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戦準備 領主と交渉

 コウラ視点


 ウワバミのダンジョンから脱出し、コウラ達は入り口付近に繋いでいた馬に跨るとすぐに領内に戻る。

 普通ならば馬に乗っても領内に戻るには3時間ほどかかるのだが、今回は馬を急がせおよそ半分ほどの時間で領内に帰りつく。

 領内の周りは魔物の侵攻を防ぐため城壁が築かれており、入り口は東西南北それぞれ四つのみ、そしてそこには出入りする者の中に不審者がいないかすめいの兵士たちが目を光らせている。

 そんな兵士達はダンジョンから予定よりも早く帰り、なおかつ急いだ様子の俺達を見てあわてて声をかけてくる。


 「どうしたんですかコウラさん、予定より早い帰還ですが。

 何かダンジョンの方で問題でもあったんですか?」

 「ダンジョンの方はいつも通り問題は無いよ。

 ただ少し俺達に準備不足があってね。今日は早めに切り上げて訓練所で体を鍛え直そうと思ったんだ」

 「そうだったんですか」


 ダンジョンに問題が無いと聞いてほっと息を吐く兵士。

 後では俺の言葉に何か言いたげなホカリをウーロンが表情を変えないままこっそりと肘を突く事で黙らせる。


 (そうだ、下手な事を言うな。

 下手な事を言えば街が大騒ぎになるぞ)


 それだけダンジョンに関しては慎重にならないといけないのだ。


 「そう言うわけだから、俺達はもう行っていいかな?」

 「あぁ、これは引き留めてすみません。

 どうぞお通り下さい」


 そう言って領内に入り隊の宿舎に帰って来た俺は、すぐさまウーロンに新しい命令を下す。


 「ウーロン、お前は部隊全員にダンジョンに行く準備をさせろ」

 「わかりました」

 「今回のダンジョン攻略は今までの様子見とは違い、命懸けのものとなる。

 武器や防具の点検はいつも以上に、回復薬なども多めに準備を、それと今回の挑戦は長丁場になる可能性があるから、保存食の準備も怠るな。

 最後に部隊の者全員に今回のダンジョン攻略では、この街に帰ってこれない可能性がある事を伝えて、覚悟だけはしておくようにと伝えておけ」

 「よろしいのですか?

 そんな事を伝えると、部隊の者の中には怯えて逃げ出す者が出てくる可能性もありますが?」

 「構わない。

 むしろここで逃げ出す者など、ダンジョンに挑む際役に立たないから問題ない」

 「わかりました。

 部隊全員に伝えておきます」

 「俺は領主に話をしてくる」


 急いで必要な事だけを伝え、俺はすぐさま領主のいる館へと向かう。

 本当ならば領主の所になど行きたくは無いのだが、今回ダンジョン攻略では多くの部下の命がかかっているのだ。

 会えば必ず愚痴愚痴と小言や文句、苦情を言われるとわかっていても、部下のためにも装備や回復薬の充実を計るために金を引き出す必要がある。






 領主の館に付き、すぐさま領主に面会を求めしばらく待たされた後、やって来た領主ビルーは血走った眼でこちらを睨みつけてくる。


 「どうしたコウラ?

 予定より早い帰還ではないか、何か問題でもあったのかね?」

 「はっ、今まで我が隊は数度偵察と経験を積ませるためにダンジョンの入り口付近を偵察して来ましたが、どうやらその行為がダンジョンのものに悟られたようです」

 「なっ」


 俺の報告に、ビルーは大きく口を開け絶句してしまう。

 それはそうだろう。

 俺達の隊の目的はダンジョンから多くの宝を持って帰って来る事だ。

 それなのにその目的を果たす前に、動きを悟られれば目的など達成できるはずがない。

 驚き口を開いたビルーだが、すぐに顔を真っ赤にしてこちらを問い詰めてくる。


 「一体どういうことだ!

 まだお前達は宝を一つも持って帰って来て無いのだぞ、それなのに動きを悟られるとはどういうことだ!!」

 「申し訳ありません」


 動きを悟られた事に関しては、謝ることしかできない。

 ばれないように色々策を打ち挑んだのだが、それを向こうは全て見破ったのだ。


 「謝罪などいい、これから一体どうするつもりだ!」

 「動きが覚られた以上、もうこそこそと動き回るつもりはありません。

 今度は我が部隊全員が一命を掛けダンジョン攻略に挑みます」


 この言葉に顔を真っ赤にして怒鳴っていたビルーもさすがに黙る。

 それだけの気迫と覚悟が今の言葉にはあるのだ。


 「勝算はあるのかね?」

 「わかりません」

 「わかりませんとはなんだ!」

 「本当にわからないのです。

 いまだ我々はダンジョンの奥がどうなっているか調べきれておらず、どんな造りをしているか、どんな魔物が住んでいるかもわかっていない状況です。

 そんなわからない状況に挑むのです。勝算があるなどわかるはずがありません」

 「そんなわからない状況に命懸けで挑むというのか?」

 「これ以上偵察、調査ができない以上は、身を削るしかありませんので」

 「そうか……」


 本当なら俺だって、命懸けで挑みたくなどは無いのだ。

 だが周りがそれを許してくれない。

 部隊の人間は高額の手当てを貰っている。その分の働きをしなければ他の部隊の兵士やたから目当てで来ている商人、街でダンジョン攻略を祈っている住民たちから一斉に非難を喰らうだろう。

 つまり失敗しました、だけでは許されない。

 何かしらの結果を残さないといけないのだ。

 たとえ部隊の何名家の命を犠牲にすることになっても。


 (まぁ、その犠牲を少なくするのが俺の仕事だからな)


 そのためなら、いくらでも領主に怒鳴られ文句を言われてもいいだろう。


 「ビルー様、攻略に挑むに当たりお願いがあります」

 「なんだ」

 「部隊の装備強化のために追加予算を回して下さい」


 その言葉に再びビルーの顔が真っ赤になる。


 「ふざけるな!お前の部隊にはすでに大量の予算を回しているだろう!

 それでは足らんというのか!!」

 「えぇ、足りません」

 「ふざけるなーーー!!」


 ドンッ!と机に拳をぶつけて唾を飛ばしながら怒鳴るが、そんなもの日々命を掛けて戦闘をこなしている自分にとっては怖くもなんともない。

 大体肥え太った中年が顔を真っ赤にして怒りに体を震わせている様など、自分にしてみれば豚が震えているようにしか見えないのだ。


 「ビルー様、あなたはダンジョンのお宝を盗って来るためにこの部隊を作ったはずです。

 このままでは宝を盗って来る前に、部隊は全滅して今までの予算が無駄になりますよ」

 「グッ」


 今までかけた金が無駄になるのだけは避けたいだろう。


 「……予算を回せば、宝を持って帰って来れるんだろうな」

 「保証はできませんが、確率は上がると思います」


 俺とビルーの視線が激しく火花を散らしにらみ合う。

 そして折れたのはビルーの方だった。


 「……わかった、何とか予算を工面しよう」

 「ありがとうございます」

 「ただし、確実に生きて宝を持って帰ってこい!

 たとえ多くの犠牲が出たとしてもだ」

 「……了解しました」


 頭を深く下げ、俺は部屋を後にするためにビルーに背中を向ける。

 その背中にビルーが独り言のように声をかける。


 「コウラ、就きたくも無い隊長と言う職につけ苦労を掛けている事はわかる。

 だが私も領主として、この街に住む多くのものの事を考えなければいけない。

 大を活かすために小を犠牲にする必要もある。

 わかってくれるな」


 俺はビルーの言葉に返事をせず、ただ黙って部屋を出ていく。


 言われずともそんことはわかっている。

 だが小を犠牲にしないで大を活かせるのならそれに越したことは無いだろう。

 小を犠牲にしないためにも、今できることをするだけだ。


 俺はすぐに少しでも犠牲を減らすために次の目的地に足を急がせた。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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