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泥地の捕食者

 ダンジョン・ウワバミには密林エリアは5カ所あり、そのうち一番初めに侵入者が訪れる場所は、ジャジャをはじめとした蛇達が巣くって待ち構えており、4番目の密林エリアをゴンラやスラりんが住居として住んでいて、5番目の密林エリアは最後の砦として緊急の際そこに全員集まるようにしている。

 そして現在メーサとゴンラは2番目の密林エリアに足を踏み入れていた。


 「こことっても歩きにくいの」


 メーサの足元は固い土では無く、足を盗られやすい泥地になっていた。


 「それに暑いの」


 汗がジンワリと出てきて、体がベトベトして非常に気持ち悪くなってくる。


 「しかたないですよ。

 同じ密林エリアと言っても、環境が違いますから。

 メーサさん達の眷族が生活している密林エリアは基本的な環境ですけど、ここの密林エリアは亜熱帯環境に合わせていますからね。

 植物も全然違うでしょう」

 「確かにジャジャ達の所の木より背は低いけど、変わりに根が地上に出ているし、葉の形も違うの」

 「あれはマングローブって言うそうですよ。

 あの植物が育ちやすいように地面がこんな泥地になってるそうなんです」

 「へ~、そうなんだ」


 同じ密林エリアなのに、こうも違うものなのかとメーサは感心してしまう。


 「ところで肝心のワニさんはどこにいるの?」


 ゴンラと話しながら歩いていたため、気付けばエリアの真ん中まで来ていたが一向に目的のマッドアリゲーターの姿が見えない。


 「さぁ?

 マッドさんはこの環境でならかなり力を発揮しますからね。

 おらも自分から姿を見せてくれない限り見つけることができないですよ」

 「もう、メーサは隠れ鬼に付き合ってる暇ないの!

 早くマしゅターからのお願い達成しないといけないのに、メンドクサイの!!」


 姿を現さない事に苛立ち、メーサは自身の髪の蛇うねらせる。


 「私達が探してることぐらいわかってるんでしょ!

 早く姿を見せなさい。

 じゃないとメーサの毒をここら辺にばら撒くの!!」


 髪の蛇達の牙からはメーサの精製した毒で濡れ始める。


 もちろんメーサは本気で毒を撒くつもりなどは無い。

 毒精製ができるからと言っても、そこまで強い毒はすぐには作れないと言うのも理由だが、本当はメーサのこの脅しをどう対応するかを見るテストなのだ。

 主から期待されている魔獣がどういう反応をするのか、メーサはそのためにワザと怒ったふりをして脅しをかけたのだ。




 「メーサお嬢、さすがに毒を撒くのはやり過ぎかと」


 メーサの脅しを聞きゴンラが慌てて止めようとするが、メーサはそんなゴンラを軽く無視をする。

 なぜなら脅し言葉を言った瞬間、一瞬だがメーサに向かい殺気が飛んできたからだ。

 すぐに殺気が飛んできた方に視線を向けたのだが、そこには誰もいない。

 そして殺気が飛んできたのはその一瞬だけで、あとは先程と同じまったく気配を感じさせない。


 (でも…、確実にこっちを見てるの)


 気配は感じないが、メーサの感覚にこちらを見ている存在がいる事だけは感じ取れる。


 (すごいの。

 確かにマしゅターが期待しているだけの事はあるの)


 もし侵入者が不用意にこのエリアに足を踏み入れたら、確実に不意打ちを喰らうことになるだろう。


 (でもメーサにはこれがあるの)


 メーサは両目を切り替えるように意識して、あたりを窺う。


 (サーモグラフィーに切り替えたの。

 これなら姿が見えない相手でも見つけられるの)


 蛇はもともと視力が良くない。

 その代わりに蛇は熱を感知する事でき、その力で獲物を探り捕食する。

 メーサも普段は普通の目で生活しているが、蛇の血が流れている事で目をサーモグラフィで見れるように切り替える事ができるのだ。


 「見つけたの」


 姿が見えないマッドアリゲーターはすぐ近く、手を伸ばせるぐらい近くで私達を見ていた。

 どれで全身を覆い、泥地と見分けがつかなくなっている。


 「駄目じゃないの。

 呼ばれたらすぐに出てこない、っと!!」


 メーサはそう言いながらマッドアリゲーターに蹴りをお見舞いしようと振り抜く。

 だがその蹴りに反応したマッドアリゲーターは避けることはせずに、逆に口を大きく開き足を噛み切ろうする。


 「危ないの」


 噛み切られると判断してすぐに足を引っ込める。

 そして足を引いた瞬間、マッドアリゲーターの口はガッチンと言う音を立てて勢いよく閉まる。

 あのまま足を振り抜いていたら間違いなく足を噛み千切られていただろう。


 「いい度胸なの」


 足を噛み千切られそうになり、キレたメーサは実力を測ると言う目的を忘れ、本気で殺そうと闘志を漲らせる。

 マッドアリゲーターの方も今や泥から体を全て出し、メーサを迎え撃とうと闘志を上げる。


 願いを聞くだけの簡単なお願いだったはずなのだが、今や辺りは一瞬即発の空気が支配している。


 「いや駄目ですよ二人とも、少し落ち着いて下さい」


 そんな空気の中をゴンラは震える足を懸命にこらえ、二人の間に立ち何とか仲裁しようとする。


 「二人とも忘れたのですか。

 主様は仲間内で許可のない争いは許していませんよ」


 その言葉に二人はピクリと反応して、しばらくお互いにらみ合った後闘志を納める。


 「ごめんなさい。

 メーサ、挑発しすぎました」


 非は自分にあると頭が冷えたメーサが素直に頭を下げる。


 「こっちこそ、隠れて二人を窺ったりしていてすまなかった」


 メーサに答えるようにマッドアリゲーターが言葉を返す。

 その声を聞きメーサは口を開けて驚いてしまう。


 「ワニさん話せるの!?」

 「話せるようになったのはつい最近ですから。

 それに、ただ話せるようになったわけではないんですよ」


 そう答えた後マッドアリゲーターは体が淡く光り出す。

 そしてその光が一瞬だけ強くなり辺りの視界を奪った後には、今まで地面を這いつくばっていたワニその物の姿から、下半身が鰐、上半身が人間、顔は鰐と言う姿に変わっていた。


 その姿に先程の話した事の驚き以上の衝撃を受けてしまう。


 「どうもまだ進化するには力が足りないため、今はこんな中途半端な姿ですが一応魔獣から人型に変われるようになったんですよ」


 鰐の顔のためわからないが、その口調から自信満々にそう言っているのがわかる。

 だが―、


 「違うの!!

 それは明らかに人型なんかじゃないの!!」


 この姿を人型と言おうとするマッドアリゲーターに、メーサがすぐさま勢いよく否定をする。

 あんな姿を人型と認める訳にはいかないのだ。




 メーサの知らない所でダンジョンの仲間が異様な変貌を遂げているのであった。



最後までお読みいただきありがとうございます。

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