイム)』をすぐに展開しろ」

 「了解であります」

 「わかったよ~」


 褐色肌で短髪のきりっとした眼をした女性カーフェと、ボサボサ頭の眠たげな眼をしたオウレが指示に従い、すぐさま荷物から魔道具『陣中御見舞』を取り出し魔力を送り発動させる。


 「この魔道具すっごく重たかったんだから~、ちゃんと役に立ってよね~」

 「馬鹿かオウレ!隊長がわざわざ用意してくれた魔道具だぞ、役に立たないはずないだろう」


 二人がそんな軽口を交わす間にも、二人の魔力を送りこまれた『陣中御見舞』は静かにその力を発揮し、第二隊と近寄って来た第三隊を包むように、半透明の薄い膜が張られる。


 「これ~、かなりきついよ~」

 「隊長、我ら二人の魔力ではそう長くは発動していられません」


 まだ魔道具を発動させて一分も経っていない。

 それでも魔力を送り続ける二人の額には、玉の様な汗が浮かんでおりどれだけ披露しているのかがわかる。






 カーフェは、元は首都の魔道騎士隊に所属していたエリートだったのだが、その実力の高さと堅物と言われてしまうほどの真面目すぎる性格が災いし、同じ隊にいた貴族のボンクラに目をつけられてしまう。

 ボンクラ貴族からさまざまな嫌がらせされるが、カーフェはまったく相手にせず黙々と自分の職務を全うしていた。そうしてそんなカーフェの姿により一層頭に来たボンクラ貴族はついに決闘をカーフェに申し込んだ。

 その決闘を受けたカーフェは、文字通りそのボンクラ貴族を情け容赦なくボロボロに負かした。

 そのあまりの情け容赦ない姿に決闘を見守っていた人間は皆震えあがったそうだ。

 かくしてこれで嫌がらせなどされずに職務に励めると思っていたカーフェだったのだが、そう上手く物事は進まなかった。

 決闘に負けたボンクラ貴族の父親が今度は出てきたのだ。

 「由緒正しい血筋の息子が女なんかに負けるはずがない!」「卑怯な手を使ったに違いない!」「息子は女性を傷つけられないからわざと負けたのだ!」などと言った戯言をカーフェ本人に言うのではなく、カーフェの上司、及びに軍部の偉いさん方に言い出したのだ。

 もちろん軍部にいた誰もが、カーフェの実力を知っていたし、決闘も見ていたのだから信じていなかったのだが、残念なことにその言葉を無視できるほどその貴族の力は弱くは無かった。


 「すまない、ほとぼりが冷めるまで少し首都から離れていてもらうよ」

 「わかりました」


 軍部は結局移動という形をとる事で落とし所を作った。


 「まぁ何というか、君にはまったく非が無いのに本当にすまない」

 「いえ、上官に謝っていただくようなことではありません」

 「そうか……、そのなんだこんな理由で君を首都から移動させる訳になったわけだから、軍部としても君の好きな場所に移動させてあげようと思おう。

 どこか行きたい場所はあるかね?

 観光の名所のある街でも、景色が綺麗な場所でも、温泉がある街でも好きな場所を言いたまえ」


 軍部として非が無い彼女にせめてものお詫びと、移動先を自由に選べるようにしてあげた。

 カーフェは移動場所を聞かれると少しだけ迷った後、一つの街を上げる。


 「それならば、ザントリーの地に移動したいと思います」

 「ザンドリー?」


 確かあそこは近場にダンジョンが現れたという情報がある。


 「君もダンジョンに興味がある口かね?」

 「いえ私はダンジョンよりも、その地に出来た新しい隊に興味があります」


 命懸けの仕事、危険と隣り合わせなどと言う碌でも無いような職場のように思えるが、その隊を率いる人物にはカーフェも興味があった。

 コウラ=ホカ=ターサン

 辺境の一兵士でありながら、その直感によるスキルにより幾多の危険を回避し武名をとどろかせていった男。

 神の加護などないのに≪神憑り≫とまで呼ばれるほどの人物。


 「そこに行けば、今よりももっと強くなれる気がしますので」


 笑顔でそう言われてしまうと、さすがに反対などできずにカーフェの移動先はザンドリーになった。

 話が終わりカーフェが部屋を出ようとしたとき、ついでとばかりに上司は気になっていた事を尋ねる。


 「カーフェ強くなってどうするつもりだ?」


 その質問にカーフェは先程以上の満面な笑みで答える。


 「こちらに戻って来た時に、二度とこんなことが起きないよう徹底的に心を折り、二度とは向かう気が起きないようにしておきたいだけですよ」


 上司はその答えに頬が引きつってしまう。

 どうやら表面に出ないだけで、かなり腹にすえかねる物があったようだ。






 オウレは国の中でも由緒ある血筋の三男坊の生まれだった。

 幼いころから英才教育を受け育ってきた彼は、元からの才能もあり15歳になる頃にはかなりの実力がある人物となっていた。

 だがそんな実力もオウレの面倒臭がりで怠け者の性格のため、日に当たる事は無く。何も知らない人間から見れば、貴族と言う地位に溺れ怠けているようにしか見えなかった。

 本人曰く「必要な時にはちゃんと動いている」とのことなのだが、両親としては貴族としての誇りと、高貴なるものの義務を胸にもっと働いて欲しいと思っていた。

 そんなある日、オウレの父親の耳に一つの情報が入って来た。

 隣の領ザンドリーにダンジョンができ、そこを探索する隊ができたらしい。

 父親はこの情報を聞きまさにこれだと膝をうつ。

 危険と隣り合わせだそうだが、オウレの実力なら問題ないだろう。

 むしろ命の危機とあればオウレも怠けたりせず真面目に働く筈だ。

 それに貴族として、ダンジョンと言う旨みがあるものに一枚も噛めないというのはいただけない。

 息子が隊に入れば、その縁もありダンジョンからの何かしらの縁も結べるはずだ。

 と言ったさまざまな思惑により、オウレは本人の意思とは関係なくドリンク隊にいつの間にか入隊させられていた。






 経緯は二人とも違うが、それでも二人はドリンク隊の中で魔力量は一位と二位なのだ。

 そんな二人が魔力を空にするつもりで送り続けてようやく魔道具の維持ができる、それほど燃費がかかる魔道具なのだ。


 「これって~、欠陥品じゃないの~」

 「結界の強固さを見れば欠陥品でないとわかります。

 ……ですが、まぁ確かに少々使いづらいと言わざるおえません」


 普段隊長の考えに素直に従うカーフェですら、この魔道具の燃費の悪さには思う所があるようだ。


 「二人のいいたいことはよくわかる。

 だが敵の攻撃が来る、だからあと少し頑張ってくれ」

 「わかったよ~」

 「了解です」


 そう二人が言い、さらに魔力を送ろうとしたとき張っていた結界の膜に敵の攻撃が襲いかかった。

 結界の膜にいくつもの波紋が浮かび、結界の膜が歪む。


 「オウレ、もっと魔力を出しなさい!」

 「出してるよ~、これでも全力なんだよ~」


 結界の膜が歪んだのを見て、慌てて結界の力を増そうと魔力をさらに送り込む。

 力を増した結界のおかげで、歪みは収まって行くがそれでも油断はできない。


 「まさか初手からこんな攻撃が来るとはな」


 コウラは苦笑を浮かべてしまう。

 まだ敵の姿を見ていないというのに、いきなりこんなものが襲ってくるとは思ってもみなかった。

 だが、まだ大丈夫だ。


 「姿を見せないまま、終わらすことができると思うなよ」


 覚悟してダンジョンに入ったんだ。

 この程度の攻撃で終わるはずないだろう。




 ◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇



 ウーロン視点


 「ウーロン、第一隊は任せる。全力で守れ!!」

 「了解です」


 コウラ隊長の指示に私はすぐさま返事を返す。

 そして隊長の指示を守るために私は一人皆の前に立つ。


 「第一隊私の後ろに固まりなさい、ほらホウジーも下がって下がって」


 敵の攻撃を察知したホウジーは来るであろう攻撃に怯えてその場に座り込んでしまっていたので、そう言って私の後ろに下がらせる。

 隊の皆が急いで私の後ろに駆け寄ってくる間にも、前方からどんどん敵の攻撃が迫ってくる。


 ふむ、これは皆の命を守るだけで精一杯ですね。


 迫り来る事で肌で感じる音と空気の凶器。

 さすがに私でもきついです。


 「皆さん、さすがに私でもあれにどこまで持つか分かりませんので、各自しっかりと身を固めて耐えるように頑張って下さい。

 あぁ、特にこのうるさい音に関しては私ではどうにもできないので、耳が言い方は特に注意して下さいね」


 後ろを向きもせずそう伝える。

 後半の方はも迫りくる音のせいで聞こえなかったかもしれないが、ホウジーなどの第一隊にいた獣人達の事だ、迫りくる音を聞いて危険を察知して自発的に耳を塞いでいるだろう。

 まぁ両手でしっかりと耳を防いだとしてもこの大音量の事だ、どこまで効果があるか分からないですけどね。


 「やれやれ、敵と遭遇する前からこれでは……、はぁこの先が思いやられますね」


 溜息をつき皆を守るように両手を広げる。

 それと同時に、体に凄まじいまでの爆音による衝撃と、押しつぶさんとばかりの圧力が襲いかかる。

 隊服は一瞬でズタズタ裂け、鼓膜だけでなく脳を揺らされた事で、耳だけでなく華闇からも血が流れ出る。

 だが、出血はそれだけ。

 あとはこれと言った怪我などは無い。


 「なかなか強烈ですね」


 顔中の穴から血を流しながらも、そんな事など気にならないかのように普段とまったく表情でそう言う。


 「さすがに音による衝撃は防ぎきれませんでしたが、それ以外、空気の塊なんかは問題なかったですね。

 むしろたかだか空気の塊ごときで鉄を圧殺出来るとでも思っているんでしょうか?」


 神の加護【鉄身(アイアンハート)

 心揺るがぬ平常心の時、その体を鋼のごとき硬さに変える。


 鍛冶を嗜むでもないのに、なぜか鍛冶の神であるタクミ様から与えられた加護。

 この加護のおかげで人よりも丈夫な体となった。


 (まぁ、この加護が発動する時が平常心の場合なので、怒ったり悲しんでいたりすると発動しないんですよね)


 おかげで常に心乱さないように注意していたため、他人からは冷たい男だと思われるようになってしまった。

 やがて敵の攻撃が過ぎ去り、ウーロンは広げていた両手を下ろして後ろを振り返る。


 「皆さん大丈夫ですか?」


 一応襲いかかって来た空気の塊は自分が前に立ったおかげで直撃しなかったはずだ。

 さすがに余波や、音の攻撃までは防ぐことはできなかったが、それぐらいでは死なないであろうと思えるぐらいは仲間の事を信頼している。


 「頭痛てー」

 「一応無事ですけど、耳がキーンとします」

 「あ~、体ミシミシ言ってる」


 耳を押さえたまま涙目になったり、頭を振って衝撃を緩和しようとしたり、体を伸ばしたりしながらそれぞれ無事だと返事を返す。


 「皆さん大きな怪我も無さそうですね。

 コウラ隊長の方も、この程度なら無事でしょう」


 後ろにいるコウラ隊長達の事だ、誰一人怪我無く乗り切ったことだろう。


 「ひとまずコウラ隊長から次の指示が出るまで、各自怪我の治療しながら待ちま――」

 「うんな、ぬるい事言ってる場合じゃないだろう!!」


 待ちましょうと言う前に、隊員の一人が怒声と通路の出口に向かい走り出す。


 「待ちなさいペッパー」

 「ふざけやがって、いきなり奇襲だ~。

 上等だ!!この痛み倍返しにしてやるぜ!!!」


 制止の声もまるでペッパーの耳には届かない。


 「あ~、ウーロンさん無駄ニャ。

 あいつ血が出てスキルが発動しちゃったニャ」

 「【血気盛(ハッスル・ブラッド)ん】ですか……」


 スキル【血気盛(ハッスル・ブラッド)ん】

 出血する事で発動。身体能力が向上するが、逆に精神面での安定を欠いてしまう。


 「【狂戦士(バーサーカー)】よりはまだ理性があるとはいえ、身体能力が上がった程度では一人で行くのは心配ですね。

 仕方ありません、追いますよ」

 「「「 了解 」」」


 ウーロンの指示に隊のみんなは治療もそこそこにペッパーの後を追いだす。

 その際一番傷の深い隊員ホウジーの肩を掴んで彼女だけは後を追うのをやめさせる。


 「ホウジー、あなたはまずその不調になった耳を戻すことに専念しなさい」

 「えっ、でも……」

 「この先、また何があるか分かりませんからね。

 そんなとき罠発見が得意なあなたがいなければ先へ進めません。

 それに、全員が追いかけたらコウラ隊長が心配しますからね。

 しっかり事情を説明しといて下さい」

 「わかりました」


 コウラ隊長への伝言をホウジーに任せると、ウーロンも皆の後に続いて走り出す。


 (まったく、命を守り切ったと思ったら今度はその命を粗末にするだなんて、これは後でたっぷりお仕置きをする必要がありますね)


 生きて帰った事時の事を考えつつ、第一隊は一足早く通路の出口へと向かって行く。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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